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【コラム 私は見た!】

自分がまいたタネに足をとられた鶴竜

2010年9月13日

 鶴竜は立とうとする気配も見せず、仕切りの間(ま)をできるだけ引き伸ばした。しかし、あれで目いっぱいだろう。白鵬が一度はあきらめたところを見せて、仕切り直しに立ち上がってくれたものの、こういう駆け引きは二度三度と繰り返すところには持ちこめない。鶴竜の方にも、いざ立つということになると、小細工を持ちこんだ分、横綱に心理的に借金をしたように考えられるのだろう。結局は自分がまいたタネに足をとられて、負けを呼びこんでしまう。

 批判だけを書きつらねるのではなく、今場所からは、できるだけ力士にとって励ましと受けとれることを書こうと考えているので、そういった見方を述べたいと思う。

 その意味からすると、十三敗の黒星を並べている鶴竜だが、まったく見通しが暗いわけではない。これは私の感じ方にすぎないが、鶴竜と白鵬の力の差は、少しずつだが詰まってきている。だから、余計な細工など相撲に加えず、堂々と真正面から勝負を挑んだ方が良い。

 これは今場所に限ったことではない。鶴竜が白鵬を相手に展開する攻撃には、かなり注意深い要素がこめられていることを、私は感じ取っている。実は、その予測を大事に育ててもいるのだ。

 豪栄道が自在にといっても良い動きで、初日の幕を開ける一番に勝った。まだ始まったばかりだが、ああ、良い動きをしているなと感じさせられた。昔先輩が書いたもので、こんな内容のものを読んだことがある。番付の上下動が激しく、しかもその対象になる力士の数が多い場所には、予想もできない出世を遂げる力士が出てくる。

 今場所はまさにこの例にあてはまる。意表外な出世を遂げる力士は誰なのか。星の転変をよく見ておくことにしよう。

 把瑠都は大関なのだから、この条件の中にはおさまらないが、初日の土俵を見て、今場所にはかなり期待が持てると感じた。この力士が思う存分の力を出したらどうなるかと、その期待に近いものは、これまでにも何度となく見せてくれているのだが、この大関の相撲には、どことなく移り気なものが感じられる。人間として浮気性なのだろうか。それを自分の相撲に修練すべき時期なのだが。 (作家)

 

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