日本の防衛技術が危ない!

鎖国政策を続け、世界水準から陥落か

2010.09.14(Tue) 林 富士夫

国防

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●国際共同開発への取り組み

 国際共同開発を選択肢の1つに

 我が国は国際共同開発を例外扱いとしているが、今後は効率的な防衛装備取得のための1つの選択肢として見るべきである。その場合、共同開発のメリットとデメリットを考え、次のすべての項目に該当するものがその対象候補となろう。

(1)運用要求、要求性能が合意できること。
(2)高度大規模システムで我が国だけでは実施が困難なものであること。
(3)経費分担が適切であること。(調達数に応じた負担等のルールが確立できること)

(4)外国の優れた先端技術が適用でき、費用対効果に優れた装備取得が可能であること。
(5)我が国の技術力の維持・発展に寄与できること。(すべての成果技術は開示されることおよび技術的に価値のある作業を分担できること)

 体制を整えてから踏み切れ

 国際共同開発は熾烈な戦いでもある。体制が整わないまま参画すれば黒船来航を無防備で迎えるようなもので、効率的な取得どころか我が国の防衛生産技術基盤そのものを喪失する事態を招きかねない。まずは万全の体制を整えなければならない。

 共同開発の実務を担当できる人材の育成・確保も急務である。我が国では開発管理などに関して体系的な要員養成がなされていない。国際共同開発にはプログラムマネジャー(PM)としての知識と経験を備えた人材が不可欠である。

 通訳なしで議論できるレベルの語学力も必須である。今後は米国などの修士課程・博士課程への派遣拡大やPMとしての研修、運用部隊での勤務等の経歴管理を通じて、オールマイティーなPMを育成しなければならない。

 また、日本が信頼されるパートナーとなるためには、国際的に通用する秘密保全体制を確立しなければならない。2007年に米国と締結された軍事情報包括保護協定(General Security of Military information Agreement:GSOMIA)はその第一歩である。

 国際共同開発の具体的枠組みと防衛産業の育成

 共同開発の相手国としては、日米安全保障体制が我が国の防衛政策の基軸であること、圧倒的な産業規模と技術水準を有することから、引き続き米国が主体となろうが、独自の優秀な技術を有する欧州もその対象に加えるべきであろう。

 また、我が国が共同開発を通じて技術力をつけるためには、要求策定(仕様作成を含む)および設計作業に全面的に参画し、システムインテグレーションを含む中枢システムの製造を分担するとともに、日本国内での最終組み立ては必須である。

 欧米と地理的に離れている我が国が維持・運用支援基盤を確保するために不可欠だからである。

 我が国の防衛技術基盤は民間企業に依存しているが、最近、防衛需要に対する魅力が低下しつつあることが懸念される。

 国際共同開発は量産効果と世界の最新技術へのアクセス、技術革新の刺激、世界中からの運用データのフィードバックによる装備品の完成度向上、維持フェーズでの作業量確保や維持設計のための技術活動など、魅力は大きい。

 国際共同開発の道が開かれれば、民生分野で世界をリードしている日本企業の防衛需要参入への動機づけにもなり、さらに効率的な取得につながるものと期待される。

 一方、国内での継続的な事業を確保して国際競争力を高める努力も重要である。それは我が国の防衛産業が国際共同開発で魅力あるパートナーとして受け入れられる前提にもなる。

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