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【コラム 私は見た!】

大記録があなたの腕の中でほど近い

2010年9月14日

 明日は初日といわれるその日に、今回の相撲界の問題にかかわりがあったとされる人々の名が、新聞紙上で取りざたされる。今回の状況がどんなに深刻で根深いものであるかを、言い表していることのように思えた。

 そこで考えられるのは、初日の幕もあいたことだし、これでこの一見終息という打ち出しの太鼓の音に、つながりはしないかということなのだ。しかし、まだまだ油断はならない。下衆の勘繰りかも知れないが、のっけに書いた一件公表の件は、なに分にも、タイミングが際どすぎるように思える。

 これで落着ですよという単なる意思表示にと思えるし、出し遅れが、ここにきて浮かび上がってきたのだとも受けとれる。まあ、嵐の去ったあとまかされた方々の処理の腕のほどを見るほかにはないのだが、相撲ファンとしては、これ以上の荒れにはつながらないようにと、祈って無事を願うばかりである。

 それにしても、初日、二日目が終わった秋場所、もうひとつ盛り上がりに欠けているように思えてならない。悪口を言うつもりはないのだが、相撲関係者一同、血相を変えて大相撲の名誉挽回(ばんかい)に渾身(こんしん)の力を振るっているといったようなものが、なぜか伝わってこない。

 ひとつには、どでかい醜聞と、双葉山以来という全勝無敗記録が更新されるかもしれない大慶事とが、皮肉なことにぶつかってしまったせいもあるに違いない。もっと遠慮なく書けば、日本中が六十九連勝プラスαの達成への期待にわき返っていてもおかしくないのに、心のどこかに、なんというべきか妙に白けたものがあって、白鵬の四十九連勝に熱中することを妨げているのである。

 しかし、千代の富士の五十三連勝を抜き去るころには、「みなさん、この大記録、達成をぼやぼやと見ている場合ですか」という声がどこからともなく聞こえてくると思っているのだが、その辺のことを多くの人々はどう考えているのだろうか。

 とにかく、私は、六十九連勝で双葉山の連勝が停った日のことは、明瞭(めいりょう)に覚えているのだ。これは人の一生分にも相当する記憶のトピックなのである。それが“あなたが手をのばせば届くところにきている”。

 当面、大相撲のスキャンダルのことは忘れても結構だから、白鵬の新記録達成の方に熱い関心をよせてほしいものだ。 (作家)

 

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