2010 年
9 月
17 日
東京大洪水の著者・高嶋哲夫氏に訊く−東京・埼玉大水害100周年記念講演会
〜人は家族の無事を知ってから、本来の力を発揮できる〜
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100年前、荒川が大氾濫を起こしたことをご存じですか?その洪水から今年で100年目ということで、あらかわ学会主催の講演会が北千住でありました。 明治43年(1910年)、関東を襲った大水害。8月6日ころから降り続けた雨は、10日頃から荒川や利根川流域の河川を氾濫させていきました。当時東京市では、死者18人、行方不明者3人、負傷者9名、建物の破壊・流出58棟、被災者数は56万人と言われ、水が引くのに2週間かかったという記録が残っています。
東京・埼玉で多くの町が大きな被害を受けたこの洪水はどのようなものだったのか、また、このような大水害が今の荒川で発生したら沿川地域はどうなるのかを専門家に伺うというものでした。講師は作家の高嶋哲夫さん。「東京大洪水」(=ジェミニの方舟。このタイトルでは中身が分かってもらえず、のちに「東京大洪水」に変えたら売れたとか)の著者です。
河川の流域に暮らす人たちは、水害に対して「保険をかける」という考え方ではなく、「必要経費」として生活していく、つまり、水害は当然起きるものとして考えることが必要。そうすれば、日常の暮らし方もおのずと違ってくる。「東京大洪水」の本は、東京を水浸しにするにはどうしたらよいか、という発想で書いた。高圧電線を倒し、鉄橋も流出家屋などが引っかかって流され、カミソリ護岸も決壊する、といったことからまず考えた。これを裏返して考えると、防災・減災のヒントになる。つまり、高圧鉄塔をこのまま立たせておいていいのか、鉄橋のかかる高さは市は自分は、阪神淡路大震災を経験した身として、人は家族の無事を知ってからではないと本来の力を発揮できない。−という家族の重要性のお話に、納得するものがありました。
集中豪雨が増えている昨今、常日頃の備えが必要です。高嶋氏の言うように、当然、起こるものとして考える、というのも一部認めるとしても、実際河川沿いに暮らしている人はおおぜいいて、集中豪雨のたびに不安を募らせ、実際被害にもあっているわけです。じゃあ、河川から遠くに暮らしている人は知らん顔でいいの?河川から離れている人が水浸しにならないのは、河川に雨水を逃がしているおかげです。いま、農地・緑地が減り、個人の地所でも雑草防止のために、また駐車場設置のためにコンクリートで固めてしまうことが多くなりました。雨水を地中に送り込めません。川があふれてしまうと河川沿いの住宅に被害が出る一方で、河川から離れている家は難を逃れる、という構造です。どこに税金を充てるのか。やっぱり、地域の貯水力を高めることが必要ではないでしょうか。だから私は、雨水浸透ますと雨水貯留タンクの設置を進め、地域にミニダムをつくる、という政策を掲げて水循環を進める活動しているのです。
水害が増えています。逆に、水不足も起きています。必要なのは水の制御。 いま、国レベルで「水循環基本法研究会」が発足しています。メンバーは、超党派の国会議員と市民が立ち上げた「水制度改革国民会議」の有識者です。市民側は、9日に、「水制度改革を求める国民大会」を開きました。神田川ネットワークも賛同団体として名を連ねています。この日は本会議中で出席できず、神田川ネットの仲間が出席して、都市河川がかかえる問題(合流式下水道問題、雨水の貯留・浸透の取り組み強化など)を指摘し、改善を求めるアッピールをしました。全国からさまざまな水の活動をしている団体60団体と超党派の国会議員も出席した、と聞いています。水問題は党派を超えて取り組まねばならない問題です。
次回は1月に大会が予定されています。
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