日本振興銀行が破綻し、初めてのペイオフが行なわれた。マスコミは例によって木村剛氏に集中豪雨のような非難を浴びせているが、彼の逮捕容疑は検査忌避という手続き問題だけで、本来の容疑である出資法違反では立件されていない。細野祐二氏も指摘するように、「本件」で逮捕できなかったのは検察の敗北ともいうべき事態であり、公判はかなり難航するだろう。
ただし振興銀の経営実態が悪いことは以前から噂されており、ダミー会社を使った「不良債権飛ばし」が行なわれていた疑いは強い。こっちのほうが本筋だろうが、スケールは90年代にメガバンクのやったことに比べれば2桁ぐらい小さい。木村氏を逮捕するなら、ここ数代の全銀協の会長はみんな逮捕しないと「法の下の平等」が泣く。
粉飾決算やインサイダー取引などの経済犯罪を厳罰化するのはここ20年ぐらいの傾向で、特にアメリカでは粉飾が殺人より重罪になることもある。日本でもライブドア事件以降、そういう傾向が強くなったが、こういうエージェンシーコストの犯罪化は、モラルハザードを防止する効果はほとんどない。行政処分や損害賠償だけでも経営者にとっては大きな脅威であり、それに加えて刑事罰を加える理由は「大もうけした悪い奴を懲らしめたい」という応報感情を満たすことぐらいしかない。
犯罪捜査を警察が行なうのは、被害者が不特定多数の加害者を捜査するコストが高いからだ。加害者と被害者がはっきりしている経済事件は民事訴訟で解決することが合理的で、刑事訴訟で二重に罰するのはおかしい。銀行の場合は外部性があるので金融庁が規制することは合理的だが、今回の事件では金融庁は早期是正措置をとらなかった。いきなり逮捕というのはいかがなものか。
特にSOX法以降、企業会計の問題を犯罪化する傾向が強く、反生産的な監査コストを増大させて「コンプライアンス不況」をもたらしている。検察に捜査機能をもたせている一つの理由は、政治的圧力を受けやすい警察が捜査しにくい贈収賄事件などを捜査するためだが、経済犯罪は捜査二課で十分だ。検察がやると、郵便不正事件のように政治家やキャリア官僚などの「大物」をねらって無理な見込み捜査をする傾向が強い。
違法行為が電子メールを削除したことだけだとすれば、金融庁の行政処分で十分だ。「違法行為は厳罰に処すべきだ」という建て前論には反論しにくいが、経済事件で社会から葬られるリスクがこれ以上大きくなると、ただでさえ弱い起業家精神がますます弱まり、日本経済はさらに低迷する。金融庁などの監視体制を強める代わりに、検察は経済事件に介入しないほうがいいと思う。
粉飾決算やインサイダー取引などの経済犯罪を厳罰化するのはここ20年ぐらいの傾向で、特にアメリカでは粉飾が殺人より重罪になることもある。日本でもライブドア事件以降、そういう傾向が強くなったが、こういうエージェンシーコストの犯罪化は、モラルハザードを防止する効果はほとんどない。行政処分や損害賠償だけでも経営者にとっては大きな脅威であり、それに加えて刑事罰を加える理由は「大もうけした悪い奴を懲らしめたい」という応報感情を満たすことぐらいしかない。
犯罪捜査を警察が行なうのは、被害者が不特定多数の加害者を捜査するコストが高いからだ。加害者と被害者がはっきりしている経済事件は民事訴訟で解決することが合理的で、刑事訴訟で二重に罰するのはおかしい。銀行の場合は外部性があるので金融庁が規制することは合理的だが、今回の事件では金融庁は早期是正措置をとらなかった。いきなり逮捕というのはいかがなものか。
特にSOX法以降、企業会計の問題を犯罪化する傾向が強く、反生産的な監査コストを増大させて「コンプライアンス不況」をもたらしている。検察に捜査機能をもたせている一つの理由は、政治的圧力を受けやすい警察が捜査しにくい贈収賄事件などを捜査するためだが、経済犯罪は捜査二課で十分だ。検察がやると、郵便不正事件のように政治家やキャリア官僚などの「大物」をねらって無理な見込み捜査をする傾向が強い。
違法行為が電子メールを削除したことだけだとすれば、金融庁の行政処分で十分だ。「違法行為は厳罰に処すべきだ」という建て前論には反論しにくいが、経済事件で社会から葬られるリスクがこれ以上大きくなると、ただでさえ弱い起業家精神がますます弱まり、日本経済はさらに低迷する。金融庁などの監視体制を強める代わりに、検察は経済事件に介入しないほうがいいと思う。
コメント一覧
私には、検察に警察以上の捜査能力があるとは思えないですね。警察の捜査が政治的圧力を受けやすく検察の捜査が受けにくいということもないと思います。本当にその危惧があるのなら、立法措置で対処すればよいのです。木村さんの件は、検察が点数稼ぎをしているだけでしょう。
本質的な問題は、これは日本だけの問題ではないと思うのですが、国家権力と国家能力がアンバランスになっていることです。検察庁がまさにそうですが、金融庁も国税庁も、他の様々な役所が、権力に見合うだけの能力を持ち合わせていない。行政の地方委託と民間委託を増やすことが打開策になると思うのですが、今のご時世で「小さな政府」を言ってもしょうがないですし、既得権をなくすことにもなるでしょうから、なかなかむずかしいですね。
私は、地方が地域通貨を発行して老人医療や老人介護、幼児教育や義務教育等々なるべく地域通貨で行うようにしたほうがよいと思うのですよ。しかし、それをやろうとすれば、財務省は邪魔をするでしょう。国庫負担を軽くするためだと言っても、納得しないと思います。
細野氏の主張を見ていると、こんな事件を完全に理解して判決を下せる裁判官がいるのかどうか、甚だ疑問になります。裁判官は激務ですから、複雑な経済事件については、何か補助的な制度が必要かもしれません。
ただ、刑事罰というのは応報感情の満足こそが本旨です。死刑には犯罪抑止力がほとんどないと言われていますが、それなら懲役刑にはもっとありません。それでも刑罰を課すのは、いわば儀式的・呪術的な理由からでしょう。たとえ刑罰に客観的な理由がなくても、それを課さないことで主観的に民衆が抱く不満が社会秩序を維持するうえで驚異となりうるならば、刑罰の存在意義はあります。人間が完全に合理的存在になる必要はありません。
しかし、普段「冤罪を防げ」と騒いでいる弁護士の人たちが、こういう事件になると完全に口をつぐんでしまうのは恐ろしいことです。「金持ちは弱者ではないから、守らなくてよい」ということなのでしょう。誰が弱者なのかを決定する過程にこそ、理論的思考が必要だと思います。
>犯罪捜査を警察が行なうのは、被害者が不特定多数の加害者を捜査するコストが高いからだ。
大変余計なお世話かと思いますがこの部分は経済事犯に関するものである旨を明記しておかないとあらぬ誤解を招くような気が…特に法学方面から
ホリエモンの抹殺以来、検察は「寵児」と呼ばれるような人間をターゲットにし、みずからの存在価値をこうした、強盗や殺人ではない刑事犯の犯罪を検挙することで示そうとしている気がします。
要するに警察との「棲み分け」ですね。
先日の村木局長の無罪判決が示すように特捜の権威ももはや地に落ちたといわんばかりです。
彼らとしては、近年の政界の浄化作用によって、かつてのような職人魂をくすぐられる大疑獄事件などもはや夢物語になってしまい、刀を抜く場がなくなった思いなのでしょう。
せめて経済界に第二の「巨悪」を求めることで、ささやかな自己保身をしているつもりなのでしょう。
「検察と経済事件」とは別の話ですけど、村木局長の件についていうと、極度に官僚化が進んだ組織では、一度部内でオーソライズされてしまった「筋書き」は、それ自体が自己目的化し、変更するにはものすごいエネルギーがいります。ナマモノである現実が「筋書き」と違ってくるという当然のことが生じてきた場合は「現実」の側を「筋書き」にうまく合わせて折り合いをつけられる人間が「仕事ができるヤツ」となる。「当初想定してたものと『現実』が違ってるんだから『筋書き』は一度リセットすべきだ!」などと「正論」を主張すると「空気が読めないヤツ」というレッテルを貼られてしまう・・・。池田さんがかつて属していた「巨大官製ストーリー製造機関」も同じような感じだったのではないでしょうか?
検察の捜査にも勿論問題はありますが(ただ村木氏は無罪になりました。司法制度がワークしているのでしょう。検察が上げたものが100%有罪になったら、それは裁判所がおかしいか、検察が安全なものだけ取り上げて巨悪が見逃されていることになります)、貴殿の意見のような「検察の目障りなものや弱者いじめ」という世間一般の報道姿勢の方に問題を感じます。
起業家精神が弱くなるということですが、堀江のような粉飾をして自社株を売って利益を計上するというような起業家はそもそも必要ありません。
彼は投資家から得たお金を全くプラスにしていませんね。資産を毀損しているような起業家です。(株価とは関係ないですよ)
木村にしても、元々の目的だった中小企業金融では完全に失敗をし、なんとか生き残ろうとして悪さをしたのしょう。
私は逆に今回の報道を見ていて、いつのまにか佐藤優や堀江と同様に、「検察にくし」となり、この木村が失敗した中小企業融資というビジネスについてきちんと検証されないことを懸念しています。
(結局この資産クラスでは、リスクとリターンが不当に歪められているために、利益を出すのが難しいということ)
そういえば木村が以前TVで貴殿のような事を言っていました。堀江はカネボウより粉飾額が小さいのに、罪が重いのはおかしい。一人殺したなら同じ法の下の平等で取り扱われるべきだと。
しかし、経済事件であれ殺人事件であれ、その悪質性や社会性が罰の判断基準になります。幼女を誘拐して殺したら死刑でも、介護に疲れて頼まれてやったなら執行猶予がついたりするわけです。
90年代の時代背景を無視して、当時の銀行の経営者くらべるのも、戦時下には見逃してくれたのに、今ならなんで罪になるんだと言っているようでナンセンス。
jspidersさん、堀江さんが何の粉飾をしたのでしょうか。私が理解する限り、堀江さんの罪状は「風説の流布」だけでしょう。そんなものに検察が乗り出してどうするのかと思いました。今回の木村さんの罪状は出資法違反です。なんで金融機関同士のやり取りに出資法を適用するのかさっぱりわかりません。そのようなものにまで出資法を適用すれば、銀行は手形割りなどできなくなってしまうでしょう。私は、村上先生の事件があってから、検察の捜査能力を疑うようになったのですが、堀江さんと木村さんの件について言えば、能力の問題というより越権行為です。こんなふうに検察がしゃしゃり出て来るのであれば、証券取引委員会や警察が何のためにあるのかさっぱり分からなくなってしまう。
あなたにひとつ質問します。出資法が、どのような法律なのか、あなたはご存知ですか。もしもあなたが法曹関係者であるとすれば、社会を害するだけだと思うので、リタイアしてください。
>jspiders
>起業家精神が弱くなるということですが、堀江のような粉飾をして自社株を売って利益を計上するというような起業家はそもそも必要ありません。
>経済事件であれ殺人事件であれ、その悪質性や社会性が罰の判断基準になります。
上の二つにはおおいに齟齬がある。なぜなら新興市場が壊滅になることは事前に予測できたはずだからだ・・・結局、価値中立的な「社会性」なんぞは法曹の恣意的な創作なのである。財界の虚構・欺瞞なんぞは総合商社のような代表的企業を叩けばボロボロでるだろう、そっちも叩けばよかろう。
>90年代の時代背景を無視して、当時の銀行の経営者くらべるのも、戦時下には見逃してくれたのに、今ならなんで罪になるんだと言っているようでナンセンス。
上の記事に、「本筋」って書いてますよ。で、なんで戦時下と比べるのか。あと、「社会性」とやらは、あなたのようなバカにとっては霞ヶ関・全銀協には範囲適用外なのかね 笑
>6
株式の売却益を資本に計上するか売り上げに計上するかは見解の相違に過ぎません。ライブドアの件は会計学者でも意見の割れるような取引で、それを無理やり粉飾と検察が勝手に決め付けたにすぎません。裁判官は検察の意に反する判決をすると左遷されるので、検察の思い通りの判決になりました。まさしく権力乱用で、マスコミに洗脳された人々は嫉妬心も手伝って、堀江さんを悪と勝手に思い込んでしまいました。
その裏では明らかな粉飾をやっていたIHIや日興コーディアルに逮捕者なし。これらを単純見る限り、目立った堀江は気に食わない。だから逮捕してやれ程度の話でしょう。そんなこんなで検察の嫉妬心で経済を見事に滅茶苦茶にされました。あれ以来、起業家が激減したことを田原さんも言っていましたが、日本経済をボロボロにした主犯はある意味検察でしょう。歪んだ正義感で動いてしまう検察組織は危険極まりないので、徹底的に破壊した方がいいと思います。
仮にライブドアの決算に問題があるとしたら、検察が出てくる話ではなく、せいぜい税務署レベルの話でしょう。明らかに無理筋による強引な逮捕です。当時のいろんな会計士達だって、どっちが正しいかは人それぞれみたいなことを言っていたのですから、まことにひどい権力乱用です。そんな検察を擁護する人は理解できません。マスコミに情報をリークするなど、明らかに違法行為をやっている犯罪集団です。検察こそ逮捕されるべき人物がいっぱいいるはずです。リークはないなんてありえません。それは堀江さんのブログを読めばよくわかります。
むしろ見解の相違レベルの人間を逮捕して、株式市場を滅茶苦茶にし、なおかつ起業家を消し去った検察の罪こそ万死に値する所業でしょう。あれで財産を失って自殺した人もいっぱいいると思います。間接的に検察は殺人をやったようなものです。
≫経済事件であれ殺人事件であれ、その悪質性や社会性が罰の判断基準になります
聞きかじりで決め付けるのは止めた方が良いよ。恥かくだけ。
ホリエモンと田原総一郎氏との対談でも面白い内幕が出ている。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/1027
検察が決め付けて(あんたと同じ)乗り込んだけど、思い違いで部下がフェラーリを買うために4億現金で抜いていた。しかし、検察は恥はかきたくないと言うことで、でっち上げたまでのこと。村木氏の場合は検察の出鱈目を証人がこぞって暴いたけれど、すねに傷持つライブドアの役員はウソを塗り固めただけのようだ。
6千億の株券が紙くず同然になった原因と言うのが、この検察の思い込みと恥をかきたくないための偽りの筋書き。こう言う財産権に対する不当な侵害に対して憤るのがまともな人だよ。あんたの話は、悪徳奉行に媚びて尻尾振っている、三下の岡引てぇとこか。恥ずかしいね、ほんと。
jij999さん、保険の支払いが困るでしょうから、大きくなって破綻する前に小さいうちに破綻してほしいという「銀行業界」の要望はあったでしょう。金融庁はそういった要望にしたがって動いたと思います。
問題は、検察が出て来て、しかも出資法を使ったということです。検察の出しゃばりはしょうがないとして、出資法について言えば、金融庁が検察に知恵をつけたと思います。
CDOとか、あったじゃないですか。私の知人は、「あれは手形と同じ」と言ってました。金融庁は、出資法で「金融手形」の店頭取引を阻止したかったのかもしれません。なんだか、マンガみたいな話ですねw