この代表選、小沢一郎氏が「政治とカネ」のマイナスを吹き飛ばす新しい政治の方向性を示せるか、注目してきた。
結論からいえば、あるようでなかった。小沢氏の主張は、つまるところ国民に約束したマニフェストを守れ、という一点に集約できた。財源見積もりが甘く守りきれなくなってどう取捨選択するのか、という新しい土俵での議論には乗らず、さらに甘い財源論を展開し馬脚を露呈した。
ただし、なかったようで、あった。安保・外交政策だ。断片的ではあったものの「普天間問題の仕切り直し」「沖縄海兵隊配置の見直し」「対等な日米」といったいくつかの方向性が言葉の端々ににじんだ。
確かに、普天間の袋小路は、この問題の根本的な仕切り直しによってしか抜け出る道はない。その時のカギは、米国の軍事的な基本戦略の変化、つまり、小沢氏の言うところの「(海兵隊など)前線部隊の一線からの引き揚げ」の流れをどう読むか、にある。安保改定50年の節目にそういう交渉をすることが対等な日米関係につながる。
菅直人首相からは、出てこないシナリオである。そもそも小沢氏には91年の湾岸戦争時に1兆円の対米支援をまとめた日米基軸の原点がある。中国カード、国連カードも持っている。台頭する中国との議員外交強化による緊張緩和は、中国脅威論だけの外交の幅を広げるし、その一貫した国連中心主義は、憲法9条との整合性の中で日本の国際貢献をさらに発展させうる。
どうだろうか、小沢外相という人事は。多分、米国と外務省は嫌がるだろう。離米派と見られているからだ。だが、菅首相にはそれくらいの度量が欲しい。小沢氏も200人の議員の支持を得たからには、お返しとしてその剛腕を政策で燃焼させる姿を見せたらどうか。
毎日新聞 2010年9月16日 0時06分
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