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なぜ息子は父を…殺人・放火で懲役20年求刑 栃木

2010.9.9 04:20

 ■甘え、逃げ すれ違いの果て

 父親を刺殺し、自宅に放火したとして、殺人と非現住建造物等放火などの罪に問われた埼玉県三郷市、無職、佐山貴洋被告(23)の裁判員裁判の論告求刑公判が8日、宇都宮地裁(井上豊裁判長)で開かれ、検察側は懲役20年を求刑した。妻を病気で亡くし男手一つで2人の息子を育てた父親。その父を手にかけた有名私立大学で学ぶ長男…。事件の動機の一端が審理を通じて明らかになった。(奥田翔子)

 ◆薄れる躊躇

 「父親に認めてほしかった」。法廷で佐山被告は父親への思いをこう述べた。

 高校教諭の父親は「怖くて、逆らえない存在」だった。中学時代、剣道部で関東大会に出場したときも、「剣道ばかりやって」と褒めてはくれなかった。

 高校卒業後に就職する道を希望したが、父親は許さなかった。大学に進学し、都内で1人暮らしを始めたが、父親に反発するかのように生活は乱れていく。

 大学1年の途中からパチンコに通うようになり、大学キャンパスから足が遠のいた。揚げ句、「遊ぶ金ほしさ」に、父親が次男のために貯蓄していた母親の遺児年金に手を付けた。その額は約300万円にのぼった。

 検察官「(貯蓄に手を付けることは)悪いと躊躇(ちゅうちょ)する感覚はなかったのか」

 被告「最初は躊躇があったが次第に薄れていった」

 ◆「パニック」

 平成21年11月25日未明、惨劇は起こった。

 その3日ほど前、父親は生活態度を改めない被告を栃木市大町の実家に呼び戻した。だが、父子の話し合いは平行線のまま。父親が被告の交友関係を指摘すると、被告はわれを忘れた。

 被告「友達を侮辱するのをやめさせようと包丁を手に取った」

 被告は2度、包丁を父親の胸などに突き立てた。傷は心臓にまで達した。

 検察官「なぜ救急車を呼ばなかったのか」

 被告「パニックになっていて…」

 被告の心にまず浮かんだのは、父親を助けることでなく、「自分が父を殺したことが見つかってしまう」という恐怖。そして、自宅に火を放った。

 ◆父親の思い

 惨劇から半年。被告は父親の本心を法廷で知ることになる。

 息子を心配し、被告の叔母に何度も相談していたことを検察側、弁護側双方が法廷で明らかにした。

 父親は長男の将来を案じ「(被告が4年になる)21年度の学費やアパート代は払う。大学を辞めて働きたければ、この1年を自立の準備期間にすればいい」と叔母に語っていたのだ。

 検察側は論告求刑で「きっかけは単なる親子げんかとは言い切れず、被告の甘えと逃げの果てに起きた」と厳しく指弾した。

 被告は最終意見陳述で「最後まで自分のことを考えてくれた父の思いに応えられるよう、しっかり生きていきたい」と語った。

 裁判員は被告の言葉をどう受け止めるのか。判決は9日に言い渡される。

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