2010年9月16日1時46分
政府・日本銀行が円高を是正するため、ようやく「伝家の宝刀」を抜いた。とはいえ、通貨安を容認する米欧との協調介入はならず、日本単独で巨大な為替市場と向き合わなければならない。介入の効果を高め、円高を抑え込むことができるのか。さらなる追加緩和を含めた日本銀行の対応がカギを握る。
政府が円売りドル買いの為替介入をする場合、ドルを買うための円資金は、政府が「政府短期証券」という3カ月満期を中心とした短期国債を発行し、調達している。
為替介入に使える政府短期証券の発行限度額は2010年度予算で145兆円に設定されている。10年3月末時点では105兆円が発行済みになっているが、これは、過去の介入時に発行した短期証券を借り換えるために発行し直しているからだ。
このため、10年度は残っている40兆円規模で、新たに円売りドル買い介入をすることができる。これは03年1月〜04年3月に介入した過去最大の35兆円よりも多い。今回、政府は「勝ちに行くために介入している」(政府関係者)としており、円高を抑えるための介入が長期化する可能性もある。その場合、介入の規模は大きく膨らみそうだ。
ただ、国際決済銀行の調べでは、1日当たりの円とドルの取引の規模は、04年の1.7倍の5680億ドル(約50兆円)。04年時点と同規模の介入でも、当時に比べて効果は少ない可能性がある。今後、どれだけの円安誘導を続けられるかは未知数だ。
将来的な課題もある。介入して買った外貨は「外国為替資金特別会計」で管理されており、過去の介入で購入した約100兆円の外貨資産が積み上がっている。ほとんどが米国債など。これまで円高が進んできたことで購入時よりも大幅に評価額が減少し、評価損は最近の1ドル=80円台前半では30兆円余りに達した。
一方、評価損に備えるために外為特会に用意された積立金は20兆円。評価損は、すべての外貨建て資産を売却して穴埋めしない限り、実際の損失にはならないが、仮にすべて解消しようと思えば10兆円ほど足りない計算だ。