滋賀県東近江市の湖東記念病院で2003年、入院患者の男性(当時72)の人工呼吸器を外して殺害したとして、殺人罪に問われた元看護助手西山美香受刑者(30)=懲役12年確定=が、近く裁判のやり直しを求めて大津地裁に再審を請求する。弁護人は、捜査段階で犯行を認めた自白は「取り調べの圧力に屈した」ことに伴う「虚偽供述」とする専門家の鑑定書を提出し、無罪を主張する。(大西英正、堀川勝元)
確定判決によると、西山受刑者は03年5月、慢性呼吸不全だった患者の人工呼吸器を外し、急性低酸素状態にして殺害したとされる。
西山受刑者は04年6月、県警の任意の取り調べに「人工呼吸器のチューブが外れてしまえという思いで布団を勢いよくかぶせた」と語り、7月には「チューブを手で引っ張り上げて外した」と述べ、逮捕された。しかし、一審・大津地裁の公判で一転して無罪を主張。「刑事から怒鳴られ、否認する供述書を書くと破られ書き直しを命じられた」などと訴えた。目撃証言がなく裁判は自白の信用性が最大の争点になったが、05年11月に有罪となり、06年10月に大阪高裁、07年5月に最高裁でも訴えは棄却された。
弁護側によると、再審請求では新たな証拠として、供述心理学が専門の大谷大文学部の脇中洋教授による自白調書など72通を分析した供述鑑定書を提出する。
鑑定では、西山受刑者は心理テストなどから「対人コミュニケーションの特性としてかなり高い迎合性」があり、「自己に不利な内容でも進んで供述した可能性は大いに考えられる」と指摘。自白は供述が一貫せず変遷しており、「真の体験記憶に基づいたものとみなすことはできず、虚偽供述とみなすのが妥当」と結論づけている。