2010年7月24日 22時58分 更新:7月25日 0時23分
「もらえるものがもらえないのは、つらい。天皇賜杯、何とかならないんですか。相撲を国技たらしめているものなのに」。優勝した横綱の心にすきま風が吹いた。24日、愛知県体育館であった大相撲名古屋場所14日目で、3場所連続15回目の幕内優勝を46連勝で決めた横綱・白鵬関(25)。支度部屋で喜んだのもつかの間、口をついて出たのは偉業への達成感ではなく、角界混乱のあおりで抱くことのできない賜杯へのこだわりだった。【和田崇、村社拓信】
優勝回数で輪島、そして連勝記録でも大鵬と、尊敬する横綱を超え「重い(記録)ですよね」と話した。区切りを迎えた精神状態を問われ、伏し目がちに「非常に良かったです」と心にもない言葉を吐いた後、自ら「いいわけないでしょ」と否定した。「もらえるものがもらえないんですから」
横綱の心の叫び、いや力士全員の総意だった。場所前にも優勝力士への表彰式自粛に「国技をつぶす気なのか」と発言し物議を醸したが、賜杯を抱く身となって、その思いが再燃した。「何回優勝しても(賜杯がもらえない今回は)変な気持ちになるのに、もし初優勝ならどんな気持ちになるのか。みんなの努力を考えると、寂しい」。思いを抑えきれなくなって一気に語った。
重苦しさを引きずりながらの帰り道。沿道で待ちかまえた大勢のファンの姿に、少しの笑みがのぞいた。「一番うれしいのは応援してくれる人がいること」