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野田聖子議員に聞く:産める社会を「子育て保険」で支援

2006年12月1日

(聞き手:長田 美穂=フリーライター)

(前回記事はこちら

■向井さんのケースでは、代理出産を受諾した女性が経済的困難を抱えていたということが背後にあったと報道されました。不妊治療も出産も経済力次第、という状態になりませんか。

野田 聖子議員

野田 それを言い出すと、みなが一律でなければいけない、という議論になります。日本は、それなりにがんばって収入を得ている人が、高度な医療を求めてはいけない国なんでしょうか。例えば健康診断。健康保険で賄う自治体の健康診断を受ける人もあれば、何十万円も払って人間ドッグを受ける高所得者の人がいます。この高所得者は、非難されたりしていませんよね。

代理出産について、「一部の人の特権じゃないか」という批判的な意見が今は突出しています。しかし、あえて今、挑む人が出ることによって、突破口が開け、将来に普及することもあるでしょう。

■代理出産には様々なリスクが考えられます。妊娠した女性が、産んだ子供を依頼者に渡すのを拒んだらどうするか。妊娠中に代理母が死亡したらどうするのか。障害児が生まれたときに、受け取りを拒否する依頼者が出るかもしれない。

野田 当事者間の契約で、きっちり細則をつくっておくべきでしょう。基本的には、親の責任として、代理出産を依頼することで生じる責務は引き受ける必要があるでしょう。

ただし、いま大切なのは「代理母を認めるか認めないか」、つまり遺伝上の母を法的にも『母』として認めるかどうか、といった大なたの議論です。

厚生労働省が3年前、審議会(厚生科学審議会生殖補助医療部会)の答申に基づいて、生殖補助医療に関する法案をつくろうと企てたんです。私はこれに、体を張って反対しました。

■なぜ反対だったのですか。

野田 近親間の卵子提供はダメ。代理出産はダメ。「原則反対」の法案で、これでは誰のための法律になるのか分からなかったからです。反対の理屈が通っていないと私は感じました。

「近親間の卵子提供は家族関係が複雑になるからよくない」とよく言われます。しかし、現実に普及している非配偶者の精子提供はどうなんでしょうか。むしろそちらの方が怖いと思います。精子提供は匿名に限る、出自を明らかにしてはならない、となっている。とすると、偶然出会った人が実は兄弟である可能性だって生じるわけです。

こんな危険をはらむ非配偶者の精子提供は許されて、出自の明らかな近親間の卵子提供はダメ、というのは理屈が通っていません。

また代理出産を依頼した遺伝上の母は、子供を「実子」とできないのに、匿名で提供された精子を使った場合は「実子」と認めることには、疑問を持ちます。

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