新年早々、財務大臣の交代があった。藤井裕久前財務相の辞任の背景には、表向きの健康問題という理由ではなく、小沢一郎幹事長との確執があるといわれている。いずれにしてもこの時期の交代が異例であることに変わりない。前任者の藤井氏は経済、財政面での経験が豊富であったが、新任者の菅直人氏は経験不足だと心配する声がある。しかし、民主党内で、実力者小沢幹事長との関係も悪くなく、重量級大臣であることは間違いない。
新大臣の意気込みは、往々にして最初の記者会見でわかる。私も役人時代、政権内で新大臣の記者会見に数多く立ち会ったが、やはり新大臣のキャラクターがよく出た。記者会見にあたり、新大臣にはその省庁の役人である事務秘書官や担当局長が所管事項の説明を行う。その際に、これは話さないでもらいとの「べからず集」が新大臣に渡されることもある。こうした役所の振り付けそのままを語る人や、それらをわざと無視して自分の言葉で語る人など、記者会見のスタイルは政治家それぞれだ。しかし、ほとんどの人は、新しい仕事になるわけで、やはり安全運転というべきか、役所の振り付けどおりであった。
前任者の藤井前財務相が円高論者だといわれていたので、今回、新大臣が記者会見で為替相場の見解を聞かれることは、当然、想定問答の範囲である。財務省は、その答えとして「為替相場の水準には言及しない。ただ、日本経済のファンダメンタルズに即したものであるかどうか、その動向を注視してまいりたい」と答えるよう、菅副総理・財務相にレクしたはずだ。
ところが、1月7日の記者会見において、菅副総理・財務相は、「為替については、そういう質問にあまりうかつに答えると、とんでもないことになるということを私もよく知っておりますので、本当なら答えないほうがいいのだと思いますが」といいつつ、「経済界からすれば、やはりできれば90円台半ばあたりが貿易の関係で適切ではないかという見方が多いわけです。そういう意味で、まさに為替というものが日本経済に与える色々な影響を考えながら、適切な水準になるように、これは日銀との連携も含めて、その事態、事態に対応して努力をしなければならない」と話した。これには、マスコミは飛びつかざるを得ない。記者から見れば、釣りにかかってくれたわけだから。
しかし、この菅副総理・財務相の発言は、政治的な確信犯である。この後、為替発言を巡って閣僚間でいろいろな見解が出ていること自体、菅副総理・財務相はしてやったりだろう。
特に興味深いのは、鳩山由紀夫首相と平野博文官房長官の発言だ。鳩山首相は「(為替の)急激な変動は望ましくない。政府としては為替に関しては、少なくとも言及するべきではない」、平野官房長官は「政府としてマーケットに影響を与える発言は好ましくない」と述べ、菅氏の発言を批判している。首相も官房長官も為替に関する発言は、財務省出身者の事務秘書官が担当している。財務省サイドから打ち消したのであろう。
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