2010年9月16日15時2分
コメの価格が大きく下がっている。スーパーの特売では新米5キロ入りが1500円を割ることもあり、「最安値」との声も。コメ余りに加え、長引く不況でデフレ傾向が強まっているためだ。新米の季節を迎え、消費者は歓迎だが、農家の間には危機感が広がっている。
農林水産省によると、コメ価格の下落は2009年産米が出始めた昨秋から目立つ。全国農業協同組合連合会(全農)などの出荷団体が卸売業者に販売する全銘柄の平均価格は、昨年9月の1俵(60キロ)1万5169円から下がり続け、今年7月には1万4214円に。こうした団体・卸間の価格が公表されるようになった1990年以降で最低だった07年産と同水準になっている。
関係者によると、金融不況による消費不振で、コメの民間在庫量は昨年に前年比で約3割増えて5年ぶりの高い水準になった。今年に入ってもデフレ傾向が続いて在庫量はさらに増加、10年産も生産過剰が見込まれ、価格が下落しているという。
千葉県や滋賀県などで10年産の新米価格が決まり始めているが、09年産に比べ4〜11%下がっている。コメ卸最大手の神明(神戸市)の担当者は「価格がこんなに下がったのは過去にないだろう。消費者の低価格志向が強く、在庫を抱えたくない産地も売り急いでいる」と指摘する。
大阪市西成区のスーパー、イズミヤ花園店では、8日の特売で滋賀県産の新米のコシヒカリが5キロ1480円で売り出された。購入した主婦は「めっちゃ安い。新米なので味も期待できそう」。
イズミヤによると、昨年同時期の特売価格より約1割安い。通常は2千円程度で、1500円を下回る特売は月に2回。担当者は「1500円を下回らないと強い目玉商品にはならなくなっている。他店との競争は激しく、これまでで最安の水準だ」という。
ライフコーポレーション(大阪市)は4、5日、関西エリアで福井県産華越前を5キロ1480円、10キロ2780円で特売した。
農水省は今年度から農家への戸別所得補償事業を始めた。生産調整に参加した農家には0.1ヘクタールあたり1万5千円を交付し、コメの価格が過去3年平均を下回った場合は差額を追加支給する。担当課は「価格が下落しても対応できる」と強調する。
しかし、近江米の産地として知られる滋賀県長浜市で約30ヘクタールを耕す大規模農家の脇坂良平さん(59)は「財政難で戸別所得補償がいつまで続くのか、正直不安だ。頼みはやはり米価で、何とか下げ止まってほしい」と訴える。(天野剛志、菅沼栄一郎)
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