2010年9月16日1時4分
1週間前の海上保安庁の巡視船と中国漁船の衝突。4月の中国軍艦隊による沖縄沖通過問題。尖閣諸島の領有権やガス田開発など、日中の懸案が集中する東シナ海で「波」が高まりつつある。中国では日本大使館が在留邦人に対し、中国人を刺激しないよう注意を呼びかけた。海上自衛隊の哨戒機P3Cに15日同乗し、「火種の海」を見た。
日中間のあつれきの舞台とは思えない、静かな海面。鮮やかなコバルトブルーの海が水平線まで続く。
海自那覇基地を飛び立って45分、尖閣諸島の久場(くば)島がうっすらと見えた。1週間前、この近くで海上保安庁の巡視船に中国漁船が衝突した。この日、中国漁船は確認できなかったが、海幕幹部が「東シナ海はすでに中国の海だ」と話すほど、10年以上前から中国漁船による操業が繰り返されているという。
尖閣諸島の周囲12カイリ(約22キロ)の領海の外側では、海上保安庁の巡視船が漁船などの領海侵犯に目を光らせる。P3Cが不審な船を見つければ、その情報は近くの巡視船に伝えられるという。
ただ、レーダーなどで不審な船影が見つかれば、実際の船舶の識別は目視で行われる。乗員11人のうち船舶識別を担うのが機上武器員の役目だ。堀龍也2等海曹(34)は、周辺国が持つ艦艇や商船の船種や船籍を覚え、東シナ海を航行するほぼすべての船舶を識別できるという。
海自は東シナ海に通常毎日1回、P3Cを少なくとも1機飛ばし、警戒監視活動を続ける。
日米両国が年内のとりまとめを目指す「同盟深化」では、この海域にある南西諸島の警戒監視活動の連携強化が焦点の一つになっている。日米同盟に詳しい拓殖大学の川上高司教授は「米国は国防費の削減などで南西諸島周辺の態勢は手薄だ。この海域の警戒監視を日本が分担するのは当然の流れで、今後の『同盟深化』の協議で、この海域の『負担の共有』を話し合うことが課題だ」と指摘している。