「大相撲秋場所5日目」(16日、両国国技館)
横綱白鵬が初場所14日目から続く連勝を「52」とし、昭和以降で歴代2位となる千代の富士の53連勝に王手をかけた。初代若乃花をほうふつとさせる“呼び戻し”(決まり手はすくい投げ)を繰り出し、栃ノ心を圧倒。両国国技館を訪れた元横綱朝青龍からは、記録更新への太鼓判を押された。また、横綱審議委員(横審)の本場所総見があり、両国国技館を訪れた鶴田卓彦委員長は、53連勝以上を達成した際には、横審として白鵬を表彰する意思を明らかにした。
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父に並ぶ一番は、“幻の大技”で決めてみせた。右四つから相手の上手を切った白鵬が、左上手を引き寄せながらすかさず差し手を返すと、栃ノ心は腰から崩れるように土俵に落ちた。
「呼び戻し」‐。
今月1日に亡くなった初代若乃花の花田勝治氏が得意とした。かなりの力量差がないと決まらないとされ、1997年春場所で横綱貴乃花が決めて以来出ていない。2日に行われた立浪一門の連合げいこで披露し、「本場所でもとっさに出せれば…」と語っていただけに、“土俵の鬼”への思いも込められていた。
もっとも、決まり手は「すくい投げ」となり、「(呼び戻しの)イメージでやったんですけどね。あれが『すくい投げ』になるんだね」とガッカリ。「ちょっと違うよね。左(上手)が利いていたでしょ?」と、身ぶり手ぶりを交えて報道陣に取組を解説しながら悔しがった。
それでも、連勝の話になると表情は一変した。「世間のみなさんには“いいネタ”になるんだろうね」とおどけ、「まず、オヤジさんに並んだことが今日は何よりうれしい」と胸を張った。父・ムンフバトさんがモンゴル相撲の「ナーダム」で記録した52連勝に並び、満面の笑みで喜びを口にした。
6日目の琴奨菊戦に勝てば、千代の富士が持つ昭和以降歴代2位で戦後最多の53連勝に並ぶ。本場所総見に訪れた横審の鶴田委員長は「強いな。言うことない」と絶賛。「(53連勝に)あした並ぶだろう。超えると思うよ」と話し、「何か考えないと。表彰してやりたい」と私見を口にした。横審が過去に表彰した力士は大鵬、北の湖、千代の富士の3人。実現すれば、こちらでも偉大な大横綱に肩を並べる。
白鵬は「ごっちゃんです。もらえるものなら、もらいたい」と余裕の笑み。大記録がかかる大一番を前に、「あしたはあしたの風が吹くさ」と、緊張感のかけらもない足取りで場所を後にした。