「大相撲秋場所7日目」(18日、両国国技館)
抜いちゃって、すいません‐。横綱白鵬がついに「ウルフ超え」を果たした。一瞬ヒヤリとする場面があったものの、小結稀勢の里を押し出し、初場所14日目から続く連勝を「54」に伸ばした。これで千代の富士(元横綱・現九重親方)の53連勝を抜き、昭和以降では歴代単独2位の連勝記録となった。次に目指すは歴代1位、双葉山の69連勝。角聖の“不滅の大記録”に挑む。
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新たな歴史の幕が開いた。1938年の双葉山以来、72年ぶりとなる54連勝を飾った白鵬が、珍しく土俵上で表情を崩した。「よくやったというか…いろいろありますね。(九重親方に)恩返しできたこともありますし」。さまざまな感情が頭をよぎり、思わず笑みがこぼれた。
その笑みには、苦笑いも含まれていただろう。右をねじ込んだものの、まわしに手がかからない。稀勢の里のいなしで足がすべり、今場所初めて満員御礼となった館内に悲鳴がとどろいた。それでもすぐに立て直して突き放し、いなして相手の体勢を崩すと、最後はがむしゃらに前に出て押し出した。
昭和の大横綱「千代の富士超え」がかかった一番は、今場所一番の大苦戦となった。「緊張感があったんじゃないかな。いや、ありましたね」と告白。無事に54個目の白星を並べ、「これで千代の富士さんを超えて、九重さんに恩返しができたんじゃないかな」と安どの息を吐き出した。
支度部屋を出たところで、待ち受けた九重親方と“サプライズ対面”。親方の顔を見るなり、満面に笑みを浮かべながら「すいません」と頭を下げた。九重親方から「おめでとう。これからも一番一番頑張ってね」と祝福の言葉をもらい、がっちりと握手を交わした。白鵬は「親方の目が潤んでたね。うれしいのかな、悔しいのかな」と、しみじみ話した。
昭和以降単独2位に躍り出て、先に残るは双葉山の69連勝だけとなった。「こうなってくるとね、それしかないじゃない。力がわいてきたらいけないんだけど。心技体そろってやることだね」と記録更新へ意欲は十分。平常心で土俵に上がる秘けつを問われると、「やっぱり双葉山関のおかげ。2人にしか分からないよ。夢の中で(相撲を)取った2人だからね」とおどけてみせた。
“不滅の大記録”まで、あと「15」。一日一日、あこがれの角聖に近づいていく。