札幌市内の病院勤務医のおよそ4人に1人が、厚生労働省の過労死認定基準に相当する長時間労働をしていることが、札幌市勤務医協議会(工藤靖夫会長)の調査で分かった。特に大学病院で、こうした長時間労働が半数近くに上るなど、労働環境の厳しさが目立つ。工藤会長は「勤務実態を広く知らせ、行政に改善策を要請したい」と話している。
調査は6月5日~7月20日、札幌市内の勤務医4272人を対象に実施し853人(20%)から回答を得た。週平均実労働時間は、48時間以上~60時間未満が最多で24・4%。過労死認定基準の一つである「直近の1カ月で100時間超の時間外労働」に相当する週平均64時間以上は27・0%で、このうち100時間以上も2・7%いた。
特に過酷な勤務が目立つのが、大学病院の勤務医。週平均実労働時間が64時間以上は47・6%に達し、国公立・公的病院、民間病院の1・8~2・4倍。1カ月当たりの平均当直回数も、週5回以上が大学病院は23・0%で、国公立・公的病院、民間病院の3・2~2・1倍。疲労度の実感も「非常に強い」と訴える人が大学病院で45・9%に上り、国公立・公的病院と民間病院の1・7~2・2倍だった。
勤務上での負担(複数回答)を全体でみると「クレームなど患者の過剰な権利意識への対応」と「医師不足」が約49%で最多。「診断書作成など事務処理の多さ」と「過重労働、当直によるストレス・疲労」が約46%で続いた。
工藤会長は、大学病院の勤務医について「年齢が若く年収が低いためアルバイトの当直回数が多く、当直明けも通常勤務が多い。医師の事務作業補助者の導入が民間より進まず、医療以外の仕事が多い」と指摘。当面の改善策として「入院計画書や生活保護関係など書類の多さの改善や、(便利だからと休日、夜間に病院に行く)コンビニ受診を避けてもらうなど患者さんの協力も求めたい」と話している。【堀井恵里子】
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◆札幌市の勤務医の勤務先別労働状況◆
週平均実労働時間 月平均当直5回以上 非常に強い疲労度
64時間以上 100時間以上
大学病院 47.6% 6.4% 23.0% 45.9%
国公立・公的病院 26.0% 1.4% 7.2% 26.9%
民間病院 19.7% 1.7% 10.7% 20.9%
毎日新聞 2010年9月17日 地方版