昨秋来、鳩山と小沢から冷や飯を食わされ、中国大使だけでなく、米国大使まで外務官僚ではない人物にされそうになっていた、対米従属の総本山である日本外務省は、前原の外相就任で、一気に息を吹き返しそうだ。初の民間起用の丹羽駐中国大使は早期に辞めさせられるかもしれない。米国の軍産複合体の意を受けた前原は、どっちつかずの菅首相を手玉にとって、青年将校的に、中国を怒らせる隠然と好戦的な反中国政策を次々に放ち、その分前原は対米従属のマスコミにも礼賛され、菅政権は実質的に前原政権になっていく可能性がある。前原がうまく扇動をやれれば、次期首相になれる。
▼中国が強くなってから日本を中国に挑ませる米国 米国に操られ、近隣の非米大国に対して好戦的かつ自滅的に挑まされるハンサムな若手指導者という点で、前原は「日本のサーカシビリ」と呼べるかもしれない。
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Profile: Mikheil Saakashvili)
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米に乗せられたグルジアの惨敗)
米国にそそのかされてロシアに戦争を仕掛けて負けて窮したグルジアのサーカシビリ大統領と同様、前原ら日本の対米従属派の新たな中国敵視戦略が長く成功するとは考えにくい。後ろ盾である米国は、国債を中国に買い続けてもらわねばならない。ガイトナー米財務長官は、人民元を切り上げない中国を批判する一方で、米企業が中国市場で利益を出さねばならないので中国を非難しすぎてはならないとして、中国制裁法を可決して米中貿易戦争をやりたい米議会のやり方に反対している。
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Geithner Takes Middle Ground on China)
米国は、中国と敵対しつつも交渉し、米国企業を中国市場で儲けさせる体制を維持している。だが、新しい日本の中国敵視策は、米国のような柔軟で巧妙な戦略ではなく、米国の言いなりで中国を敵視して米国に先兵として使われ、米国が引いても日本は引けなくなっていて、米国企業は中国で儲け続けるが、日本企業は中国から制裁されて終わる結末になりかねない。天安艦沈没事件で米国にそそのかされ、底の浅い証拠だけで北朝鮮犯人説を突っ走った挙げ句、中露や自国民から反発され、北朝鮮との融和策に戻ろうとして、ますます政局混乱に陥っている李明博大統領の韓国が、米国から先兵として使われて失敗した先例である。
米国で過激右派のネオコンが台頭したとき、前原は「日本のネオコン」と呼ばれていた。米国のネオコンは深い戦略を持っている。前原がネオコンならば、まだ良いが、前原はネオコンではなく「ネオコンの傀儡」だろう。米国にそそのかされ、日本の政界で権力に登りつめる道まで米国に用意してもらい、いったん権力を取るのかもしれないが、突っ走った挙げ句、最後にはいつの間にか米国にはしごを外され、国家を道連れに窮地に陥る。
米国のネオコンは「隠れ多極主義」である。彼らは、米国自身とその同盟諸国(英日韓イスラエル)を、軍事偏重の過激策によって自滅させ、中国などBRICと途上諸国が跋扈する多極型の世界を出現させ、新興・途上諸国の経済発展で世界を発展させていく新世界秩序を作ろうとしている。ネオコンの傀儡(表向きは仲間)になるのは、とても危険だ。日本が対米従属をできるだけ長く維持したいなら、前原方式の好戦戦略ではなく、従来型の「いないふり」「私たちは無能なんです」戦略の方が良い。その方が、自滅させられずにすむ。過激に稚拙に一本槍にやって、失敗したらすっぽんぽんの無条件降伏というのは、もうやめた方がいい。
そもそも、日本が中国に挑むのなら、まだ中国が経済的にも軍事的にも弱かった数年前にやっておくべきだった。実際には、当時の米国は日本が中国と敵対しないよう、歯止めをかけていた。中国が強くなって米国が崩壊寸前になった今ごろになって、米国は日本をけしかけて中国と敵対させている。
▼台湾を守るはずが反日にしてしまう