白鵬(右)がすくい投げで栃ノ心を下す=両国国技館で
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◇秋場所<5日目>
(16日・両国国技館)
4場所連続優勝を狙う横綱白鵬(25)=宮城野部屋=はすくい投げで栃ノ心を退け、初場所14日目からの連勝を52に伸ばして、昭和以降2位の千代の富士(現九重親方)の53連勝にあと1と迫った。6日目は琴奨菊と顔を合わせる。大関陣は琴欧洲が若の里を押し出して5連勝。日馬富士は時天空を押し出し、把瑠都は豊真将を寄り切って4勝目を挙げたが、13度目のかど番の魁皇は小結鶴竜に寄り切られて2敗目を喫した。
伝説の大技で連勝2位タイ王手だ。白鵬が、呼び戻し(仏壇返しとも言う)をイメージしたすくい投げで栃ノ心を退け52連勝。昭和以降2位の千代の富士(現九重親方)の53連勝に、あと1勝に迫った。
ついに出た。土俵中央。白鵬が左上手でぐっと相手の体を引き付けて、差した右腕を返すと、栃ノ心がもんどり打って崩れ落ちた。先日亡くなった横綱初代若乃花(花田勝治氏)が得意とし、白鵬もけいこで練習して「いつか本場所で出したい」と言っていた荒技だ。
だが栃ノ心の体が飛んでおらず不十分だったためか、決まり手はすくい投げ。白鵬は「仏壇返しのイメージでやったんだけど…。あれがすくい投げになるんだね」と不満顔。「(技の名を)知らないんじゃない?」と公認されず悔しさいっぱいだった。
時間前には立とうとしてつんのめる場面もあり、この一番に懸ける意気込みは高かった。連勝2位タイへのリーチだけでなく、父ムンフバトさん(69)がモンゴル相撲で築いた52連勝に並んだ。「きょうはオヤジさんに並んだことが何より。きょうはきょう、明日は明日という感じでうれしい」と喜んだ。
白鵬の奮闘に横綱審議委員も動き出す。場所総見をした鶴田卓彦委員長は「(千代の富士の53連勝は)超えるだろう。双葉山に挑戦してほしい」と絶賛。53連勝を超えた場合「頑張りには何らかの顕彰をしないと」と、場所後の委員会で表彰を検討する考えを示した。
周囲の高まる期待にも、横綱は「自分の責任を果たして、1日集中しきること。それを考えれば、結果はついてくる」とプレッシャー皆無を強調。平常心で、22年間誰も近づけなかった高みに並ぶ。 (田中一正)
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