この結果、我が国では現在、事実上一切の武器輸出が禁止されている。この政策に伴う防衛装備の少量生産による高単価と、その高単価による調達数の減少がさらなる価格上昇を引き起こす悪循環は既に指摘されているところであるが、それ以外にも問題が多い。
航空自衛隊の早期警戒管制機「E-767(AWACS)」は「ボーイング767」旅客機を改造してレーダーなどの器材を搭載した機体である。
硬直化した三原則で関係国に多大な迷惑かける
航空自衛隊の「E-767」〔AFPBB News〕
767の胴体は日本企業が製造しているが、窓のないAWACS用の特別な胴体は武器輸出に該当するとして、不要な窓を開けた旅客機と同一仕様の胴体が輸出された。
ところがAWACSは、後部胴体上に搭載するレーダーによる電磁干渉から機内の電子機器を守るため高度の電磁シールドが必要で、開けた窓を米国内で塞ぎ入念にシールドするという、最初に窓を開けなければ必要がなかった無駄作業が行われた。
理念とは無縁のところで硬直化した三原則の運用が行われた例である。
共同開発に伴う成果技術の取り扱いも問題になる。我が国は脱出時の死亡事故を契機にF-15戦闘機の射出座席(ACESII)の改善事業を米国と共同開発として行い、成功裏に終了、現在は実機の改修作業を進めている。
共同開発により生じた成果技術の扱いについては参加国間での取り決めが必要となり、我が国に帰属する成果技術を米国が第三国に移転しようとすると、我が国の同意が必要になる。
ところが、ACESIIはイスラエルとサウジアラビアのF-15、台湾の「F-16」にも装備されており、三原則対象国そのものへの輸出に該当する可能性が高い。
それらの国々への技術移転の同意を米国から求められたら、日本はどうするのか?
日本が拒否すれば米国は同盟国に改善対策を提供できなくなり、共同開発の意義に疑問を投げかけられるだろう。
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