私が菅副総理・財務相に期待する理由就任会見で為替に言及したのは「確信犯」だ

2010年01月11日(月) 高橋 洋一
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 経済政策で、マーケットに影響のないものはない。その意味で、菅副総理・財務相の発言をいけないとはいえない。ただし、経済政策の観点から見れば、本当に単なる口先介入だけならば結局は効果がなくなり、次に大臣が発言しても反応がなく、政策の信頼性が失われるという、「オオカミ少年」になることを心配すべきだ。

 では口先でなく、本当に為替水準を変えるためにはどうすればよいか。為替介入と金融政策との二つの手段がある。現在の為替理論では、日々や3ヵ月以内の為替の動きでは大臣の発言や介入などは効果があるが、3ヵ月以上から数十年の長期になると、二国間の金利差や物価上昇率の差で決まってくるといわれている。

 財務大臣からすれば、為替介入は財務省の権限内なので容易に実行できる。ただし、為替介入の効果はせいぜい3ヵ月以内。しかも、市場に任せるはずの変動相場制の下で、為替介入結果である巨額な外貨準備を持つこと自体もおかしい話だ。ちなみに、日本の外貨準備は先進国の中ではすでに1桁大きい(図参照)。

 それでは、他の先進国はどのように為替相場と向き合っているのかと言えば、できるだけ金融政策で対応しているのである。そして、マイルドなインフレ率を目標としたうえで、実際に似たような金利水準になっているので、結果として、中長期的な為替変動は生じないようになっている。

 もし菅副総理・財務相が為替の話を口先だけで終わらせたくないならば、次の1月25、26日の日銀の金融政策決定会合において、具体的な数値・達成時期を明示したうえでプラスのインフレ率を日銀として断固やりとげることを日銀が宣言するよう、財務省の出席者が発言するべきだ。その内容自体は、白川方明日銀総裁が言明しているので驚くことではない。ただし、少し具体化させるだけでよい。しかも、日本経済を悩ますデフレからも脱却できる一石二鳥だ。財務大臣には財務省の出席者に発言させる権限がある。もし何もしないならば、菅副総理・財務相は、結局は口先だけ、オオカミ少年だといわれるかもしれない。

 

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