【インタビュー】非食用「ジャトロファ」バイオ燃料でCO2削減

2009.11.25 07:00

 日本中油社長 柴野多伊三さん(58)

 ――昨年9月にバイオ燃料供給会社を設立して1年が経過した。事業の進捗(しんちょく)状況は

 「地球温暖化を抑えるため、二酸化炭素(CO2)を排出しないエネルギー源として非食用植物『ジャトロファ』に着目、私が顧問を務める中国の上海中油企業集団と組んで、原材料の調達・生産地(プランテーション)開発などに取り組んでいる。広西省柳州市では上海中油が開発した品種改良苗を育成し、100万ヘクタールのジャトロファ栽培用地の開墾・栽培を展開中だ。上海中油のバイオ燃料精製施設の能力増強にも着手。また、同市の柳州明恵生物燃料と契約、日本最大規模となる30万ヘクタールのジャトロファ・プランテーションの農園経営権を取得した」

 ――中国以外での展開は

 「上海中油とはアフリカのリベリア、ガーナ、コートジボワールでジャトロファ栽培用地1200万ヘクタールの取得に乗り出した。インドネシアでは150万ヘクタールの開墾事業と流通・物流拠点を構築するためのプロジェクトに参画している。このほかにもマレーシアでバイオ燃料の精製・備蓄施設を所有、カンボジアで100万ヘクタールのジャトロファ・プランテーションがスタートした」

 ――ジャトロファとは

 「植えてから3年で結実し、1ヘクタール当たり年間4.5トンの油が取れる。毒性があるため虫も食べず、雑草・害虫に対するケアが少なくてすむ。山間僻地(へきち)の荒れ地でも栽培可能で、森林伐採の必要がない。石油価格高騰時に代替燃料としてバイオ燃料が注目され、トウモロコシなど食用穀物を油に転換したが、人口増加による食糧不足時代に食用のエネルギー転換はおかしな話だ。それに対しジャトロファは非食用。中国では低所得農家の新たな収入源と雇用確保につながるとして期待されている。植物なので成長過程で光合成により大気中のCO2を吸収する。吸収量は排出量の3倍という。つまり、CO2が減ることになる。地球温暖化が進んでいることは明らかであり、その対策としてカーボンニュートラルなバイオ燃料への期待は大きい」

 ――エネルギーを輸入に頼る日本の救世主になれる

 「石油など化石燃料はいずれ枯渇する。そこで太陽光や風力など再生可能エネルギーに期待するが、天候に左右され、現状ではコストも高い。これに対し、非食用バイオ燃料はCO2を吸収し、枯渇もしない。常時安定的に、夜も発電所のタービンを回せるエネルギーがジャトロファだ。将来は3000万ヘクタールの栽培を目指す。油の収率から勘案してクウェートの石油産出量に匹敵し、日本のエネルギーの50%を賄える。枯渇しない油田を確保したといえる。待っていられない。まずは土地を確保する」(松岡健夫)

【プロフィル】柴野多伊三

 しばの・たいぞう 中大法卒、米カリフォルニア・コースト大学院経営学科修了。2008年日本中油設立に伴い社長。元衆議院議員。新潟県出身。

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