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きょうの社説 2010年9月20日
◎国会議員定数 次の選挙で削減の実績を
7月の参院選で大きな論点になりながら、議論が早くも失速したテーマの一つに国会議
員の定数削減がある。ねじれ国会が始まれば、与野党の激しい駆け引きの中に議論が埋没する懸念がぬぐえない。菅直人首相に望みたいのは、厳しい政権運営のなかでも、民主党代表選の政見に掲げた「党内で徹底的に議論し、年内に方針をまとめる」という約束を堅持し、次の選挙に間に合うよう年内に道筋をつけることである。国会議員の定数は現在、衆院480(小選挙区300、比例180)、参院242(選 挙区146、比例96)となっている。民主党は参院選マニフェスト(政権公約)で「衆院比例80減」「参院40程度減」を打ち出した。 参院選前には秋の臨時国会に関連法案を提出する構えだったが、選挙で大敗し、国会運 営で公明、社民党などの意向にも配慮せざるを得ない状況になった。党政治改革本部が検討チームを設置したものの、代表選を挟んで議論は止まったままである。一方、公約で「衆参両院を3年後に計650、6年後に計500に減らす」とした自民党も、野党共闘への配慮などから議論が先送りされている。 参院選では主要9政党のうち、6政党が定数削減を公約に掲げて戦った。数が多すぎる というのは、議員の間でほぼ共通認識になっているということなのだろう。方向性が出ている以上、あとは削減の具体的な道筋をどう描くかである。一気に大幅削減するのが困難なら、段階を踏んで実行に移すしかない。まずは次の選挙で削減の実績をつくることが大事である。 国会議員定数の削減は、衆参2院制や選挙制度の在り方にもかかわるテーマであり、制 度論を優先させるべきとの声も広がり始めている。だが、そうした時間を要する課題の解決を前提にしていては、いつまでたっても削減には踏み込めないだろう。 定数削減は昨年の衆院選でも各党の公約になっていたが、その後は急速に議論が下火に なった。選挙のたびに「わが身を削る」と政治改革の姿勢をアピールしながら、空手形を繰り返せば国民の不信は募るばかりである。
◎ねんりんピック 「もてなし」磨く絶好の機会
10月9日から4日間の日程で開かれる全国健康福祉祭「ねんりんピック」へ向け、各
市町で受け入れ準備が進み、歓迎ムードが高まってきた。全国からの参加者が約1万人に上るこの祭典は、健康長寿社会の実現といった開催趣旨の実践にとどまらず、石川県にとっては北陸新幹線開業の行動計画「STEP21」の重点プロジェクトである「おもてなしの向上」を図る場にもなる。各地で観光マップ作成、街並みの美化、郷土食提供や歓迎イベントの準備などが進んで いるが、これらはすべて新幹線時代に通じるものである。たとえ4日間でも、県が目標に掲げる「石川に再び訪れたいと実感できる大会」になれば地域への波及効果は長く続くことになる。大会を地域ぐるみの「もてなし力」を磨く好機と位置づけ、新幹線開業への弾みにしたい。 ねんりんピックは60歳以上のスポーツ・文化の祭典で、今年で23回目となる。県内 では10市3町でテニス、卓球などのスポーツ、囲碁、将棋、俳句など合わせて24種目が繰り広げられ、開幕前日にはファッションショーなどもある。 勝敗以上に地域や世代を超えた交流に比重が置かれる大会である。「STEP21」の 「おもてなしの向上」には、地域の歴史や文化を語れる「お国自慢」が掲げられているが、ふるさと教育を通して高まった県民の「学び」の意識を、来訪者に「伝える」という形で実践する、よい機会でもある。 もてなしといっても、地域全体でホテルや旅館並みの接客をするのとは違う。住民同士 が気さくに言葉を交わす、困っている時に助け合うといった日常的な関係の延長線上で考えればいい。もっと言えば、そこに暮らす人が生き生きと生活し、文化やスポーツを楽しむ。そんな姿に触れるだけでも、訪れる人は土地の魅力を感じ、親近感を抱くかもしれない。 ねんりんピックは受け入れる側も、スポーツや健康づくり、文化活動を新たに始めるき っかけになりうる。そうした社会参加意識の高まりや交流の広がりを通して、人をもてなすことの意識もより強まっていくことを期待したい。
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