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help リーダーに追加 RSS 軽装甲機動車について

<<   作成日時 : 2010/09/18 16:24  

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 SATマガジン、9月号26ページの軽装甲機動車の写真にドアの「内張」が写ってしまっているからです。これは通常のクッションの入った内張ではありませんでした。
 某誌では撮影はNGだったらしいですが。

 実はは内張装甲で、これによって7.62ミリ通常弾に耐えられるようになったらしいです。話には聞いていましたが、写真でも見たのは初めてです(装甲ではなく、スポールライナーである可能性もあるとぼくは思っています)。

 軽装甲機動車の防御力は「秘」扱いになっていますが、ぼくの知るところでは5.56ミリボール弾までにしか耐えられません。それは陸自の下車歩兵が7.62ミリ機銃を5.56ミリのミニミに切り替えているからでしょう。
 自分たちの火器に装甲の防御レベルを合わせることは多々あります。

 ですが、実戦では土嚢を中に積まないと危なくて戦えない、という隊員もいます。

 装甲を付加するならばモジュラー型の外装式にすべきでした。その方が被弾した際に修理が容易ですし、増加装甲の強化も容易です。

 通常、VBLなどこの手の軽装甲車輛は7.62ミリ弾に耐えられる程度の装甲が普通です。無論メカム社が開発していたエイコーンなど例外は存在します。
 ただ、メーカーは、例えば南アのOMC社でもRG-32など5.56ミリまでに耐えられる装甲の薄いタイプもオプションとして用意している場合もあります。

 ですが5.56ミリ用を選ぶユーザーは少ないようです。選ぶとしたら治安維持用でしょうが、治安用としてもカラシニコフが普及しているようなところでは心許ないでしょう。


 ネットなどでは軽装甲機動車の前面は12.7ミリ機銃弾に耐えられるとされていますが、これはないでしょう。

 防衛省の報告書「防衛生産・技術基盤」の14ページにはイラク任務に対応するための改良例が掲載されています。
 http://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/meeting/seisakukaigi/pdf/09/1-2.pdf
 これによるとフロントグラスが「7.62mm小銃弾(普通弾)に抗たんするためのガラス部の改修」とあります。つまり、フロントグラスは7.62ミリ弾に耐えられるように「強化」されたわけです。
 このことはぼくが入手したイラク派遣に際する装甲車輛改修に関する書類にも記載されています。

 仮に正面装甲が12.7ミリ弾に耐えられるならば、何故面積が大きく、しかも被弾可能性の高いフロントグラスが7.62ミリ弾にすら耐えられなかったのでしょうか。非常にアンバランスではないでしょうか。
 

 ぼくの知っている自衛官の友人・知人は一人も軽装甲機動車の防御力に関して口外しません。守秘義務があるからです。ですから技本の発表会で、説明員が「ご存じでしょうから」と5.56ミリ弾にまでしか耐えれませんと初対面の人間(しかも清谷信一に)話したのには驚きました。
 無論それ以前から複数のソースから軽装甲機動車に関するこの話を聞いてはおりましたが。


 過日、産経新聞の自衛隊レポートで12.7ミリに耐えられると書いていましたが、広報担当者の言ではないと思います。「秘」扱いの事項を広報がぺらぺら喋ることは普通あり得ません(だったらぼくらの仕事も随分と楽になるのですが)。
 もし仮に広報担当者がこのような話をし、それが活字になったのであれば、叱責程度では済みません。かなり重い処罰を受けることになります。

 この程度のことは秘扱いすべきではありません。大抵の国では情報公開されているようなことです。
 やたらと不必要に情報を隠すと、内部の人間も何が本当に機密なのかわからなくなりますから機密保持がどうしても緩くなるし、納税者の議論も盛り上がりません。 つまり国民の関心も無くなってしまいます。

 例えば軽装甲機動車をPKOで使って問題ないかということが話題になった場合、装甲が12.7ミリ弾に耐えられるか、5.56ミリ弾にまでしか耐えれないのかで、はまったく議論の前提が変わってきます。
 
 自衛隊には更なる情報開示が必要です。
 

 

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コメント(27件)

内 容 ニックネーム/日時
で、結局キヨタニ先生は5.56mm弾と7.62mm弾と比較した場合どっちがより貫通力が高いかの結論は出していたのだっけ?
ふーん
2010/09/18 17:32
しまった文章間違えた……で、結局キヨタニ先生は5.56mm弾と7.62mm弾と比較した場合どっちがどれだけ貫通力が高いかの結論は出していたのだっけ?
が、正しかった。
ふーん
2010/09/18 18:30
私も今、SATマガジン9月号を見なおして見ました。確かにP.26にて、内張りがハッキリ写っていますね。しかし、「PANZER」2010・7月号の特集記事(P.27)で既に内張りの写真が掲載(おそらく、どこかの駐屯地祭で撮影されたものかと)されているんですよ。更に同記事中にて「試作車が耐弾試験において前面で12.7mm機銃弾に耐え(ガラス面含む)、側面も7.62mmライフル弾に耐えたため」なんて文もあるんですよね。にしても、何で陸幕は今頃になって慌てているのでしょう?別にこの程度の写真なんぞ、気にする程でもないと思うのですが。ちなみにPANZERの方では、イラク派遣以後の改修箇所等についても、かなり細かく説明されています。しかしながら陸幕の担当者はSATマガジンは問題にして、(先に掲載した)他の雑誌は問題にしないのでしょうか?何とも基準が曖昧すぎますよね。単に昔からの付き合いを考慮したとか? そんなに知られたくないなら、駐屯地祭も含め、徹底的に撮影を禁止すりゃ良いのに、なんて下らない事を考えてしまいました。最も、何をしようとも、どこからともなく情報なんてモノは漏れるものですけどね。
かつかつ
2010/09/18 19:28
いやそもそも本当に慌てているのかな?
ふーん
2010/09/18 19:36
「自衛隊には更なる情報開示が必要」
例えば全周耐12.7mm防御だと公表した場合、
清谷氏に間違ってたね〜と言えば、
「信じたいモノを信じたい方になにを言っても
無駄ですから。ご自分が信じたい「事実」を
信じれば宜しいのではないでしょうか。」
で終わるのではないでしょうか?
清谷氏は軽装甲機動車は5.56mmにしか耐え
られないと確信しておりどのような情報が
公開されても上記のように完全逃走される
可能性がありますが、どのように対応され
ますか?仮に公表された防御力が5.56mm以
上の場合はそのまま紹介して過去の誤りを
正しますか?それとも紹介した後にこれは
誤発表でありあくまで5.56mmにしか耐えら
れないとするか、それとも公表値をスルー
しますか?あと軽装甲機動車に乗った事
ありますか?車内に土嚢を積み、その上
で弾薬等の必要品を積み、完全武装の兵隊
を乗せる。はて?土嚢だけで容積が一杯に
なりそうな予感がします。やはり土嚢は
聞き違いでしょう。土嚢ではなく本文で
紹介された内張装甲の事でしょうね。
ぐすたふMk.U
2010/09/18 19:51
「ぼくの知っている自衛官の友人・知人」
なんか遠回しな話ですね。


通りすがり
2010/09/18 20:36
>これによるとフロントグラスが「7.62mm小銃弾(普通弾)に抗たんするためのガラス部の改修」とあります。

P14にはフロントガラスという文言はでてきません。
改修したのは側面のガラスではなかったでしょうか?
ikekenji
2010/09/18 21:09
はて?
スポールライナーは内張り装甲の一種ですよね。
ぽこぺん
2010/09/18 22:02
>ですが、実戦では土嚢を中に積まないと危なくて戦えない、という隊員もいます。

多分この隊員さんは信じ難い馬鹿者なのでしょう。あるいはキヨタニ先生の書き方が悪いのでしょう。出来れば図解付きで説明して欲しかったですね。

後、本当に陸幕広報室が頭を抱えているのでしょうか?
うーん
2010/09/18 22:07
えーと確か週刊オブイェクトでスポールライナーについて指摘されたのは……何年前の話だったっけ?
うーん
2010/09/18 22:09
全部が全部とは言いませんが、普通は内張り装甲とスポールライナーは同義ですよね?

スポールライナーって言葉は知ってるけど、意味がわからなかったのかな?
ちんくえでぃあ
2010/09/18 22:10
あれ?どうして誰も隔離部屋送りにならないの?
ぶーん
2010/09/19 01:42
清谷氏の取材結果では、一般的に
スポールライナー=内張り装甲
とは言わない。
普通、「追加装甲」は対弾性上げるものと定義されると考えるが、本来スポールライナーは破片の飛散などを防ぎ内部被害を低減させるものであるから追加されても追加装甲とは言えない。Armorarmor plateとProtection
軍事研究でもその違いについて言及する清谷氏以外のコラムが有った。

ちなみにスポールライナーは装甲では無いと清谷氏は過去何度も書いている。一部のコメントは過去の記事を読まずに書いていることがバレバレである。それによって恥をかいていることが解らないのは幸せだ。
オブイェクトは知識豊富で有るが絶対では無いし間違いもある。
反論意見を聞かず特定個人を闇雲に信用することは宗教だと考える。
774
2010/09/19 01:43
技本が出した本には、内張り装甲=スポールライナー(スプラッシュライナーを含む)となってますね。
ちんくえでぃあ
2010/09/19 07:09
>普通、「追加装甲」は対弾性上げるものと定義されると考えるが、

シュルツェンは?w スラットアーマーは?w 爆発反応装甲は?w

でもって欧米の装甲部材メーカー、TenCate社のHPからSpallLinerの説明
ttp://www.tencate.com/smartsite.dws?id=5572
It is designed to stop projectiles and small fragments 〜.

>清谷氏の取材結果では、一般的にスポールライナー=内張り装甲とは言わない。

普通に装甲の一種でしょスポールライナー。それで何が悪いの?

後774さん=キヨタニ先生もしくはキヨタニ先生の関係者という事でOK?
うーん
2010/09/19 07:52
「装甲」という言葉の定義の問題だと思います。
「装甲=攻撃による被害を防ぐ装備(部品)」とするならスポールライナーも装甲に含まれるわけです。
「装甲=弾丸を弾き返す(狭い意味での対弾性)」ではないと思います。
スラット装甲も弾を弾き返すわけではありませんしね。
ぽこぺん
2010/09/19 07:57
軽装甲機動車のドアの内張りの画像は以下のサイトでも公開されています。

2009-01-12 平成21年 陸上自衛隊第1空挺団 降下訓練始め
http://d.hatena.ne.jp/dragoner/20090112

軽装甲機動車
http://rightwing.sakura.ne.jp/equipment/jgsdf/
vehicle/lamv/lamv.html

本当に陸幕広報室が頭を抱えるような問題なのでしょうか?
ぽこぺん
2010/09/19 08:48
>774
「軍事研究でもその違いについて言及する
清谷氏以外のコラムが有った。」
内容を確認したいので教えてください。
何年何月分の何ページですか?

「ちなみにスポールライナーは装甲では
無いと清谷氏は過去何度も書いている。」
それを披露することよって恥をかいている
ことが解らないのは幸せですね。

「オブイェクトは知識豊富で有るが絶対では
無いし間違いもある。」
そうです、それは清谷氏も同様ですけどね。

「反論意見を聞かず特定個人を闇雲に信用
することは宗教だと考える。」
それは774氏の事ですか?
信じたいモノを信じたい方になにを
言っても無駄ですので、ご自分が信じ
たい「事実」を信じれば宜しいのではな
いでしょうか?

自分が信じたい事実は現実とは
大抵違いますが幸せならそれで
いいんじゃないですか?
ぐすたふMk.U
2010/09/19 10:11
本文中に陸幕広報が公開するつもりがなかった、というのは事実誤認でした。某誌では同じような申請をしていたのに撮影の許可がでなかったという話をぼくが誤解していました。
本文は訂正しました。
キヨタニ
2010/09/19 10:44
>それを披露することよって恥をかいている

スポールライナーは装甲ではありません。
(広い意味では装甲システムの一部ですが)
ダイニーマ初め装甲メーカーはそのように定義しています。

技本が誤った認識をしています。
スポールライナーを実用化もしていない役所が、実際に製品を供給あるいは使用しているメーカーの定義はおかしいというのはおかしな話です。技本の定義は国内はともかく外国では通用しません。権威を盲従するのは如何かと。
キヨタニ
2010/09/19 10:50
>ぐすたふMk.Uさん

>>774
「軍事研究でもその違いについて言及する
清谷氏以外のコラムが有った。」
内容を確認したいので教えてください。
何年何月分の何ページですか?

2009年8月号P.117、一戸崇雄氏の記事です。
「内張装甲=スポールライナー」と言っていますが、「付加装甲の定義に含まれないもの」、「防弾効果は期待されていないもの」とも言っています。
個人的には「防弾効果が期待されるもの」を「装甲」と呼ぶべきだと考えます。
774
2010/09/19 11:20
>スポールライナーを実用化もしていない役所が、

………え?
うーん
2010/09/19 12:02
そもそも”付加装甲の定義”って何よ?
うーん
2010/09/19 12:07
「陸幕広報室が頭を抱えたらしいです」の部分を
削除していますね
名無し
2010/09/19 19:31
>名無しさん
いや、その旨はキヨタニ先生がコメントで言ってるんだけどね。
問題はばっさり削除しただけなんで記事の序盤が訳の分からん事になっている事なんだ。
うーん
2010/09/19 20:09
ああ、でも、”某誌では撮影はNGだったらしいですが。”と付け加えてるか。
うーん
2010/09/19 20:15
>いや、その旨はキヨタニ先生がコメントで言ってるんだけどね。

確かに、キヨタニさんに悪いことをしてしまった。
名無し
2010/09/19 20:35

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