日本以外の先進国では、金融危機によるGDPギャップは、財政・金融政策でほとんど埋めている。後はその効果がでるまで待てばいいわけだ。それでも正常の成長経路に復帰できるまではあと1年かかるだろう。では日本はというと、金融政策についてほとんど無策である。下の図の縦軸は、各中央銀行のバランスシートの大きさを表している。これをみると、アメリカ(米連邦準備理事会=FRB)やヨーロッパ(欧州中央銀行=ECB)では100兆円規模の量的緩和政策を実施している。それに対して、日本(日本銀行=BOJ)は、量的緩和政策どころか、それに逆行したことがはっきりわかる。
その結果、日本ではまだGDPギャップが埋まっていない。ということは、少なくとも2~3年以上、デフレや高い失業率に悩まされるわけだ。そこで、日本では二番底になるのではないかという心配も出てくる。
普通の国の金融政策は、物価上昇率を1~3%にするのが当たり前だ。言い換えれば、金融政策でGDPギャップを埋めているのである。GDPギャップがあるうちは、デフレになるからだ。ギャップを埋めれば失業率も高くならないので、マクロ経済の運営は合格点になる。しかしながら、日銀は、2000年以降、物価上昇率をマイナス1~0%に「見事に」運営してきた。この実績を見る限り、日銀は、酷いデフレにならないように、しかしデフレ脱却はしないように、「デフレ・ターゲット」をしてきたといっていいだろう。日銀は、物価の安定を見事なくらいに達成したが、その水準がマイナスだったのは経済にとってあまりにまずい。
日銀は、昨年11月まで、デフレでも問題ないなどとのらりくらり言い逃れをしてきた。しかし、昨年末、鳩山政権がデフレ宣言すると、急に手のひらを返し、デフレを容認しないなどと言い出した。10年間も「デフレ・ターゲット」をしてきた日銀の実績を考えるとお笑いぐさである。
昨年12月30日、民主党の「新成長戦略」が出た。その最後には、いつものお決まりである「デフレの克服を目指し、政府は、日本銀行と一体となって、できる限り早期のプラスの物価上昇率実現に向けて取り組む」と書かれている。外需がよくなって、結果オーライとなる可能性もある。しかし民主党が本当に成長を望むならば、日銀に対して4年間の成果目標を課すべきである。それは、もちろん「デフレ・ターゲット」であってはならない。日銀の成果目標こそが、デフレ脱却への国民への約束となるはずだ。
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