しかし、現段階ではまだあまり期待してはいけないと思います。この会議は、閣議決定を根拠に設置されただけであり、諮問会議と違って法律で規定されていないので、実際には何の権限もないからです。官僚の側から見たら、この違いは非常に大きいと言わざるを得ません。
かつ、諮問会議の経験から、総理が議長というのはともかく、どの閣僚がこの会議での司令塔になるのか、その人と事務局の双方が戦略的に官僚と闘える体制になっているかが重要なのですが、この点はまだ未知数です。
ついでに言えば、民間有識者の布陣も弱いと言わざるを得ません。これも諮問会議の経験から、民間有識者の役割は、官僚の意向を受けた族大臣の既得権益擁護的な主張を論破することですが、その点から今の布陣には不安と疑問を感じざるを得ません。
従って、新政権が正しい政治主導を実現できるかどうかについては、器だけに騙されることなく、本質的な点が十分にカバーされているかどうかを注視する必要があると思います。
“パクリの天才”を活かすべき
代表選での菅・小沢の全国演説行脚に同行した記者さんと話をすると、実は複数の人が異口同音に怒っていることがあります。それは、“菅総理は小沢氏の発言をパクってばかりいた”ということです。
9月14日の国会議員の投票前の最後の演説で、小沢氏が「私には夢がある」と話したら(ちなみに、この夢の内容はすごく正しいと個人的に思っています)、菅総理が「私にも夢がある」と話しましたが、それと同じことが何度も地方で起きたらしいです。小沢氏が演説の中で政治主導を強調すると、それまで一言も言及しなかった菅総理も政治主導を言い出すなどです。
絶対に実現したいことがない人ほど、演説などでそうしたパクリをしてしまうのかもしれませんが、私は逆に、菅総理は“パクリの天才”とも言えるその才能をフルにこれからの政策に発揮すべきではないかと思います。
フランスのミッテラン大統領は、1981年に大統領に就任して社会主義的政策を展開しましたが、それでフランス経済が悪化すると、ヨーロッパ統合への対応を旗印に政策を市場主義的方向に大転換しました。その結果フランス経済も好転し、ミッテラン自身も14年も大統領を務めました。君子豹変が成功した典型例です。菅総理にも是非同様の対応を期待したいものです。