「公害の町」だった三重県四日市市のコンビナートが観光資源として注目を集めている。暗闇に明かりで浮かび上がる「工場萌え」ブームがけん引車だ。海沿いのコンビナートを船で周回するクルーズが運航開始以来、満席状態で「婚活クルーズ」の企画も始まる。
毎週金、土曜日開催の「コンビナート夜景クルーズ」。夜7時に四日市港の桟橋を出港、伊勢湾からコンビナート地帯を約1時間かけて巡る。
高さ200メートルを超える集合煙突からの煙が風にたなびく。交差する鉄筋やパイプの合間から明かりがにじみ、無機質な金属の塊が温かみを帯びる。コンビナートは約1万ヘクタールに、37事業所が石油化学工場などを構える。
18日夜は家族連れやカップルら約30人が参加。大阪府高槻市のアルバイト米田真之助さん(25)は「四日市公害について小学校の時、習ったが、想像と違いとても美しかった」と感慨深げ、愛知県豊田市の会社員大加隆宏さん(29)は「陸地から見る風景と違い、とても新鮮だった」と興奮気味に話した。
高度経済成長期、四日市市はコンビナートの排煙で多数のぜんそく患者を出した。クルーズではガイドを務める企業OBが公害の歴史も説明する。四日市観光協会の落合純二さん(40)は「クルーズを通じて公害の経験をしっかり伝える一方、市のイメージアップにつなげたい」と話す。