2010年7月23日 20時38分 更新:7月24日 1時3分
大韓航空機爆破事件(87年)の実行犯で北朝鮮の元工作員、金賢姫(キム・ヒョンヒ)元死刑囚(48)が23日、東京・羽田空港から政府のチャーター機で韓国に帰国した。初来日で4日間滞在し、拉致被害者の家族らと面会したが、拉致に関する新情報は得られなかった。一方、超法規的判断での入国や国内での「VIP待遇」に、野党などから非難の声が上がっている。
金元死刑囚は宿泊していた東京都内のホテルから、SPや機動隊員が乗ったエスコートカーなど約10台の車両に警護されて空港に到着。この間、警視庁は数百人の機動隊員を動員した。金元死刑囚は午後4時ごろ、チャーター機で帰国した。
滞在中、横田めぐみさん(行方不明時13歳)ら拉致被害者7人の家族と面会。「めぐみさんに84年ごろに会った」などと話したが、具体的な消息など新情報は語られなかった。
出入国管理法上、韓国で死刑判決を受けた金元死刑囚は入国できない。しかし法務省は今回、特例で上陸拒否をしない判断を出した。出入国に政府がチャーター機を用意、移動にはヘリコプターも使用。鳩山由紀夫前首相の別荘や都内の高級ホテルに宿泊させるVIP待遇だった。運航会社によると、チャーター機は2往復で計1000万円、ヘリは40分で60万円かかるという。
ヘリでの移動は遊覧飛行だとする野党などの非難に対し、中井洽・拉致問題担当相は23日の会見で「非難されることとは思わない」と述べた。さらに「ヘリに乗るというだけで、韓国は反対した。だから『私の責任で飛ばしてやってくれ』と言った」などと話した。
一方、政府の拉致問題対策本部は23日、金元死刑囚と被害者家族らの面会の様子を撮影した写真と映像を公表した。写真は317枚、映像は33分。田口八重子さん(同22歳)の長男、飯塚耕一郎さん(33)と一緒に、笑顔で料理をする様子も写されている。【合田月美、鮎川耕史】