2010年7月25日 22時59分 更新:7月25日 23時43分
揺れに揺れた大相撲名古屋場所が終わった。「名古屋の皆さまに感謝です」。史上初の3場所連続全勝優勝を果たした横綱・白鵬関は涙をぬぐい、声を絞り出すように声援を送り続けたファンに謝意を述べた。暴力団組員の観戦、野球賭博と不祥事が続く中での偉業にファンからは温かい拍手が送られた。横綱がこだわった賜杯の授与もなく数分で終わった表彰式。異例の事態の中で始まった名古屋場所は異例のまま幕が下りた。【福島祥、稲垣衆史】
結びの一番、この日最大の声援が愛知県体育館に響いた。白鵬関が豪快な上手投げで把瑠都関を降し、3場所連続の全勝を果たすと、土俵に向かって座布団が乱れ飛んだ。
表彰式で白鵬関に笑顔はなかった。目に涙をため、表彰状と優勝旗だけを受け取った。だが、優勝インタビューでは、涙をぬぐいながら「応援してくれた名古屋の皆さまに感謝です」と力強いメッセージを送った。
史上3位の連勝記録を達成したことを聞かれると「うれしいですが、こういう場所で残念」と話し言葉を詰まらせた。「頑張れ」と励ますファン。「来場所も精進するだけ」と決意を語ると、会場からは「ありがとう」と一層大きな声援が起こった。表彰式後の優勝パレードでは、白鵬関は穏やかな表情で手を振り、沿道から手を伸ばすファンに握手で応じた。
モンゴル国旗を手に「ハクホー、ハクホー」と大きな声援を送った同国出身で愛知県豊田市の会社員、ラクバ・ドルジさん(24)は「これからも相撲を盛り上げて」と母国のヒーローをたたえた。一方で「テレビ中継がなくなり寂しかった」。名古屋市港区の自営業、石原彰治さん(63)、くみ子さん(62)夫妻は「賜杯をあげたかった。白鵬にはまた頑張ってほしい」と話した。
開催さえ危ぶまれた名古屋場所。千秋楽を長男(6)や友人らと観戦した同市緑区の主婦、田村朋子さん(35)は「名古屋場所を中止して反省してもよかったのではないかとも思う。子供から『とばくって何?』と聞かれました」と複雑な表情で土俵を見守った。
同市西区の会社役員、大野芳嗣さん(41)は足早に会場を後にする観客の中で立ち止まり、名残惜しそうに土俵を見つめていた。「そこまでしなくていいんじゃないのかなと思う。テレビ中継ぐらいはやってよかったんじゃないか」と異例の名古屋場所を振り返りながら「今場所の会場の拍手や声援は温かい感じがした」と話した。