二つ目は、議員内閣制を前提とした首相統治体制である。首相の選出に国民が参加できるように、衆議院議員選挙の際に、各政党が首相候補を明示する。つまり、その政党の国会議員に投票することが、首相選びに直結するという方法である。イギリスの首相選びに近い。
現在とくらべれば、この方法はより国民が首相選びに深く参加していることになる。政権与党も党内の事情や派閥(グループ)の力関係で首相を変えることができないので、政権が安定してリーダーシップも発揮しやすい。
反面、直接指名選挙と比べると、国民が間接的な参加であることは変わらず、国民から与えられた民主的正統性と言う点では弱くなる。加えて、議員内閣制を維持しているので、国会は内閣に対する不信任の権限を持っており、政権が不安定になることも考えられる。実際に、イスラエルでは同様の制度が導入されたものの、不信任決議が連発されて、政権があまりに不安定になったために、この制度は廃止された。
こう見てくると、議院内閣制も含めて、完璧な制度と言うものはない。やはり重要なことは、いま日本が直面している課題は何で、それを解決するにはどのよう政治体制が向いているかを、国会議員のみならず国民一人一人が考えることをおいてほかにはない。
よく日本の民主主義は、第2次世界大戦後に占領軍から与えられたもので、自分たちで勝ち取ったものではないと言われる。現在の制度を前提とするなら、すでに鳩山氏から民主党の代表は代わっているのだから、近い将来に総選挙を行うのが筋というものだろう。もし、民主党がこれからも、政治的課題そっちのけで抗争を繰り返すようなことがあれば、やはり現在の議院内閣制には、構造的な欠陥があると考えざるを得ない。
首相公選制は憲法改正を必要とするものから、現憲法の枠内で実施できるものまで、いくつかのバリエーションがある。今回にも増して首相候補者が政策論を戦わせ、国民が政治に関心を持つという点において、首相選びのプロセスを改革することは、日本国民が「民主主義のかたち」を考える上で絶好の機会である。
(ダイヤモンド・オンライン客員論説委員 原 英次郎)