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【芸能・社会】押尾被告をバッサリ 今回の懲役に1年6月加算か2010年9月18日 紙面から ◆判決要旨元俳優押尾学被告に対する17日の東京地裁裁判員裁判の判決要旨は次の通り。 【MDMA譲渡】 被告は、知人から譲り受けたのはMDMA約10錠ではなく粉末だとするが、知人に薬物の処分依頼や口裏合わせをしており、信用できない。 このMDMAを田中香織さんに譲り渡し、田中さんがこれをのんだ。 【保護責任者遺棄】 被告は8月2日午後、田中さんに「来たらすぐいる?」とメールし、「いるっ」と返信があった。これは、六本木ヒルズの部屋に来たら、すぐMDMAが欲しいかを尋ね、田中さんが欲しい旨を答えたやりとりと認められる。部屋に来たらすぐ性交をするかという意味との弁解は、日本語として非常に不自然で虚偽。 田中さんが独自にMDMAを入手できなかったとまでは言い切れないが、メールのやりとりや知人の話から、被告の弁解は信用できない。 田中さんの容体について、被告の捜査段階の供述調書は、迫真性、具体性を備えており、任意性に疑いはない。あぐらをかく、怒鳴る、白目をむき出す、うなり声を上げた後に倒れたという約30分間の推移は、医学的に不合理不自然ではない。 錯乱状態が約10分続いた後、突然心肺停止状態になったという被告の公判供述は信用できない。 心臓マッサージしたのは、午後6時47分〜53分。被告は32分に電話をかけ始め、35分の電話で田中さんが意識を失ったことを知人に伝えているから、30分ごろには意識障害の状態に陥り、そのころから心臓マッサージを始めたころまでの間には心肺停止状態に至ったと認められる。 錯乱状態に陥った田中さんが、保護を要する「病者」なのは明らか。MDMAは被告が譲り渡し、被告以外に保護できる者はおらず、119番通報も容易だったことに照らし、保護すべき責任があったことも明らか。 遅くとも錯乱状態になってから数分が経過した時点では通報すべきだった。救命可能性があったのに、通報しなかったのだから、保護責任者遺棄罪が成立する。 救命可能性は、医師の間でも「9割以上」「30%ないし40%」「低いと10%、高くても60%」などと見解が分かれている。直ちに通報しても救命が確実であったことが合理的な疑いをいれない程度に立証されているとはいえず、保護責任者遺棄致死罪は成立しない。 【量刑理由】 被告は自らの麻薬使用の発覚を恐れ、通報しなかった。芸能人としての地位や仕事、家庭を失いたくないという自己保身のために、必要な保護をしなかった。酌量の余地はみじんもない。 MDMAの服用が一つ間違えば人の生命、身体に重大な影響を及ぼす危険性があることを十分に認識していながら、安易に服用を続けた結果、犯行の前提状況に至ったもので、強い社会的非難を免れない。 致死罪の責任を問うことはできないという判断だが、速やかに通報していれば、救命可能性は相応にあったのであり、死亡しなかった事案とは犯情が異なる。 遺族らに慰謝の措置を講じていないどころか、MDMA譲渡を否認した上、保護責任がないと主張するなど真摯(しんし)な反省の情は皆無。罪証隠滅工作もしており、犯行後の情状は甚だ不良。 一方、約9カ月間身柄を拘束されて芸能活動を休止せざるを得なくなるなど、一定の社会的制裁を受けている。 ◆執行猶予取り消され懲役1年6月と合算押尾被告は今回の実刑判決が確定すると、昨年11月にいったん確定した執行猶予が取り消され、懲役1年6月が今回の懲役2年6月に合算され懲役期間は合計4年となる。さらにここから未決こう留日数180日が差し引かれ、現時点では3年半の実刑となる。 ◆出所後は海外で音楽活動?刑期を終え出所してからの押尾被告はどうなるのか? 押尾被告は2005年12月にデビュー以来所属していた大手芸能プロから独立。フリーの期間を経て08年5月、海外進出を視野に入れ大手レコード会社・エイベックスと契約したが、昨年、事件後に契約解除された。 となると、出所後、国内の芸能プロでは押尾被告の獲得に手を上げるところはなさそう。 先月は月刊誌に自らの“獄中手記”を発表。獄中で日々、気持ちの変化を書き留め、公判中は小まめにメモをとっていただけに、手記出版の可能性も高い。発売すればそれなりに話題になるだろう。 受け皿となる芸能プロがなければ国内での芸能活動復帰はかなり厳しい。 しかし、もともと、英語が得意で、拘置所ではスペイン語を勉強しているというだけに、英語圏もしくはスペイン語圏に移住し、ほそぼそと好きな音楽活動をする可能性もありそうだ。 ◆元妻・矢田亜希子は無言押尾被告の実刑判決を受け、本紙は元妻で女優の矢田亜希子(31)の心境について所属事務所に問い合わせたが、「担当者が不在で対応できない」と返答するのみだった。 矢田は昨年8月に押尾被告が麻薬取締法違反で逮捕された直後の7日に離婚を発表。今年3月、本紙などの合同インタビューの際、押尾被告とは「連絡するつもりはない」と完全決別を宣言した。 5月29日放送のフジテレビ系ドラマ「刑事・鳴沢了〜東京テロ、史上最悪の24時間〜」に刑事役で出演して女優復帰。現在も仕事と両立させながら、母としても2歳の長男に愛情を注いでいる。
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