はたきこみで琴奨菊(下)を下した白鵬=両国国技館で
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◇秋場所<6日目>
(17日・両国国技館)
4場所連続の全勝優勝を狙う横綱白鵬(25)=宮城野部屋=は琴奨菊をはたき込んで初場所14日目からの連勝を53に伸ばし、千代の富士(現九重親方)が1988年に達成した昭和以降2位の記録に並んだ。7日目は小結稀勢の里と対戦する。大関陣は琴欧洲が稀勢の里を寄り切り、6連勝とした。把瑠都は新関脇阿覧を押し出し、日馬富士も旭天鵬を押し出してともに5勝目。13度目のかど番の魁皇は栃ノ心の寄りに屈し、3勝3敗となった。白鵬、琴欧洲と平幕嘉風の3人の全勝は変わらず。十両は豊ノ島がただ一人の6連勝。
白鵬がついに戦後不滅だった大記録に肩を並べた。千代の富士(現九重親方)が1988(昭和63)年に達成した53連勝。偉業の瞬間、観客からは拍手の嵐が“平成の大横綱”に降り注いだ。
記念すべき勝利は、琴奨菊をあっけなくはたき込んで決めた。「もともと負けられない地位。それだけ考えて、流れの中で勝ちました」。大事な一番に出番前から意欲十分。支度部屋のテレビで流れていた千代の富士の53連勝目の映像を、けいこの手を休めて凝視し、出陣前には「フンッ」と、部屋に響き渡る大きな気合の声をあげた。その気負いからか、取組では引いて相手を呼び込む危うい場面もあったが、盤石の下半身はびくともせず、落ち着いて琴奨菊を転がした。
「場所前から一番近い目標が53だった。それに並んでうれしい」。千代の富士は若き白鵬の目標だった。体が細くかわす相撲が多かったころ、千代の富士の左前まわしを取って速く攻める相撲を、ビデオで何度も見て参考にした。「体が一段と大きくなれば、すごい横綱になる」と激励も受け、その型を極めて大関、横綱への道を突き進んだ。連勝記録で並び、公言していた恩返しを見事に果たした。
いよいよ今後は「伝説の世界」への挑戦だ。現代の多くの日本人が実際目にしているのは千代の富士の53連勝まで。「次の目標? 60にしておきますか」と笑ったが、その向こうには双葉山の69連勝がそびえている。「夢で相撲を取ったこともある」と言うほど尊敬する角聖への挑戦。平成の大横綱が、ファンとともに未知の領域に分け入っていく。 (田中一正)
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