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きょうの社説 2010年9月16日
◎政府が円売り介入 投機筋の動き止める効果
遅きに失した感もあるとはいえ、「伝家の宝刀」の切れ味は抜群だった。政府の円売り
・ドル買いの為替介入で、15年ぶりの円高水準となる82円80銭台を付けていた円相場は急落し、一時85円台まで戻した。日本が本気で円高阻止に動いたことで、円買い・ドル売りを仕掛けていた投機筋は、肝を冷やしただろう。政府は03年1月から04年3月にかけて、計35兆円の大規模な円売り介入を実施し ている。投入可能な巨額の資金を持つだけに、日本が満を持して実力行使に出た意味は大きい。市場の一部には、米欧通貨当局との協調介入でないと、効果はないとくさす声もあったが、欧米諸国は自国通貨安を事実上容認し、輸出を伸ばして景気を回復させる政策を取っている。そうした国が自国を犠牲にして日本に協力するはずがなく、必然的に単独介入にならざるを得ない。 昨年はカナダやニュージーランド、今年はスイスや韓国などが、単独で為替介入を行っ ている。主権国家が国益を考慮し、独自の判断で為替介入を行うことに何ら問題はなく、本当に伝家の宝刀を抜いて見せてこそ「口先介入」の効き目も出てくる。 急激な円高は日本経済にとって、マイナス要因でしかない。輸出企業の業績悪化で景気 が下向き、株安、消費や雇用の低迷など経済のあらゆる指標が悪化する。唯一、輸入品の価格は安くなるものの、深刻なデフレ下では国内物価の下押し圧力となり、景気の悪化を招く。現在のような円高が続けば、企業の生産や設備投資の海外流出に拍車が掛かるだろう。 為替介入と同時に、円高に歯止めがかかる期待感から日経平均株価は暴騰し、1カ月ぶ りに9500円の大台を回復した。せめてもう1カ月早く介入を実施していたらと思わずにはいられない。 介入に伴って、市場に放出される円資金を日銀が吸収せずに放置する「非不胎化(ひふ たいか)」は介入効果を高める。ぜひとも実現してほしい。 非不胎化 政府が円売り介入をした際、市場に放出した円資金を日銀が吸収せずに放置 (非不胎化)することで、通貨供給量を増やす施策。量的な金融緩和の効果がある。
◎高卒就職解禁 昨年以上に迅速な支援を
きょう16日に採用選考が解禁となる来春の高卒予定者の就職戦線は、北陸の求人動向
をみても「氷河期」再来と言われた昨年度に続く厳しい状況になっている。前回の高卒就職率は、富山県が全国1位の98・1%、石川県が4位の97・7%と最終的には全国平均(91・6%)を大きく上回ったが、なかには就職を断念して進学した生徒もおり、就職希望者の職業選択の幅を広げるためにも昨年度以上に早い段階での求人確保が求められている。政府は先週に閣議決定した追加経済対策で、中小企業と新卒者を仲介するジョブサポー ターの倍増や、都道府県単位での新卒者専門ハローワークの設置、未内定者らを対象にした短期インターンシップ実施などの緊急策を示した。 本格的な雇用拡大は景気回復を待たねばならないが、景気の先行きが不透明な状況で企 業が採用に慎重になっている以上、ここは行政があらゆる手立てを尽くして求人開拓を急ぐ必要がある。民主党代表選で雇用、雇用と繰り返してきた菅直人首相にとっては、短期的な雇用対策の即効性が問われる局面である。 石川、富山県で言えば、昨年度は粘り強い働きかけで企業の採用の扉を広げたことは評 価できるとしても、就職活動がいたずらに長引けば、不本意な選択を強いられ、結果的に離職のリスクを高めやすい側面も考慮に入れておく必要がある。今年度は企業ガイダンスなどを前倒しで開催しているものの、厳しい求人動向を打開するまでには至っていない。前回の取り組みが功を奏したからといって楽観は禁物である。 9月補正予算案では、石川県が高卒就職支援員を24人から31人に増員し、富山県で も未内定者らを雇用する企業に対し、1年以内に正社員採用することを条件に1年分の人件費を支給する事業を継続実施する措置を講じた。主要企業は採用計画を固めているとはいえ、関係機関の一体的な取り組みによって求人開拓は十分可能である。国の施策との相乗効果を引き出し、地域の実情に沿って支援策を素早く実行に移してほしい。
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