2010年7月27日 11時32分 更新:7月27日 12時22分
東京・秋葉原で17人が死傷した無差別殺傷事件で、殺人罪などに問われた元派遣社員、加藤智大(ともひろ)被告(27)の被告人質問が27日、東京地裁(村山浩昭裁判長)で始まった。加藤被告は「インターネット上の掲示板で嫌がらせする人に対して、やめてほしいと分かってもらうための手段でした」と動機を説明。「事件を起こすべきではなかったし後悔している」と述べた。被告が法廷で発言するのは1月28日の初公判以来。【伊藤直孝、和田武士】
加藤被告は事件の背景として、ネットの掲示板を荒らされたり、被告になりすまして書き込みをされるといった嫌がらせを受けていたと供述。「嫌がらせをやめてもらうために『事件を起こす』と警告してきたがなくならず、事件を起こして報道してもらうことによって、本当にやめてほしかったと知ってもらおうと思った」と述べた。
弁護人から「掲示板の利用をやめようと思わなかったのか」と問われると、「それはできない」と即答。「現実は建前社会でネットは本音社会。本音を言える場所はとても重要で、他に代わるものはなかった。その人間関係こそが重要だった」とはっきり述べた。
さらに、事件を起こした原因は「三つある」として、掲示板への嫌がらせのほか、言いたいことや伝えたいことを言葉ではなく行動で示して相手に分かってもらおうとする自分の考え方や、掲示板に依存していた生活のあり方を挙げた。また、そうした考え方になった理由を「小さいころの母の育て方が影響していると思う」と分析したが、「親のせいということではなく、客観的に感情を抜きにして自己解析した結果」と答えた。
その後、小中学生時代を振り返り「(母に)九九が言えないと風呂に沈められ、食事が遅いとチラシにぶちまけられたご飯を床の上で食べさせられた」と説明。「弟は同じことをしても何もされず、自分だけが目の敵にされていると感じた」と述べ、「(学校に提出する絵や作文は)いつも母親に直されて自分の作品じゃなかった。進路も小学校低学年の時から母に北海道大工学部と決められていた」と話した。
加藤被告は冒頭「被害者の方、ご遺族の方に申し訳なく思っている」と謝罪。「同様の事件が起こらないように参考になることがあればお話ししたい」と淡々と語った。
被告人質問は、8月4日の公判まで計5回行われる予定。