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[21960] (習作)転生物
Name: 華汁リバース◆5c83efdb ID:32b07b0b
Date: 2010/09/18 08:05
初めまして
理想郷を知り早半年。ついに我慢出来ずに投稿してしまいました。
まともに物を書いた事がないので至らない点等が多々見られると思います。
更に携帯のためPCで閲覧される際に非常に見づらい可能性がございます。
ご指摘、ご感想等頂けましたら嬉しいです。

週に2~3回くらいは投稿したい……



[21960] 1
Name: 華汁リバース◆5c83efdb ID:32b07b0b
Date: 2010/09/18 07:52
 自身を偽って生きていたと、最後になり悟る。
 己を捨て我欲を捨てて、御国のために体を張れる男だと。
 それが務め。男児たる矜持だと。

 御国のため、天皇のため。
 それすら体の良い言い訳であった。

 分かって見れば、否分かってはいたのだ。
 単純なこと。ただ愛する者が、守るべき者がいた。ただそれだけ。

 待つ意味も無い、待つ意味“が”無い。何故ならこの任務に帰り道など無いのだから。
 言い聞かせても只ひたすらに待っていますと言い張る人に、お幸せにと一言残して背を向けた。

 己を律して、誇り高く死んでいけると思っていた。
 恥じることなく、思い残すことなく逝けると思っていた。

 ……死にたくないと、貴女の側にいたいと最後の最期で思ってしまった。
 只々自分が情けなかった。

 ……その日一つの若い命が空に散った。



――2010年、日本。

 とある街中を一人の青年が歩いていた。

 彼が明確な意識を持ったのはいつの頃だったか。
 一つか二つ、まだろくに言葉も喋れない歳である。既にその時、彼には明確な意思と幼児にしては膨大な──膨大過ぎる記憶があった。

 記憶を保ったままの転生。
 事態を理解したのは少し後。初めは困惑し焦躁し恐怖した。
 それもやがて消え、最後に苛立ちだけが残った。仏を罵り神を呪い絶望した。

 戦争に負け、神は人になり、国は発展した。
 時代が変われば人も変わる。今の世の気風が嫌いな訳ではない。正直苦言を提したいこともあったが我慢出来なくはない。

 英霊になりたかった訳ではないし、輪廻が嫌だった訳でもない。

 だが何故、何故記憶を残したのか!

 彼の人の笑顔を思い出す……
 待っていますと言う言葉も五十年が過ぎれば時効であろうと。分かってはいる、分かってはいるのに。

 幸せになっていて欲しい。その気持ちに偽りはない。
 だがあの笑顔が他の人に向けられている姿を見て、自分は果たしてそれでも祝福出来るだろうか。
 疑問に思う時点でそれは嘘偽りなのではないのか。
 彼女の幸せより自分を待っていて欲しい、そう思っているのではないのか。

 そもそも行方が知れるとも限らない。
 そして行方が知れないかもと思いホッとした自分がいるのを知り、また自己嫌悪する。

 醜い記憶を持ったまま醜い男そのままで転生してきた。
 運命を呪い、己を呪った。

 難しい顔で悩み続ける彼の幼児期は幸福なものでは無く、周りからも特異な子だと心配された。
 だがそんな彼も小学生にもなると、それなりに忙しくなる。

 何より同年である少年少女達は危なっかしくて、とても黙って見てはいられないかった。
 その頃には妹と弟も出来て、自然面倒を見るはめになる彼は、やがてそれに忙殺される。
 幸い人の世話をしている間は悩むこともなく、段々と本来の性格を取り戻していった。

 中学に上がり第二次成長を迎えると、自分にもまだ精神的に成長する余地があるのだろうかと思い一人苦笑した。

 そして高校を出て過去の自分より年上になった時、漸く彼は迷いを捨てた。
 嘆くのを止め、過去を忘れ、新しい人生を歩いて行こうと一人決心した。
 今度こそは今生こそは誇り高く、恥じることなく生き抜いてみせると。

 そんな折、一人の少女に告白をされた。
 幼な友達ではあったが妹の様にも、娘の様にも思っていた少女であった。
 いや既に彼女は少女と呼ぶのは失礼な年齢であるが。

 今までだって女性を避けて来た訳ではない。
 真面目で泰然とし面倒見も良い、さらに際だって大人びていた(当然である)彼は、嫌う輩もいたがそれ以上にモテた。
 当然何度も告白されたが、彼は誰とも付き合うことはなかった。
 それは彼女らの精神が幼く見えたのもあろうが、何より真剣だとは到底思えなかったからだ。
 女性に対して興味も性欲も人並みにあったが己を律して生きる彼が、己を恥じて生きる彼がそれを表に出すことはなかった。

 よく言えば古風、悪く言えば堅い男であった彼は、未だ誰とも男女の関係を持っていなかったのである。

 幼い頃から隣にいた少女は当然そんなことは承知しているはずだ。
 だからこそ本気であると思った。
 伊達や酔狂でこんなことを言い出す性格でないのは自分がよく知っている。
 真剣に考え、受け止めなければならない。
 そして真剣に考えれば思い出すのは当然……

 彼の人の笑顔……
 待っていますと泣いてた顔……
 今でもそれは脳裏に焼き付いている。

 そして彼は今、過去に決別し現代(いま)を生きるためこの街に来ていた。
 彼女の消息を探る。それがどんな結末があろうとも受け止めて見せる。
 そして、そしたら、あの少女に返事をしようと。



0818
見やすくしてみる



[21960] 2
Name: 華汁リバース◆5c83efdb ID:32b07b0b
Date: 2010/09/18 07:55
 そこにかつての町並みを見出だすのは難しかった。発展した都市は山を削り森を削り、田畑までもがその姿を消していた。

(まぁ仕方ないだろうな。あれから既に六十年以上経っている)

 過ぎ去った月日を想い少し胸が痛む。しかし、このまま呆けていても仕方がないと彼は役所へと歩み出した。

 その道すがら唐突な悲鳴。しかも一人や二人ではない。
(何だ? 何事だ?)
 自然と足は声がした方へと駆け出していた。見馴れぬ商店街の通りを抜け、角を曲がり見えた光景ははたして。

 腹を押さえ倒れ込む女性と、錯乱する人々だった。

(血が!)

 女性がうずくまる地面は赤々とした血が広がって、今も出血が続いているのが分かる。

 過去に空襲で見た血まみれの人々と光景が重なり、瞬時に危険信号が点った。事態を把握するより先に女性へと駆け寄る。

「大丈夫ですか!」

 応急処置の類なら一通り心得ている、が出血が酷い。傷口はかなり深い様だ。

「くそ! 早く! 誰か救急車を!」

 声を張り上げ周りを見渡すと、距離を取って恐る恐るこちらを見遣る者、とそして背を向け駆け出している人々。

 ハッと気付いたのもつかの間。

「うぁあおおおお!」

 奇声を発した男の声が背にかかると同時に激痛が走る。
(熱い!)感じた瞬間、振り返りざまに足をおもいっきり回転させる。

 情けなくもしくじったという思いに駆られる。怪我をした人がいるなら、それには原因があるのが道理。血を見て動転していたらしい。

(武器は!?)

 足をかけ、倒した男の手に凶器は無い。

(何故だ!? こいつは何で攻撃してきた?)

 考えながらも男の顔面を思いきり蹴飛ばす。とにかくこいつを拘束するのが優先だ。
 一瞬見えた顔、そこにある血走った目は到底正気ではない。

「早く! 誰か!」

 それでは伝わらない。具体的な指示でないと混乱した人には行動を促せない。

(自分が混乱してどうする! 落ち着け!)

 必死に自分を叱咤し、怯んだ男の手を掴み、後ろから体重をかけ押さえ込む。

 「そこの人救急車を! あなたは女性を診て! 後あなた! 紐か何か持って来て下さい!」

 一人一人に声をかけ指示を出す。不特定では駄目だ。こんな時は無理矢理でも、お前がこうしろと言わないと動かない、動けない。
(熱い、痛い)男が暴れる。もっとしっかり抑えねばいけない。

(早く誰かこいつを。力が入らない。腕が痺れるんだ)

 自分の背中を流れ、尻にまで垂れる血が気持ち悪い。

(ああ、凶器は背中に刺さったままなのか……)周りの人の目、そして背中の違和感でそれと気付く。

(仕方ない、今はどうしようもない。それより誰かこの男を抑えてくれ)

 目が霞み、意識が途切れ様としているのが分かる。

(まずい、畜生め。何でこんなことに……くそ……)

 何故か彼の人の笑顔が浮かぶ。それはやがて泣き顔になり少女の顔に重なっていく。

(けじめを付けるんだ……そして返事を、返事をしないと……貴女の側にいたいと……伝え…………)

 半ば朦朧とした意識の中で呟やきながら、彼は暗闇に落ちていった。



0818
見やすくしてみた



[21960] 3
Name: 華汁リバース◆5c83efdb ID:32b07b0b
Date: 2010/09/18 07:46
 それは酷く朧げな感覚だった。あやふやで曖昧な……夢より危うく儚い感覚。
 抽象画の如く意味不明だが、時にハッキリとした線を描く。明るくもあれば暗くもある。有象無象が浮いては消える。どこか
 海の満ち引きにも似たそれは……

(自分はこれを知っている。これはあの時と同じだ)

 あの時というのは……

 それに思い至った瞬間、急激に視界が開けた。

 薄暗い部屋の中覚醒した彼は、まず最初に自分の身体を意識した。

(重い!)

 自由にならない手を必死に動かし確認する。
 何とか目の前に差し出したその手は紅葉の様に赤い。そして非常に小さな、紛う事なき赤子の手であった。

(やはり、くそ……くそ! 畜生が! ふざけるな!)
 溢れ出た感情は怒りか悲しみか。
(また、またなのか! また俺は何も出来ずに死んだのか!)

 泣きたい。叫びたい。喚き散らし、何もかもを壊してしまいたい。
 激しい感情に振り回される彼だったが、その激情を赤子の身で表現する術はただひとつ。

「ぉぎゃぁぁあああ! んぎゃぁああ!」

 只赤子としてそのままに、泣き叫ぶ以外になかったのだった。



 時は流れ、彼が三度目の生を受けてから十回目の秋が訪れようとしていた。

 三度目ともなれば慣れたもの、さぞやチートめいた幼少期を過ごしているだろう。という訳にはいかなかった。

 なぜならば彼が此度の誕生を果たした地は日本ではなかった。どころか地球ですらなかったからだ。

 前世(二回目の生)では同じ国だったお陰で言葉も文化もそこまで変わらず、違いもすぐに適応出来る範囲であった。
 だがここでは何もかもが一からやり直しと言ってもいい。

 普通はそれが当たり前であるはずの言葉に文字、常識や生活習慣を全て最初から学び直すのは大変であった。

 前世でも体験した今省みれば恥ずかしい、散々泣き喚いて運命を嘆いていた時期もあった。
 だが今回の彼は赤ん坊の内にでそれを乗り越えたため周囲に情けない姿をを見せずにすんだ。
 ただ母親だけは泣いては寝てを繰り返す子供に、過剰に不安を抱き随分心配させてしまったが。(今でも過保護なのはこのせいかも知れない)

 文化の違いについては幸とも不幸とも言えるが、昔を思い出させるきっかけが少ないのは彼にとっては良かったのかも知れない。

 しかしこの世界では言葉や文化の違いなんて些細なものだと言える程、元の世界とは大きく異なる点があった。

 ひとつは人類以外の知的生物が存在すること。

 巨大な魚に揺り篭を覗き込まれた時彼は思わず絶句した。
 立っていたならば腰を抜かしていただろうから、成長する前に遭遇出来たのは幸いである。

 そしてもう一つが魔法と呼ばれるものだ。

 魚人を見た時から薄々は察していた彼だったが、やはり何もない所から水やら火やらが出て来るのは絶句するしかなかった。

 つまるところファンタジーな異世界である。

 冗談にも程がある、がそもそも転生自体が冗談の様なもの。慎んで受け入れざるをえない。

 またここでは貧富の差が非常に激しいらしいが、彼の家はどうやらこの近辺でも裕福なようで飢えることもなかった。

 一部の人からすれば夢の如く恵まれた環境かも知れない。 しかし彼には自分が幸運だと思うことは到底出来なかった。

 何故自分が、何故あのタイミングで……

 理不尽な運命に惑わされ、四十年にも満たない生涯で二度の死を経験した彼は、しかしそれでも諦めることを良しとせず抗い立ち向かうことを決意する。

 誇り高く、何ものにも屈することなく生き抜いてみせると。

 結果として彼は自分の無力を嘆き、だがそれを克服しようと知識と力をひたすらに求めることなる。

 そして今も師に教えを乞いに向かう、その道中に彼はいた。



 サクサクと落ち葉を踏み締める音が木々の間に静かに響く。
 ここケントウッドは大陸の北に位置している。夏が終われば秋から冬へ一足飛びだ。
 冬になればこの森も雪に閉ざされ、おいそれと近付けなくなる。

 だがそれでも彼はここに通わなくてはならない。
 人付合いの悪い偏屈な老人、彼の師匠たる人物がこの奥に居を構えているからだ。
 雪をかき分け奥山へ入り進む苦労を思うと今から気が滅入る。

 そんなことを考えながら鬱々と歩いているとやがて、ひっそりと隠れる様に佇むあばら家が見えてきた。

(まるで隠れ家か何か……いや事実その通りなのか)

 彼の師は明らかに人目を避け、何かから逃げ隠れる様に潜みこの森から出てこない。
 理由は彼も知らないが、無理に詮索する必要もない。

 誰にでも人に言えないことはあるものだ。
 そう、自分もまたそうである様に。

「師匠! 私です!」

 戸を叩き来訪を告げる。日は既に天高く、流石にもう起きているはずだ。
 一般人であるならば、だが。

 「師匠起きて下さい! もうすぐ昼ですよ!」

 返事はない。まさか出掛けているのか。
 いや今日の来訪は知っているはずだ。変人だが約束を違える人ではない。
 と思うや否や背に気配を感じ、振り向き様に裏拳を叩き込む。
 が、空振り……いない!
 
 ハッとして横に飛びすさろうとするも遅い。
 目に星が飛び散ると同時、頭に鈍痛が走る。

「痛っ!」

 足元を見やると投げ付けられたであろう木の杖。
 そして頭を押さえ視線を上げるとそこには、いた。

「甘いわぼけぇ! あほぉぼけぇ……」

 天狗。そうとしか言いようのない姿形をした老人。
 射抜く様な目付きに赤い顔、そして高い鷲鼻。袴の様な衣を着てその背からは真っ黒な翼が出ている。
 彼の師匠、ヤンデルフィン· アババッチー·ヨシチネその人であった。
 本名かどうかは分からない。
 様々な違いに慣れてきた彼だがここの人々のネーミングセンスだけは理解し難い。
 それとも発音が似ているだけましと思うべきか。

「奇襲を受けてからの反応が鈍いわニブチンめ! このにぶちんちん! あほぉぼけぇ……」

「すいません。ですが……」

「まぁいいわ。ほれ行くぞ!」

「はい! は、いやどこへ? 今日は座学の予定では……」

「池じゃ池! イケイケじゃあほっほーい!」

 一声挙げると返事も待たず、バッサバッサと奥にある池の方へと飛んで行ってしまう。

 何故こんな森に潜んでいるのかは知らないが、この性格と珍妙な口調が原因の一つであるのは間違いないと彼はまた一人確信した。

「ほーいさっさと来んかーい! イケイケじゃー! イケイケじゃー!」

「師匠お待ち下さい! 杖! 杖を忘れてますよ!」

 慌てて叫ぶも師は既に遥か彼方。
 彼はハァと嘆息を一つ、杖を拾いあげると後を追うのだった。



一気にフランクな感じになってしまった。今後も文体がぶれたりすると思われます。にしても未だ主人公の名前すら出ないのは如何なるものか。今後も行き当たりばったりで進みますがどうぞよろしく。


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