西日本新聞

元看護課長 逆転無罪 患者つめ切り「正当な業務」 福岡高裁判決「供述、誘導の疑い」

2010年9月16日 15:48 カテゴリー:九州 > 福岡 社会
無罪が言い渡され、喜ぶ支援者に囲まれる上田里美元看護課長(中央)=16日午前11時18分、福岡高裁前(撮影・佐藤雄太朗)

 高齢の認知症の入院患者2人の足のつめを深く切ってけがをさせたとして傷害罪に問われた北九州市の北九州八幡東病院の元看護課長上田里美被告(44)の控訴審判決が16日、福岡高裁であった。陶山博生裁判長は「看護目的から逸脱しておらず正当な業務。一審判決は事実誤認がある」として、懲役6月、執行猶予3年(求刑懲役10月)とした一審・福岡地裁小倉支部判決を破棄、無罪を言い渡した。

 上田元看護課長は一審から「浮いたつめを切った正当な看護行為で必要なケアだった」と無罪を主張。元看護課長の行為が、患者へのケアか傷害かが主な争点だった。

 判決理由で陶山裁判長は、元看護課長が患者2人の親指のつめを切った行為について「傷害行為にあたる」としながらも、「看護行為として必要性があり、手段や方法も看護目的から逸脱していない。傷害罪には当たらず、違法性はない」と結論づけた。

 また、元看護課長が捜査段階で容疑を認めたとされる供述については「捜査官の意図する内容になるよう押しつけられたか、誘導された疑いがあり信用できない」とした。

 2009年3月の一審判決は、つめを切った後の患者の指に出血があったことや、捜査段階で上田元看護課長が「少々の出血を見ても構わない」と供述したことなどから傷害罪を認定。また、患者の痛みや出血に配慮せず、医師や上司の指示を無視したとして、看護師の正当業務には当たらないと判断していた。

 控訴審では、検察側証人の医師が「患者の家族らに十分説明する必要があった」と批判したが、切り方や処置後のつめの状態については「問題ない」と証言していた。

 上田元看護課長は07年6月、入院中の当時89歳女性患者の右足親指と、70歳女性患者の右足親指、中指の計3枚を医療用のニッパーで切り、出血を伴うけがをさせたなどとして起訴された。

 ●判決骨子
 ◇看護行為として必要性があり、手段や方法も看護目的から逸脱しておらず、正当な業務行為。傷害罪は成立しない。

 ◇捜査段階の供述調書は、捜査官の意図する内容を押しつけられたか、誘導された疑いがあり信用できない。

 ●主張認められず遺憾
 ▼岩橋義明・福岡高検次席検事の談話 検察官の主張が認められず遺憾。判決を慎重に検討し、今後の対応を決定したい。

 ●無罪判決を聞き安堵
 ▼日本看護協会の久常(ひさつね)節子会長の談話 本件が刑事裁判となったことは今もって受け入れがたく、無罪判決を聞き安堵(あんど)しています。フットケアに従事する看護職には、療養生活を支える専門家として、引き続き、高齢者のQOL(生命・生活の質)を高めるケアをお願いいたしたいと思います。

=2010/09/16付 西日本新聞夕刊=

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