対北支援:姑息な手段に出た北朝鮮

開城への新規投資ストップを受け人材増、寄宿舎の提案も

「コメ支援はわずか5000トン」 支援規模に不満の声も

 最近、開城工業団地では「北朝鮮が臨時の寄宿舎を建設することを検討している」といううわさが広まっている。北朝鮮の内部事情に詳しい消息筋が19日に語ったところによると、1日に北朝鮮の総局幹部が開城工団で活動する企業経営者たちに対し、臨時の寄宿舎を建設する話を持ち掛けたという。総局とは、開城工団を管理する中央特区開発指導総局のことだ。

 統一部の関係者は、「寄宿舎の運営について、北朝鮮から正式には何も伝えられていない」「そのような話は、ドル不足に苦しむ北朝鮮の姑息な手段だろう」と指摘した。

 核開発に伴う国際社会からの制裁措置や哨戒艦「天安」沈没事件の影響などから、韓国政府は5・24措置により、南北間の経済交流を制限している。そのため現在、北朝鮮がまとまった現金を安定して入手できるルートは開城工団しかない。北朝鮮は4万4000人以上の労働者の賃金として、毎月440万ドル(約3億8000万円)を受け取っているが、労働者が増えればそれだけ多くのドルを手にすることになる。

 しかし、開城市内に余分な労働力はない。「開城で身体的に問題がない人間は、全員が開城工団で働いている」と言われるほどだ。工団に大規模な労働力を供給するには、開城以外から労働者を連れて来て、寄宿舎生活を提供するしかない。

 この問題について統一部の当局者は、「北朝鮮は人手不足に苦しむ企業側の事情を考慮して、寄宿舎の話を持ち出したように見えるが、実際はこちらから少しでも多くのドルを手にするためだ」と語った。

 寄宿舎が建設され、追加で労働力が供給された場合、韓国政府としては、これを阻止する根拠や手段はない。5・24措置により、企業が新たに開城工団に進出することや、新規の投資は禁止されているが、労働力の追加がこれに該当するかについては異論がある。安全保障関連部処(省庁)の当局者は、「北朝鮮は寄宿舎の話を持ち出すことで、5・24措置の盲点を突こうとしているようだ」と語った。

 一方、北朝鮮の海外広報用週刊誌「統一新報」は19日付で、「洪水被害に苦しむ北朝鮮の同胞を支援するとして、南朝鮮(韓国)がコメを送ると騒いでいるが、その量はわずか5000トンだ。その背後に隠された意図を疑わざるを得ない」などと報じた。

 また同紙は、「南が支援すると言ってきたコメ5000トンは、共和国住民の1日分にも満たない。しかも、コメを与えた後に金を受け取るという借款方式だ」と報じた。

 統一部の当局者は、「大韓赤十字社から送られるコメ5000トンは無償支援だ。北朝鮮が事実をでっち上げて宣伝しているのを見ると、過去に受けた支援の量を期待していたために、失望が大きかったようだ」と語る。金大中(キム・デジュン)・盧武鉉(ノ・ムヒョン)両政権の時代には、北朝鮮は毎年30-40万トンのコメを受け取っていた。

 この当局者は、「天安問題に対する謝罪が一言でもあれば、政府はすぐにでも大規模な支援を行いたいとしている。ところが北朝鮮は、このように簡単な方法があるにもかかわらず、あえて複雑な手段を使おうとしている」とコメントした。

李竜洙(イ・ヨンス)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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