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[21760] けいおん! 禁じられた愛!誓いのブレスレット
Name: アルファルファ◆6c55af9b ID:2de55f33
Date: 2010/09/07 17:46

「ねえ、りっちゃん。ここ、すごく楽しい!いろんな物が格安で売ってる!」

「そうか、そりゃよかったな、ムギ。」

「どこから回っていいか迷っちゃう~。」

とある日曜日、律とムギは地元商店街のフリーマーケット会場に足を運んでいた。総勢50軒程度が所狭しと商品を広げている。

「ムギはお金持ちなんだから、別に古いものを安く買わなくてもいいじゃないか。」

「いいのよ、こういうほうが楽しいから。ほら、りっちゃん。あっちのお店に行きましょう。」

ムギに手を引っ張られ、律もついていく。服、靴、カバン、雑貨など、あらゆる物の売り買いの声が飛び交っている。

「(ムギもこういう所が子どもっぽいな。)」

駄菓子屋やゲームセンターで楽しそうにするムギを知っているので、なおさらその思いを強めるような本人のはしゃぎぶりだった。



「見て見て~。こんなにいっぱい買っちゃった~。」

「むしろ買いすぎだ。どんだけ大荷物になってんだよ。」

フリーマーケット会場を出て近くの公園のベンチでジュースを飲みながらくつろぐ二人。その脇には大量の買い物袋の山。

「服とかカバンとかいっぱい買ってるけど、こんなに使うのか?っていうか、ガラクタもいっぱいあるし。」

「ガラクタ?どれのことかな?」

「ほら、これとか。」

律はムギの買い物袋からカエルの人形を取り出した。

「お前は唯か。」

「む~。この猫の置物は可愛いわよ。」

「ただの古びた招き猫じゃないか。梓でも拝んでたほうがよっぽど可愛いぞ。」

「なら、この魔女っ子のバッグは?」

「昔の漫画の応募者全員プレゼントで大量に出回ったやつだ。別に珍しくもなんともない。」

「りっちゃんって結構現実的ね。お金の管理に厳しい。部費も全然使わないし。」

「一般庶民はドケチなものなんですのよ。ムギには分からんだろうがな。」

律はそう言って溜息をついた。お金を湯水のように使えるお嬢様には理解出来ない世界だ、というあきらめだった。

「あっ、そうだ、りっちゃん。今日付き合ってくれたお礼しなくちゃ。」

「別にいいよ。あたしも暇だっただけだし。」

「ううん。今日楽しかったのはりっちゃんのおかげ。だから、これをあげる。ちょっと待ってね。」

ムギは買い物袋の中から小さい箱を取り出した。

「なんだ、これは?」

「古道具を売ってるお店で見つけた安物のブレスレットよ。ほら、二つあるでしょ?これをね、好きな人同士でつけると、一生幸せになれるんですって。片方あげるわ。」

「一生幸せって、それカップルとか夫婦でつけるものだろ?女同士でつけても意味ないって。」

「そんなことないわ。同性同士でも効果があるって書いてあるわ。友情の証よ。」

ムギは説明書を律に示しながら言った。

「それとも、りっちゃんは私のこと嫌い?」

「分かった分かった。ありがたく頂戴します。」

律はブレスレットを押し頂くようにしてポケットにしまった。

「ごめんなさい。この後予定があるから行かなくちゃ。じゃ、また明日学校で。」

「ああ、気をつけてな。」

ムギは買い物袋を持って駆けていった。沢山あるにも関わらず平気な顔をして持っていることに、律は今更ながらに苦笑した。

「(このブレスレット、どうしよう。)」

律はポケットのしまったばかりのブレスレットを取り出して、しげしげと眺めてみる。シンプルな銀色ではあるが、洗練された美しさがある。

「(明日つけていこうか。服装云々はこれくらいなら関係ないだろ。綺麗だし、気に入った。)」

律は今度は大事にポーチの中にしまい、家族が待つ自宅へと歩き出した。





翌朝・・・・

「「(なんだろう、この感覚。胸が熱い・・・!!)」」

昨日のブレスレットを手首に巻き、制服に着替え登校する律とムギが同時に感じた感覚。本日の騒動の芽は着実に育っていた。



続く



[21760] 第二話!
Name: アルファルファ◆6c55af9b ID:2de55f33
Date: 2010/09/13 04:20
「澪ちゃん、大丈夫?元気ないよ?」

「澪?ねえ、本当に大丈夫なの?」

お昼休み。澪と唯と和は三人でお弁当を並べていた。律とムギは離れた場所で二人きりで昼ごはんを食べていた。

「大丈夫じゃない・・・。全然大丈夫じゃない!」

澪は箸を机に突き立て、怒りに体を震わせながら答えた。

「そりゃ、澪ちゃん見てれば分けるけどさ。りっちゃんとムギちゃんがあれだし。」

唯が右に目をやると、そこにはバラ色の風景が広がっていた。



「りっちゃんたら、ご飯粒ついてる。取ってあげるわ。」

「自分で取れるったら。」

「ううん、私が取ってあげる。ほら。」

ムギは律の右頬に舌を這わせて、米粒を絡め取った。律はゾクリと鳥肌が立った。

「やったな~、ムギ。お返しにお前にはこうだ!」

「くすぐった~い!」

律も負けじとムギに頬ずりをし返した。周りの視線など全く気にしていない。



「今日、何回目の見ていられない恥ずかしいシーンかな。」

「六回目じゃないかしら。私が数えていた範囲ではだけど。」

普段ボケ倒しの唯と和が呆れてしまうほど律とムギはイチャイチャしていた。すぐに二人だけの世界に入り、余人を寄せ付けない。

「澪ちゃん、りっちゃんに捨てられちゃったんだ~。かわいそう~。」

「律とムギって恋人みたい~。女同士だけど。」

他のクラスメイトも口々に噂をしている。クラスの大勢の意見としては、律が澪からムギに乗り換えた、というところで話が落ち着いていた。

「ねえ、澪ちゃん。またりっちゃんと喧嘩したの?」

「してない。」

「じゃあ、ムギちゃんと喧嘩したの?」

「してない。」

澪は喋るのも億劫になっており、唯の質問にワンフレーズしか答えていない。

「それだとおかしいわね。普段からあなたたち軽音部は仲いいけど、あんなあからさまに恥ずかしいことするただれた関係じゃないわよね。」

「律が・・・ムギと・・・ただれた関係・・・・。うわああああっ!!」

澪は一人トリップして変な妄想をして泣き出した。

「澪ちゃん、重症だね。」

「まったく・・・。でも、なんでかしら?土曜日と日曜日に何かあったのかしら?唯は何か知ってる?」

「土曜日はいつもみたいにお茶飲んで、ちょっと練習して、またお茶飲んで帰ったよ。いつも通りだよ。」

「それって普通の部活動なのかしら。それはさておき、日曜日は?」

「知らない。家族でご飯食べに行ってたから。あっ、そういえば、食べてる途中でりっちゃんから一緒に遊びに行かないかって電話がきたよ。断ったけど。」

「そういえば、私にも来た。用事があったから断ったけど。」

澪も泣き止んで会話に加わってきた。

「じゃあ、ムギと二人で行ったのね?その時何かあったのかしら?」

「そういえば、りっちゃんとムギちゃんが着けてるあのブレスレット、見るの初めてだね。もしかして昨日一緒に買ったものなのかな?」

「もう我慢できない!ガツンと言ってやる!」

澪は会話を打ち切ってスッと席を立ち、和の制止を振りきってムギの机に歩を進めた。



「おい、律、ムギ。話がある。」

「なんだよ、澪。何か用か?」

律が面倒くさそうに澪の方に向いた。ムギとの二人の世界を邪魔されたので非常にイライラしていた。

「単刀直入に言う。二人でそうやっていちゃつくのをやめろ。」

「もしかして、嫉妬してるのか?」

図星をつかれ少しどきりとしたが、すかさず反論した。

「ち、違う!ただ、他のクラスの子の目もあるし、それに、放課後ティータイムはどうするんだよ!!二人だけで仲良くなったら、うまく行かなくなるじゃないか!!」

「ああ、それならもういいんだ。ムギと二人で組むから。お前らには悪いけど、な。」

「えっ?」

「そういう事なの、澪ちゃん。私たち、もうお互いしか見ることができないの。ごめんね。」

「嘘、だろ・・・?」

澪は目から溢れ出す大粒の涙をこらえることができなかった。

「待って、澪ちゃん!」

澪は見かねて寄ってきた唯の手をはねのけ、教室を飛び出していった。



続く



[21760] 第三話!
Name: アルファルファ◆6c55af9b ID:2de55f33
Date: 2010/09/13 04:24
「どうしたの?秋山さん、泣きながら外に走っていったけど?」

澪と入れ替わりで入ってきたさわ子が驚いた表情で言った。

「それが・・・ゴニョゴニョ・・・・」

和がさわ子に耳打ちして状況を簡単に説明した。

「ふうん、なるほど。じゃあ、秋山さんに進路のことで話を聞こうと思ってたんだけど無理そうね。」

「はい。落ち着いたら澪に職員室に行くように言っておきます。」

「ええ。お願いね。ところであなたたち、いつまでそうやっているつもりかしら?」

さわ子はお姫様抱っこをしているムギとされている律に目を向けた。

「だってさ~、さわちゃん、あたしたち、お互いのこと好きだから。」

「私たち、高校を卒業したらカリフォルニアに移住するつもりなんです。りっちゃん、英語の勉強頑張ろうね。」

「うん!」

さわ子しゃがみ込んで頭を抱えて吐きそうになるのを堪えた。

「あなたたち、本当にどうしちゃったの?今まで私が知らなかっただけで、そういう関係だったの!?」

「いや、その、今朝たまたまムギの顔を見た時に赤い実が弾けたっていうか・・・。」

「私も、登校する時にりっちゃんを見て運命の人だと感じたんです。なぜかは分かりませんけど、気持ちの制御ができなくなって・・・。」

「でも、恋愛に時間とか性別なんて関係ないよな!」

「うん。法律だって、同性婚が可能ならところに行けばいいし、私たちの愛を阻むものはないわね。」

教室内の体感温度が一気に下がった。どうしてしまったんだろう、この二人は?という共通認識だった。

「あのさ、りっちゃん、ムギちゃん。澪ちゃんはどうするの?」

「時間が解決するだろ。澪もいつまでもあたしにべったりだと将来困るからな。」

「梓ちゃんにもよろしく伝えといてね、唯ちゃん。結婚披露宴にはちゃんと呼ぶから。」

「・・・・・・・・。」

唯にもどう反応していいのか分からない言われようだった。

「じゃ、じゃあ、私は行くわね。早く仲直りするのよ。」

さわ子は気まずい雰囲気を察して職員室に逃げていった。





「う~ん、う~ん、なんだったかな~。」

「どうしたの、木下さん?」

律とムギを見ながら首を傾げる木下しずか。それに和が気づいて声をかけた。

「あの二人がつけてるブレスレットなんだけど。」

「ああ、あれね。昨日二人で出かけた時に買ったんじゃないか、って唯たちと話してたところなんだけど。」

「私、オカルト研に友達いるんだけど、なんかそれ関係で見たことある気がするの、あのブレスレット。」

「じゃあ、オカルトの力で律とムギがおかしなったってこと?そんな馬鹿な・・・。」

「分かった!私、あのブレスレットを外してみるよ!」

和の後ろで聞いていた唯がダッシュで律とムギのところに行く。

「りっちゃん!ムギちゃん!えいっ!」

唯は断りなしにブレスレットを二人の手首からもぎ取った。

「うっ・・・・。」

「くっ・・・・。」

二人は少し呻いたあとに意識を取り戻した。あたりをキョロキョロと見回している。

「あれ、ここ学校?もうお昼休み?ずいぶん寝ちゃったみたい。」

「あたしもだ。登校する途中から記憶がないぞ。変な夢見たし。ムギと恋人同士になってる夢だ。」

「私も変な夢見たわ。りっちゃんと恋人同士になってる夢。」

「それ、現実だよ?」

唯の一言に二人は凍りついた。





「澪、悪かったってば。それを言ったのはあたしの意思じゃないし、澪のこと大事に思ってるからさ。」

「本当に本当?」

「ああ、本当に本当。」

校庭の隅で泣いていた澪を教室まで引っ張ってきた頃には五時間目の授業の予鈴が鳴っていた。

「ごめんね、澪ちゃん。本当に私たち、今日何をしていたのか覚えていないの。」

「本当に本当?」

「うん、本当に本当よ。お詫びに、今日持ってきたいちごケーキ、澪ちゃんにあげるから。」

「じゃあ、あたしがお詫びに食べさせてやるぜ。愛を込めて。」

「自分で食べるからいい。」

「拗ねてるのか?自分が捨てられたと思って。」

「拗ねてない!」

「放課後ティータイムだって、これからもずっと続けていきましょう。ねえ、澪ちゃん?」

「今度ああいうこと言ったら、本当に絶交するからな。」

澪はそれで打ち止めにして、授業の準備を始めた。一方、会話に加わっていなかった唯はブレスレットをいろいろな角度から眺めて唸っていた。

「何唸ってるのよ、唯。」

「あ、和ちゃん。これ、本当に呪いの効果とかあるのかなあって。普通のブレスレットにしか見えないんだけど。」

「まあ、私も信用してるわけじゃないわ。」

「実験してみようよ。私がこっちにブレスレットをつけて・・・。」

唯は自分の左手首にブレスレットを巻いた。

「ねえ、姫子ちゃん。このブレスレット、着けてみて。」

「いいわよ。」

隣席の姫子の左手首にブレスレットを巻いてみた。が、何も起きない。

「何も起きないわね、唯。立花さんは?」

「私も何もないわ。」

「やっぱりただの考えすぎかしらね。呪いなんて迷信だし、ただの思いこみか勘違いかも。」

「じゃあ、和ちゃんが着けてみてよ。」

「多分変わらないと思うけど・・・。」

姫子から受け取ったブレスレットを今度は和が左手首に巻いた。

「ねえ、和ちゃ・・・・・・(ドクンッ)」

「どうしたの、ゆ・・・・・(ドクンッ)」

唯と和の心臓に熱い感覚が流れ込んだ。お互いにお互いの顔以外のものが映らない。

「和ちゃん・・・・。」

「唯・・・・。」

二人はひしと抱き合い、愛を確かめあった。



続く



[21760] 第四話!
Name: アルファルファ◆6c55af9b ID:2de55f33
Date: 2010/09/13 19:07
「えっ!?じゃあ、このブレスレット、唯と和が着けちゃったの!?」

「うん。実験だって言って唯が。私が着けてなんもなかったんだけど、後で着けた和が・・・。」

五時間目が終わったところで、姫子が澪たちに事情説明。その横では抱き合っている唯と和がいた。

「つまり、元々お互いに対する愛情が深くないと能力が発動しないってわけか。立花さんと和だと唯への愛情の度合いが違うからな。」

「このブレスレット危険すぎるだろ。何とか処分できないのか、しずか?」

「下手に手を出すとこういうものは危険かもしれない。放課後にオカルト研の友達に聞いてみるから、ちょっと待って。」

律に手出しはせずに見守るように忠告するしずか。

「それにしても、愛情の深さが必要、か。説明書通りだな。」

「ええ、そうね。私とりっちゃんの絆の強さに反応しちゃったのね。」

「だが、あたしはムギに恋愛感情は持ってないぞ?普段ならムギのほっぺにチュウなんてしようと思わないぞ。」

「私だって、りっちゃんのほっぺについたご飯粒を舐めて取るようなことはしないわ。」

二人はお互いの顔を見てそれを言うと、顔を背けてしまった。恥ずかしくて互いの顔を見ていられない。

「なあ、ムギ。今日のことは黒歴史な。無かった事にして忘れよう。」

「そうよね。これからもずっと仲良しのお友達でいましょう。恋愛抜きで。」

「私だけ仲間はずれだ・・・。」

澪は律とムギの会話に入り込む余地がなく、疎外感を感じていた。

「和ちゃ~ん。」

「唯~。」

横でじゃれ合っている二人を見て、余計に澪は疲れを感じた。





放課後・・・・

「和ちゃん、お菓子食べる?クッキー持ってるの。」

「うん、食べる。唯が食べさせて。」

「いいよ。はい、あ~ん。」

「あ~ん。」

唯が袋から取り出したクッキーを満面の笑顔で食べる和。

「ゆ~い~、ぎゅって抱きしめて~。」

「こうかな?」

「唯のこと、大好き~。」

和は唯の頬に勢い良く頬ずりし、普段では考えられないくらい唯に擦り寄って子供のように甘えまくっていた。

「っつーかさ、この唯と一緒にいる女の子ってさ、誰?」

「和じゃないのか?」

「いや、キャラ変わりすぎだろ。澪にはこれがいつものクールで物静かな真鍋和に見えるのか?」

「見えないけど、事実として和だろ?」

「こいつ、理性が飛ぶとこんなに人に甘えちゃうタイプだったんだな。」

律と澪はあまりの和の豹変ぶりに恐れすら感じるくらいに引いていた。そこへ、ムギが教室に戻ってきた。

「どうだ、ムギ?オカルト研の方は?」

「少し待ってって。調べるのに時間がかるみたいよ。一応ブレスレットの写真は渡しておいたから、早く調べがつくとは思うけど。」

「とりあえずさ、この二人のブレスレットは外しておいたほうがいいと思うんだ。私が押さえているから、律が外してくれ。」

澪が和の左手を取って動かないように脇に挟む。

「い~や~!唯と離ればなれになるのは嫌!」

「暴れるな、和。ブレスレット外すだけだから。」

「唯と、唯ちゃんと一緒にいたいだけなの~!」

和が子供のように暴れて澪を困らせた。ムギは唯を押さえにかかるが、こちらもじたばたして暴れる。

「律、今のうちに外せ!」

「む、無理・・・。こんなつぶらな瞳で泣かれると、罪悪感っていうかあたしは何やってるんだっていうか・・・。」

律は和の訴えかける目に後退りしてしまった。罪悪感に苛まれて。

「じゃあ、私が外してあげるよ。ちょっとどいて。」

クラスメイトの中島信代が律を脇にどけて和の正面に立った。

「ごめんね、和。ちょっとだけ我慢を・・・・我慢を・・・・・(ゴクリ)」

力自慢の信代なら簡単に外せるはず。だが・・・

「無理。なんか、ここで外したら一生残るトラウマになりそう・・・。」

「信代でも駄目か。ピンチヒッター!いちご!3年2組で一番のポーカーフェイスのお前なら絶対にできる!」

「分かった。」

律に指名されていちごが和の正面に立ち、左手首に手をかけた。

「は、早くブレスレットを!」

「・・・・・・・・・・・。」

澪が抑えつける和が、必死に叫ぶ。だが、いちごは全く動かない。

「何やってるんだ、若王子さん!早く!」

「・・・・・・無理。私にはできない。」

その後も何人かが挑戦したが、結局誰も罪悪感に打ち勝てずにブレスレットを外せなかった。

「仕方がない。とりあえず放っておいて部活に行くか。おい、唯。音楽準備室に行くぞ。」

「うん。和ちゃん、ムギちゃんのケーキ、半分分けてあげるね。」

「わ~い!唯と半分こ~!」

普段と違う和に調子を崩されかけたが、律たちは唯とおまけでくっついている和を連れて教室を出た。



続く



[21760] 第五話!
Name: アルファルファ◆6c55af9b ID:2de55f33
Date: 2010/09/14 19:20
「あれ、皆さん。お揃いでこれから部活ですか?」

通りすがりで憂と純に出会った一行。

「ああ、そうなんだ。梓は?」

「先に部室に向かいましたよ。ところで、お姉ちゃんは何やってるんですか、それ?」

「別に憂ちゃんが気にすることじゃ・・・。」

澪は唯と和の関係を隠そうとしたが、無駄だった。

「私と和ちゃんはね、恋人同士なんだよ~。」

「へっ!?今なんて言ったの!?」

「恋人だよ。これからは、憂は和ちゃんのことを和お姉ちゃんって呼ぶんだよ。」

「うん、分かった。よろしくお願いします、和お姉ちゃん。唯お姉ちゃんのこと、面倒みてあげてください。」

「分かっちゃうんだ!?」

律が思わず突っ込んだ。唯の言うことは絶対的に守る憂に驚いたからだ。

「じゃあ、私、ジャズ研のお手伝いに行くんで、何かあったら呼んでください。では。」

憂は先輩たちにお辞儀をして純を伴って去っていった。



「ねえ、憂。頭、大丈夫?」

「大丈夫だよ、純ちゃん。何ともないよ。」

「いや、あそこは恋人ってどういうことか、とか聞かないの?」

「別にいいじゃない。悪い男の人に騙されるくらいなら、和さんにお姉ちゃんをあげた方がずっといいから。」

「いや、それ色々と問題あるから。」

「そうかな?和さんなら幼なじみで気心知れてるし、面倒見がいいし、甲斐性あるし、家事も得意だし、問題ないと思うけど。」

「まず性別の問題があるから。」

純はこれから憂との付き合いを変えるべきかどうか真剣に考え始めた。





「なんかさ、すげえ修羅場だな。昼ドラっつーか、愛憎劇っつーか。」

「私、こういう昼ドラ展開大好きなの!」

「ムギ、目を輝かせるな。当人たちにとっては大問題なんだぞ。」

紅茶をすすりながら観察を続ける律・ムギ・澪。その眼前では・・・

「唯先輩は私たちと一緒にギターの練習をするんです!邪魔しないでください!」

「唯との時間を邪魔しているのはそっちよ!手を放して!」

「そっちこそ唯先輩の手を放してください!」

「嫌よ!唯と私はいつでもどこでも一緒なの!」

「二人とも、痛いよ~!」

梓と和に両方向から腕を引っ張られて唯が悲鳴を上げていた。

「相手が放すまで手を放さなかったら我が子として認めるってお奉行様が決めて、でも痛がる我が子を察して手を放したほうが母親として認められたって話があったわよね。」

「ああ。でもこの場合、どっちも諦めそうにないけど。」

「梓のやつ、唯を取られて完全にムキになってるな。構ってもらえないから。」

呑気に三人が話している間も唯が左右に引っ張られ続ける。結局律が止めに入った。

「おい、梓。引っ張るのやめてこっちに来い。」

梓を部屋の隅に呼んでブレスレットについて簡単に説明した。

「律先輩、本気で言ってるんですか?そんな非科学的なもの、信用できるわけないじゃないですか!」

「あたしもそう思いたいんだけど、事実なんだ。自分自身でその効果は実証したからな。ムギと澪に聞いても同じ答えだぞ。」

「よく分かりませんが、ブレスレットを外せば律先輩とムギ先輩のように元通りになるんですね?」

「ああ。罪悪感に苛まれない自信があるならな。」

「罪悪感って何ですか?操られてるだけって分かってるのになんで外せないんですか?」

「いや、どうせ後で外さなきゃいけないの分かってるし、もう少しだけそっとしとこうって思っちゃうんだ。あの和の幸せな笑顔を見ると。」

「私には関係ありません。練習第一です。」

「お前、絶対唯を取られて嫉妬してるだけだろ。」

律は梓からイライラのオーラをビンビンに感じ取っていた。

「失礼します、唯先輩。」

梓は和を相手にせず、唯のブレスレットを先に奪った。

「くはっ?あれ、ここどこ?」

唯は意識を取り戻してキョロキョロしている。

「唯先輩、和先輩の左手首の動きを止めてください!」

「えっ?よく分からないけどオーケーだよ。」

唯が和の左手首をつかんだ。和は唯が相手なので抵抗せず、素直にブレスレットを外せた。

「すげ~。梓、血も涙もねえ。和からスパッと外しやがった。」

「後で外さなきゃいけないなら、早めに外して被害食い止めたほうがいいですから。っていうか、そのくらいできない先輩たちの方がおかしいです。」



「和ちゃん、元気出して。ほら、ケーキあげるから。」

「・・・・・・・・・・。」

唯がケーキをフォークに一口分取って差し出したが、無反応。真っ白に燃え尽きていた。

「知的で物静かな私のイメージが・・・。」

「和ちゃん、気を落とさないで。ほら、さっきみたいに私に甘えていいから。」

「うわああああああああああんっ!!」

慰めようと思って言ったが逆効果で泣き出してしまった。

「でも、なんで和、あんなにキャラが変わっちゃったんだ?唯のほうがリードしてるお姉さんみたいな感じで。」

律が紅茶を置いて自分の疑問を切り出した。

「まあ、普段真面目で大人しい人ほど、はっちゃけるとすごいって言うからな。和は家でも弟と妹がいてお姉さんだし、学校でも生徒会長で皆から頼りにされてるし、気が休まる時がないからな。」

「それってつまり、和ちゃんの深層心理として誰かに甘えたいってことよね?その対象が唯ちゃんになったと。」

「その~、和。そんなら、いつでもあたしらに甘えてもいいぞ?こっちが頼りにしてるばかりじゃ悪いし。」

「それならちゃんと書類出してトラブルもゼロにしなさい。だいたいいつもいつも・・・・!」

気が昂ぶっている和のお説教タイム。一々言っていることがもっともなので、律は平身低頭して謝るより他になかった。



和は精神的に打ちのめされながらも、仕事をするために生徒会室に向かっていった。

「あずにゃ~ん!ありがとう!私と和ちゃんのピンチを救ってくれて。」

「こんなところで抱きつくのやめてください。練習の邪魔になるから助けただけです。」

「あずにゃんったら、素直じゃないんだから。私を和ちゃんに取られて寂しかったんだよね~。こうして抱きついてもらえて本当は嬉しいんだよね?」

「そ、そんなことありません!むしろ唯先輩の引き取り手が見つかって清々するかと思ってたところなんで、非常に残念です。」

「ああん、照れ隠しにそういうこと言うあずにゃん、すっごくかわいい~!」

「だから抱きつくのやめて下さいって言ってるじゃないですか!」

本当は和ばかり相手をして自分の相手をしてくれない唯にかなりイラッときていたことは黙っておいた。

「だいたいよく考えてみたら、呪いのブレスレットって何ですか?そんな下らないものに操られるとか、どこの漫画ですか。そんな非科学的な代物、存在するわけないじゃないですか。」

「今、あずにゃんだって見たでしょ?お昼休みまではりっちゃんとムギちゃんがラブラブだったんだから。」

「迷信です。ちょっと説明書きにそれっぽい文句が書いてあるからってそういう効果があるって思い込んでるだけですよ。プラシーボ効果です。馬鹿馬鹿しい。」

「おい、梓。お前、さっきから聞いてりゃ他人事だと思って好き勝手言いやがって。思い知らせてやる!」

律が梓の発言にムカッときて梓の左手首にブレスレットをはめた。

「おい、律。これ以上騒動を起こすのは・・・・。」

「平気だって。ちょっとこらしめてやるだけだから。じゃ、左手首に装着っと。」

律は自分の左手首にもう片方のブレスレットを装着。

「・・・・・?何も起きないじゃないですか。やっぱり嘘っぱちだったんですね。」

「うわあああああっ!あたしってそんなに梓に嫌われていたのか!」

「お前が今まで梓にしてきた仕打ちを考えたら当然の結果だ。」

好感度が一定程度に達していなくて、ブレスレットの力が発動しないことに律はショックを受けた。

「なら、澪でいいや。ほれ。」

澪に抵抗される前にスポッとブレスレットをはめた。

「や、やめ・・・(ドクンッ)」

「う、うそ・・・(ドクンッ)」

澪と梓の胸に熱い感覚が走った。

「梓・・・好きだ・・・・。」

「澪先輩を私の体に感じます~」

澪と梓は抱き合って愛を確かめ合った。

「はいは~い。ブレスレットの効果が本物だって分かったところで・・・ぶはっ!」

早々にブレスレットを外そうとした律に澪と梓のストレートパンチが決まった。



続く



[21760] 第六話!
Name: アルファルファ◆6c55af9b ID:2de55f33
Date: 2010/09/15 17:45
「いきなり殴ることないだろ。しかも二発かよ。」

律は殴られた両頬をさすりながら立ち上がった。

「私たちの恋路を邪魔するな、律。もう一度邪魔したら手加減してやらないぞ。」

「これで手加減してたのかよ・・・。」

「澪先輩~。律先輩はほっといて、キスしましょ~。」

「ああ、いいぞ。恋人だからな。」

二人は見つめ合い、そして眼を閉じて・・・・

「澪ちゃん、あずにゃん、駄目ー!!」

キスの寸前、唯が二人のキスを阻止するために二人の間に顔を割りこませた。

「(梓の唇、あったかい・・・・)」

「(澪先輩の唇、肉厚でキスの味が濃厚・・・・)」

二人は十分キスを堪能した後に瞳を開く。自分の眼前にあるものに口から思わず吹き出した。澪も梓も唯の頬にキスをしていたのだ。

「何やってるんだ、唯?」

「いや、二人のマウストゥマウスのキスを阻止しようと。唇を重ねあわせるキスは初めての時のために取っておくものだろうし。」

唯は二人の操を守ることができたという満足感に浸っていた。

「唯先輩。今回は半殺しで許してあげますけど、次やったら殺してさらし首にしますからね。」

「ひいいいっ!!あずにゃんがなんて恐ろしい言葉を!!」

「どうでもいいが、私と梓の純情を弄んだ罰だ。思い知れ!」

両頬に平手打ちを食らって、律の上に覆いかぶさるように倒れた。

「唯ちゃん、うらやま・・・・じゃなくて、大丈夫?りっちゃんも。」

「「大丈夫、れす・・・。」」

唯も律も虫の息で答えていた。



「澪ちゃん、梓ちゃん、許さない!死んだ唯ちゃんとりっちゃんの仇を取らせてもらうわ!」

死んでませんから、というツッコミをしようとしたが、二人ともへろへろになっていてできなかった。

「やる気か、ムギ。」

「ブレスレット外すだけですもの。余裕よ。」

「いいのか?私たちを自由にすれば、もっとすごい百合展開を見せてやるぞ。」

「なっ!?それってどういうの!?」

ムギは百合展開と聞いて思わず反応していた。

「舌を絡めあうディープキスとか、もっと激しい抱擁とか。」

「見、見たい・・・・!じゃなくて、そんなことこの神聖な学舎で許される行為ではありません!」

「建前と本音が入り交じってるな。じゃあ、ちょっとだけ見せてやる。こういう風に梓をお姫様だっこする。」

澪は梓を抱っこして自分の首に梓の右手を回させた。

「そして、逃げる!」

「あっ、しまっ・・・・。」

ムギの反応が遅れている間に、澪と梓は音楽準備室を飛び出した。

「しまった!逃がしたわ!二人とも、追うわよ!」

ムギはへろへろの状態の唯と律を連れて逃走犯を追いかけた。



「澪先輩。これから教会に行きましょう。二人だけの結婚式です!」

「ああ、そうだな。私たちは純愛だ。永遠の愛を誓うんだ!」

「その為にはあの追手から逃げきらないといけないんです。これも愛の試練なんですね。邪魔者は排除しますか?」

「あまり手荒な真似はするな。結婚報告の手紙を書く相手が少なくなるからな。」

澪と梓はお姫様抱っこの姿勢で走りながら、どうでもいい手紙のことまできっちりと考えていた。

「おい、あのカップル、純愛に見せかけたヤンデレだぞ。」

「ヤンデレって何?」

「唯ちゃんは知らなくて良い世界よ。」

ムギは話しながらも携帯メールを高速連打。3年2組全員にある指令を送っていた。

「皆に澪ちゃんと梓ちゃんを確保してくれるように頼んだわ。部活で学校に残ってる子全員に協力してもらうわ。」

「なら、この校内から逃げられないように人数を割け。オカルト研が解決策を見つけてくれるまで時間を稼ぐんだ。」

「了解。正門と裏門に誰か行って通せんぼして!と。」

この中で一番スゴイのはお姫様だっこしながら逃げる澪よりも走りながらメールを高速で打てるムギだった。





「ちっ、ムギの奴、クラスの子全員を動員してきたか。これじゃ教会まで行けない。」

唯たちを撒いた澪と梓は周囲の警戒状況に校門からの脱出をあきらめた。現在は空き教室に潜伏中。

「別に、教会じゃなくてもいいです。二人の愛さえあれば、結婚できます。」

「それもそうか。なら、ここで永遠の愛を・・・・。」

澪が梓にキスをしようとした時、空き教室の扉が開け放たれた。

「見つけたわ、秋山さん。」

「佐々木さんか。」

扉の前に仁王立ちしているのは澪ちゃんファンクラブの会員・佐々木曜子だった。

「あなたたちはブレスレットの力でおかしくなっているだけなの。早く目を覚まして。」

「違う。私たちは本当に愛し合っているんだ。」

「何でもいいから、ブレスレットを外させなさい!」

曜子が飛びつくが、二人はそれをひらりとかわした。

「なんでそんなに怒った顔をしてるんだ。いつもの佐々木さんらしくないぞ。」

「秋山さんは私たちのアイドルなの。結婚なんて許さない!」

微妙に一般との感覚がずれている曜子にとっては、そちらの方が重要だったらしい。

「澪ちゃんファンクラブの一員なら、私の幸せを優先してくれてもいいじゃないか。」

「駄目よ。だって・・・・だって・・・・私のお腹の中には秋山さんの赤ちゃんがいるから!責任とって!」

苦し紛れに曜子はありえない嘘を付いていた。だが、それが予想外の効果を発揮していた。

「澪先輩・・・?私に隠れて浮気していたんですか?しかも子供まで!」

梓の小さい体から凄まじいオーラが発せられていた。

「し、知らない!っていうか、女同士で子供生まれるわけないだろ!」

「それもそうですね。佐々木先輩、嘘を付いてますね?」

「一分前の世界に戻ってこの恥ずかしいセリフを取り消したい!」

曜子は赤面して床をバンバン叩いて自分の発言を後悔していた。



曜子から逃げきって次々に物陰を伝って移動。3年2組のメンバーは手分けをして執拗に追ってくる。

「チッ、あっちから松本さんと鈴木さん。反対側からは高橋さんと藤井さんか。」

「こっちです!」

梓に手を握られて階段を上がって逃げる。

「(梓の背中が頼もしく見える。これも愛のおかげかな。)」

「(澪先輩はこの身に変えても私が守る!)」

階段の上には誰もいない。が、隠れていたクラスメイトが飛び出してきた。

「見~つけた。ブレスレットのせいで観察力が落ちてるんじゃない?完全に誘導されてたよ?」

「飯田さんか。それに太田さんと佐伯さんも。」

その間に先程の四人も下から取り囲み、7対2の状況になった。

「梓、こっちだ!」

状況を打開するために一番近くにあった進路指導室の扉を開き、その中に潜り込んだ。

「やっぱりここに転がり込んできたわね、あなたたち。」

「せ、先生!?」

「まったく、世話を焼かせてくれるんですから。誰が後で怒られると思っているのやら・・・・。覚悟なさい。」

山中さわ子は本気モード全開で澪と梓に飛びついた。



続く


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