(cache) 高齢患者つめ切り判決要旨 - 47NEWS(よんななニュース)
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  • 高齢患者つめ切り判決要旨 

     高齢患者のつめ切りをめぐり、北九州八幡東病院の元看護課長上田里美被告(44)を逆転無罪とした福岡高裁の16日の判決要旨は次の通り。

     【供述調書の信用性】

     捜査段階の供述調書について、上田被告は「いくらケアだと言っても刑事は理解してくれず、つめのはく離行為と決め付けられ、説明を封じられた」と公判で述べ、被告の上司も「検察側から、自然脱落以外はすべて人為的にはがすということだ、などと告げられた」と同様の取り調べの状況を述べている。

     被告の捜査段階の供述は、つめのはく離行為を認める部分はもとより、その動機・目的などを含むその他の部分も含め、被告の真意を反映せず、捜査官の意図する内容になるよう押し付けられ、あるいは誘導されたものとの疑いが残り、捜査段階の供述調書を信用することはできない。

     一審判決は、つめを切った後、「自分が見た時には出血はなかった」など被告に有利な状況も含まれていることを指摘し、供述調書の信用性を肯定している。

     しかし、被告がつめはぎ行為を認めれば、出血の有無を自白させる重要性は低くなり、この点が供述通りに作成されているからといって、供述調書の信用性に対する疑念をぬぐい去ることはできない。

     【正当業務行為】

     入院患者A=当時(70)=の右足中指のつめをはく離させたとされる点は、被告が経過観察のため、浮いていたつめを覆っていたばんそうこうをはがした際つめが取れたもので、被告に故意が認められないから傷害罪の構成要件に該当しない。

     また、Aと、入院患者B=当時(89)=の右足親指のつめをはく離させたとされる点は、被告がつめ切り用ニッパーで指先よりも深く切ったもので、傷害罪の構成要件に該当するが、その行為が看護の目的でなされ、看護行為として必要であり、方法が相当であれば正当業務行為として違法性が阻却される。

     医師との連携が十分とはいえなかったこと、結果的に微小な出血が生じていること、患者Bについては応急処置をして事後の観察もせず放置したこと、事後的に患者家族に虚偽の説明をしたことなど、多少なりとも不適切さを指摘されてもやむを得ない側面もある。

     しかし、看護目的でなされ、看護行為として必要性があり、手段、方法も相当といえる範囲を逸脱するものとはいえず、正当業務行為として違法性が阻却される。

     したがって、本件各傷害罪の成立を認定した一審判決には、明らかな事実誤認があるというべきである。

      【共同通信】