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【社会】

高齢者つめ切り 元看護課長に逆転無罪

2010年9月16日 夕刊

逆転の無罪判決を受け、支援者の祝福に感極まる上田里美元看護課長(左)=16日午前、福岡高裁で

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 高齢の認知症患者二人の足のつめを深く切り出血させたとする傷害罪で、一審は懲役六月、執行猶予三年の判決だった北九州八幡東病院(北九州市)の元看護課長上田里美被告(44)の控訴審判決で、福岡高裁は十六日、「つめ切りは看護行為として必要性があり、正当な業務に当たる」として一審判決を破棄し、無罪を言い渡した。

 判決理由で陶山博生裁判長は、上田元課長が捜査段階で「故意につめをはいだ」と供述した調書について「被告の真意を反映せず、捜査官の意図する内容になるよう押し付けられたか、誘導されたものとの疑いが残る」と述べて任意性に疑問を示し、信用性を否定。

 高齢の患者二人のつめを深く切ったことは傷害行為に当たり、出血を生じたことなどについて「多少の不適切さを指摘されてもやむを得ない」としたが「看護行為として、手段、方法とも相当な範囲を逸脱していない」と述べ違法性はないと結論づけた。

 一審福岡地裁小倉支部は昨年三月、上田元課長の行為が刑法上の傷害行為に該当すると認定した上で「つめ切り自体に楽しみを覚え行為に及んだ。ケア目的とは言えず、正当な業務に当たらない」として有罪判決を言い渡した。控訴審では、検察側証人の医師が「患者の家族らに十分説明する必要があった」と批判したが、切り方や処置後のつめの状態については「問題ない」と証言していた。

 判決によると、上田元課長は二〇〇七年六月、当時八十九歳と七十歳だった女性入院患者の足のつめを指先よりも深く切った。

 

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