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北九州八幡東病院の高齢者虐待:逆転無罪 福岡高裁「供述誘導」指摘

 ◇はがれたつめ、傷害罪当たらず

 認知症の入院患者2人のつめを切り出血させたとして、傷害罪に問われた元北九州八幡東病院看護課長、上田里美被告(44)に無罪を言い渡した福岡高裁の控訴審判決は、「つめをはがした」とする捜査段階の看護師の供述調書の信用性を否定し、調書作成に、警察や検察の「押しつけ」や「誘導」があった可能性を強く指摘した。供述調書の信用性が争点になり、無罪に至った基本的な構図は、村木厚子・厚生労働省元局長に無罪判決が言い渡された障害者団体割引制度を悪用した郵便不正事件と同様で、密室での強引な取り調べや調書作成に改めて裁判所が警鐘を鳴らしたと言える。取り調べ可視化への流れが加速しそうだ。

 看護師は07年6月(1)当時70歳の女性の右足親指のつめをつめ切りニッパーではく離(2)右足中指に巻いてあったばんそうこうをはがしてつめをはく離(3)当時89歳の女性の右足親指のつめをニッパーではく離--させたとして起訴された。

 控訴審は、(2)はばんそうこうをはがした際につめがとれてしまっただけで傷害罪の構成要件に該当しないと判断。(1)と(3)は、ニッパーで指先よりも深くつめを切除したとして傷害罪の構成要件には該当するものの、つめ切り行為を「看護目的」として「正当業務行為として違法性が阻却される」と認定した。

 更に「警察官からつめのはく離行為であると決めつけられ、供述を押しつけられ、これを認める供述をしたという疑いをいれざるを得ない」「検察官に対する供述も、前のつめのはく離行為を認める供述に沿って誘導されたものと疑わざるを得ない」と指摘し、事実上、捜査の見直しを迫った。【岸達也】

毎日新聞 2010年9月17日 東京朝刊

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