2010年7月27日 14時1分 更新:7月27日 17時43分
群馬県館林市で38.9度(21日)、岐阜県多治見市で39.4度(22日)--厳しい暑さが続く今年、日本列島の各地で「今夏最高の暑さ」が日々更新されている。「日本で一番暑い町」は一体どこか。猛暑とどう付き合っているのか。【藤沢美由紀、小林哲夫、中山裕司】
気象庁の記録によると、過去最高の暑さは、埼玉県熊谷市と岐阜県多治見市が07年8月16日に記録した40.9度。山形市で1933年に記録された40.8度がそれに次ぐ。
熊谷市は05年から「あついぞ! 熊谷」をキャッチフレーズに暑さをPR。市企画課の田島稔主任は「他自治体と違い、記録の前から取り組んできた」と胸を張る。今では、汗をかく太陽のキャラクター「あつべえ」グッズ▽市内産コシヒカリ「あついぞ熊谷40.9℃米」▽地元の水を使ったかき氷「雪くま」などが町を盛り上げる。
高さ約5メートルの温度計を07年から毎夏設置する老舗百貨店「八木橋」。猛暑の恵みか、オリジナルの「あついぞ!熊谷」Tシャツが昨年比2割増の売れ行きだ。「明るい話題が少ない業界で、うちは『暑いぞバブル』がある。どうせ暑いなら楽しんだ方がいい」と同店の宮地豊販促・企画課長。ライバルの動向を気にしつつ、最高気温のチェックが日課だ。
市には「イメージダウンでは」などと疑問も寄せられる。田島主任は「暑くてこれほど盛り上がる町はほかにないのでは。町の活性化につなげたい」と力を込める。「たとえ記録を抜かれても、熊谷は気持ちの熱さが日本一」とライバルをけん制するのも忘れない。
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岐阜県多治見市は今年、名産品のうなぎにちなんだマスコットキャラクター「うながっぱ」をプリントしたエコうちわを5000本製作。各種イベントのほか、気温が38度を超えるとJR多治見駅前で配布する。39.4度を記録した22日は早速、市職員と着ぐるみのうながっぱが汗だくでうちわを配った。
暑さを克服する取り組みも進め、市は霧を噴き出すミスト発生装置を、これまでに市内の公園に4基設置。
陶磁器の産地として蓄積された技術の活用も試みており、市陶磁器意匠研究所と製陶会社は、保水力の高いセラミックス素材のタイルを共同開発し、打ち水効果を高められないか研究中。市内の業者と名古屋工業大は、太陽光を宇宙にはね返して気温上昇を抑える「太陽光反射タイル」を開発した。
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沖縄など緯度の低い地方がもっと高温になりそうだが、なぜ熊谷市や多治見市が「最も暑い」のか。
気象庁の田代誠司・天気相談所長などによると、両市が高温になる要因は、ともに内陸部に位置し、気温の上昇を抑える効果を持つ海風があまり入ってこないため。加えて、熊谷市は新潟・群馬県境の三国山脈から乾いた熱い風が入ってくる地点にあたり、多治見市は盆地の地形とともに滋賀・岐阜県境にある伊吹山地を越えて乾いた風が入ってくる。
一方、沖縄は島なので地上にたまった暖かい空気が海風で吹き流され、気温はそれほど上がらない。また「観測環境によって値が上下することもある」(気象庁関係者)という。