「大相撲秋場所6日目」(17日、両国国技館)
横綱白鵬(25)=宮城野=が平幕の琴奨菊をはたき込んで53連勝とし、千代の富士(現九重親方)が88年に樹立した昭和以降歴代2位の記録に並んだ。1月の初場所14日目から勝ち続けている大横綱に、母国モンゴルでは最高勲章にあたる「チンギス・ハーン勲章」の授与を検討。横綱審議委員会も「特別顕彰」を検討しており、国内外から期待が高まっている。“千代の富士超え”に挑む7日目(18日)は、小結稀勢の里と対戦する。
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22年ぶりに生み出された快挙。平成の大横綱が、ついに昭和の大横綱に肩を並べた。
さすがに取組では硬さが見られた。右で張って琴奨菊の出足を止めたものの、まわしに手がかからない。少しばたついた攻防から、最後は体を開いてはたき込んだ。「もともと負けられない地位なので、それだけを考えて臨みました」。白鵬はようやく一息ついた。
これまで何度も千代の富士の映像を見て、研究を重ねてきた。まだ大関に昇進していなかったころ、元千代の富士の九重親方から「もっと力をつけて体が大きくなれば、すごい横綱になれるよ」と言われた逸話を明かし、「場所前から一番近い目標が53連勝だった。並んでうれしい」。あこがれの横綱と同じ位置に立ち、晴れやかな笑みを浮かべた。
白鵬の偉業に、国内外で祝福ムードが高まる。16日に特別表彰を示唆した横審・鶴田委員長は、改めて「千代の富士の記録を超えた場合は、横審として顕彰を含めて考えています」とした。母国モンゴルでは、最高勲章にあたる「チンギス・ハーン勲章」授与の話が持ち上がっている。モンゴルの国会にあたる国民大会議議員である元旭鷲山のダヴァー・バトバヤル氏が、12日にエルベクドルジ大統領から相談を受けたという。
朝青龍は日本の国民栄誉賞にあたる「労働英雄賞」を受賞しているが、バトバヤル氏は「労働英雄賞よりも上の何かをあげよう。勲一等に値するものをあげよう、という話になった」と明かす。スポーツ選手が「チンギス・ハーン勲章」を授与されたことはないという。「できれば69連勝を達成した時にあげたい」と、さらなる連勝記録の更新を期待した。
戦後では最多タイ、昭和以降の記録で上は双葉山の69連勝だけとなった。「双葉山さんと夢では相撲を取ったことがあるんだ」と笑顔を見せた。かねて「あこがれ」と口にする『角聖』と、土俵上で対峙(たいじ)することはかなわないが、記録上では競える。
「偉大な人たちを尊敬しながら、これからもやっていきたい」。過去の大横綱への挑戦を夢見ながら、白鵬は連勝街道を歩んでいく。