さまざまなシーンでのアクセス公開日: 2003年5月29日 Exchange Server 2003 では、モバイル アクセスが大幅に強化され、会社のオフィスという空間にとらわれることなく、さまざまな場所から情報にアクセスできます。今回のコラムでは、ユーザーのさまざまなシーンを想定し、Exchange Server へのモバイル アクセスとその特長について紹介します。 トピック
自宅のパソコンからのアクセス−Outlook 2003 (RPC over HTTP)従来、社外から Outlook を使って Exchange Server にアクセスするためには、電話回線を使用したリモート アクセス (RAS) や、専用機器を用いた VPN 接続が必要でした。 これは、Exchange Server のメッセージング API (MAPI) が RPC (リモート プロシージャ コール) であり、インターネットを介して、ファイア ウォールを越えて通信することが難しいプロトコルだからです。 RPC over HTTP とはRPC over HTTP では、RPC をインターネット標準プロトコルの HTTP (ポート番号 80) や HTTPS (ポート番号 443) によってカプセル化し、トンネリングします。 これにより、ファイア ウォールに特別な穴 (ポート) を開けることなく、Outlook 2003 と Exchange 2003 のインターネット経由でのデータのやり取りが可能になります。Exchange Server の RPC over HTTP の通信に HTTPS を用いた場合、 クライアントとサーバー間の通信は全て暗号化され、盗聴される心配もありません。RPC over HTTP は、Windows Server 2003 RPC Proxy Service と Exchange Server 2003、そして、Outlook 2003 の機能を使用します。 図:RCP over HTTP の概念。特別なハードウェアは不要です。 図:Outlook 2003 で RPC over HTTP を利用するための設定は簡単です。電子メール アカウントの詳細設定で、[HTTP を使用して Exchange のメール ボックスに接続する] をチェックし、Exchange プロキシの設定を行います。 自宅のパソコンからのアクセス自宅のパソコンの Outlook から Exchange Server にアクセスする場合に、今までは RAS や VPN を使用してアクセスしていました。しかし、Outlook 2003 の RPC over HTTP の機能を使えば、オフィスと同じように作業ができます。 次のような活用も考えられますRPC over HTTP の機能は、企業に大幅なコスト削減や新たなコミュニケーションをもたらします。 本社と支社間のメッセージング & コラボレーション環境の構築RPC over HTTP の機能により Exchange Server 2003 による本社と支社間、あるいはグループ企業間のメッセージング & コラボレーション環境を最小限のインフラで構築できます。本部に Exchange Server 2003 を配置し、各拠点からはインターネットを経由して、Outlook 2003 でアクセスします。RPC over HTTP を使うと、高価な VPN 機器や IP-VPN、広域 Ethernet などの WAN サービスの導入も必要ありません。企業は今まで使ってきたインフラ コストを大幅に削減できます。 図:本社と支社の間の情報インフラ 顧客向けにコラボレーション環境を展開する顧客へのサポートを強化し、顧客満足度を高めたいと考える企業は、Outlook 2003 と Exchange Server 2003 を用いた顧客向けのコラボレーション環境を簡単に、最小限のコストで構築できます。 顧客は、自分の PC にインストールされている Outlook 2003 からインターネット経由で、企業の Exchange Server にアクセスします。企業は、今までの Email を用いた文章だけのコミュニケーションから開封通知やパブリック フォルダなどの Exchange Server の機能で、顧客との密接なコミュニケーションができます。RPC over HTTP の機能により、顧客側も企業側にも難しい設定や特別な機器を導入する必要がありません。 外出先からのアクセス−Outlook Web Access外出時に立ち寄ったインターネット カフェなどの共用のパソコンから利用する場合は、Outlook Web Access (OWA) を利用します。OWA は Web ブラウザを使って Exchange Server 2003 にアクセスする方法です。OWA は従来のバージョンでも提供されていましたが、Exchange Server 2003 の OWA はユーザー インターフェイスとセキュリティが大幅に向上しています。OWA には、Microsoft Internet Explorer 5 以降向けの高機能版と、Web ブラウザの種類を問わない基本版が用意されています。 Outlook 2003 のような使いやすいインターフェイスOWA は、Outlook 2003 とほぼ同じユーザー インターフェイスを実現し、Web ブラウザによるアクセスにも関わらず、高い操作性を実現しています。さらに、OWA は Outlook 2003 のほとんどの機能が利用できます。新着メールや会議開催の通知も表示、アラーム機能も利用できます。 図:Outlook 2003 図:OWA 図:S/MIME のサポートと、プライバシーと迷惑電子メールの保護 Exchange Server 2003 の OWA は、アイテムの更新によって発生するビューの書き換えを最適化し、ブラウザの再読込を最小限にしているため低速回線でも快適に利用できます。 セキュリティの強化Exchange Server 2003 の OWA は、さまざまなセキュリティ上の強化が図られています。 S/MIME のサポートOWA は、電子メールの標準暗号化方式である S/MIME をサポートしています。S/MIME により、ブラウザ ベースのメッセージング クライアントでも安全な電子メールの送受信が可能になりました。また、デジタル署名された電子メールも送受信できます。 プライバシーと迷惑電子メールの保護受信した HTML 形式の電子メール メッセージに含まれる外部サイトを参照しているリンクやスクリプトの実行を自動的にブロックします。こうした保護機能を使うことで、悪意のあるスクリプトの実行や電子メール アドレスなどの個人情報の流出を目的とする Web ビーコンをブロックできます。 図:S/MIME のサポートと、プライバシーと迷惑電子メールの保護 ログアウト時のクレデンシャル キャッシュのクリアログアウト時に、ユーザー名やパスワードを保管したクッキーのクレデンシャル キャッシュ (資格情報) をクリアします。共用のパソコンを使用した後、第三者がそのパソコンを使って、不正に OWA の参照やユーザー情報を取得することを防げます。 携帯電話によるアクセス−Outlook Mobile Access移動中のシーンでは、携帯電話でのアクセスが可能です。携帯電話からのアクセスには、Outlook Mobile Access (OMA) を利用します。従来は携帯電話からアクセスする場合に、Exchange Server 以外のサードパーティが提供するソフトウェアの導入が必要でした。しかし、Exchange Server 2003 では標準で NTTドコモ、J-Phone、KDDI の携帯電話をサポートします。携帯電話の電波が届く範囲であれば、どこにいてもメールや予定表を参照できます。 OMA では、携帯電話で快適に利用できるよう設計されたインターフェイスを使用します。受信トレイ、予定表、仕事などの頻繁に使用する機能は OMA のトップ メニューに表示されるため、最小限の操作で必要な情報を参照できます。またメールの送信や予定、連絡先の新規作成も携帯電話からおこなえます。 図:i-MODE でアクセスした図 外出先からの利用を想定して、OMA ではユーザー検索がトップ メニューに表示されます。ユーザー検索では、個人のアドレス帳やサーバーに登録された各ユーザーの情報を検索できるので、例えば、同僚の電話番号や住所などが携帯電話から簡単に調べられます。携帯電話の電話帳に登録がなくても OMA のユーザー検索で電話番号などを知ることができるのです。 Pocket PC によるアクセス−Exchange Active SyncPocket PC の場合は、さらに Exchange Active Sync (EAS) と呼ばれる機能を使えます。EAS は従来 Mobile Information Server (MIS) で提供されていましたが、Exchange Server 2003 では標準でサポートされました。EAS を使うと、Exchange Server 2003 と Pocket PC をインターネットからダイレクトに接続し同期できます。今までのように、クレードルを使って Outlook と同期するのではなく、インターネットなどのネットワーク越しに Exchange Server 2003 と直接同期します。Pocket PC に PHS や携帯電話を接続すれば、インターネット経由でアクセスすることで外出先等、いつでも同期が可能です。一度同期してしまえば、オフライン状態で情報を閲覧できるので、通信費を気にする必要はありません。 図:Pocket PC の Active Sync の画面。EAS で Exchange Server と直接同期しています。 まとめ−シーンを整理してみます最後に、もう一度ユーザーの利用シーンとそれぞれに最適なアクセス手段にについてまとめてみます。Exchange Server 2003 は、さまざまなシーンからさまざまなデバイスを使って安全にかつ快適に利用可能です。また、今までの環境に必要だった RAS や VPN などの特別な機器を用意することなく、Exchange Server 2003 と Windows Server 2003 だけでこのような便利なアクセス手段が実現するのです。
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