2010.9.17 21:09
大勢の報道陣に囲まれ、記念写真に納まる菅改造内閣の閣僚=17日夜、首相官邸【拡大】
17日に発足した菅直人首相の改造内閣。死刑制度や北朝鮮による拉致、朝鮮学校の無償化など旧内閣から引き継がれた課題は多い。担当となった大臣は「しっかり取り組みたい」と意欲を見せるが、省庁などからは「大臣がコロコロ代わってばかりで…」と苦言も。兼務も多く、関係者からは「片手間にならないで」との注文も付いた。
▼拉致・死刑制度
「(首相から)拉致もあるのでしっかり取り組めといわれた。死刑制度の在り方などの懸案もしっかり頑張る」
法相・拉致問題担当相になった柳田稔氏は官邸で就任を通達された後、こう述べ、表情を引き締めた。
千葉景子前法相は東京拘置所の刑場を公開し、法務省内に勉強会を設置するなど、死刑制度の議論に一石を投じた。ただ、省内では柳田氏について「法務省分野の経験はなく、未知数」との見方が強い。ある幹部は「法務行政は国の在り方の根幹にかかわる。世の中の流れを見つつ、これまでの政策との継続性と整合性を取りながら、やっていけるのか」と話した。
拉致被害者家族ら関係者は「柳田氏が拉致問題に取り組んできたとは聞いたことがない」と当惑顔だ。
新内閣では外相になった前原誠司氏が昨年4月に米ワシントンでの講演で「拉致もあるが、日本も(北朝鮮)支援に加わるべきだ」と発言し、被害者家族から批判された。横田めぐみさん=拉致当時(13)=の母、早紀江さん(74)は「期待するたびに担当大臣が代わる。政府は拉致問題をどこまで考えてくれているのかとむなしくなる」とつぶやいた。
▼朝鮮学校無償化
朝鮮学校への高校授業料無償化適用をめぐる対応が決まらないまま大臣が交代した文部科学省では、幹部らが「これまでと変わった指示が出ないだろうか」と不安な表情をのぞかせた。
新任の高木義明文科相は、この問題への発言はほぼ皆無。無償化適用を認める方向で議論が進む民主党の政策調査会を尊重するのかを、幹部らは気にしている様子だ。
ただ、民主党内での議論は菅首相の指示で行われており、ある幹部は「総理の指示だから、大臣も尊重するだろう」と落ち着いた様子で話した。
▼兼務
国家公安委員長に加え、消費者・少子化対策・男女共同参画の担当相も兼務する岡崎トミ子氏。仕事の多さに「きちんと調整しないと大変」と驚いてみせた。
治安や消費者の事故、止まらない少子化など、どの担当分野も課題が山積。発足1年で4人目の大臣を迎える消費者庁の職員は「交代は慣れっこ」と突き放し、全国消費者団体連絡会の阿南久事務局長は「国はまじめに消費者行政に取り組む気があるのか。兼務で片手間にならないでほしい」と訴える。
警察庁の中堅幹部は「国家公安委員長が主になるのでは」と話すが、岡崎氏が韓国での反日デモに参加した経歴を持つだけに、「警察にどんなビジョンを持って、何を求めてくるのか。当分は様子を見るしかない」と困惑気味だった。