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きょうの社説 2010年9月15日
◎菅代表が再選 容易ならぬ挙党態勢の構築
民主党代表選で再選された菅直人首相は、勝利の美酒に酔っている暇はない。代表選を
通じて、菅首相と小沢一郎前幹事長が訴える諸政策は同じ政党人とは思えぬほど違っていた。菅首相は勝利を収めたとはいえ、民主党国会議員のほぼ半数近くが小沢氏を支持した事実は重く、実質的な党内の分裂状況を修復し、挙党態勢を再構築していくのは容易ではなかろう。代表選をにらんで、円相場は一時1ドル=83円20銭台を付け、15年ぶりに高値を 更新した。市場では菅首相が勝利したことで、為替対応で後手に回った経緯から、さらなる円高に振れるとの見方が強い。政治的空白が続けば、円高の仕掛けがあるかもしれない。また、尖閣諸島をめぐる中国、台湾のきな臭い動きは、代表選による政治空白を突いた可能性があり、安全保障上のリスクも気になる。 党を二分した戦いのしこりをいつまでも引きずっていては、国益を損なう。菅首相側か らはしきりに「ノーサイド」の声が出ているが、代表選で露呈した深刻な亀裂をどう埋めていくのか。当面は党役員人事、内閣改造人事が焦点となろう。日本のトップリーダーとしての手腕と度量、政権与党の自覚が試される。 小沢氏に対しては、閉塞(へいそく)した政治・経済状況を持ち前の「剛腕」で打開す る期待が高かったが、足かせになったのは、やはり「政治とカネ」の問題に厳しい目を向け、復権を望まぬ世論の声だった。党員・サポーター票で小沢氏が大差を付けられたのは、身から出たサビというほかない。 菅首相に対しては、短期間での首相交代は好ましくないという消極的理由での支持が少 なからずあった。リーダーシップや力量の比較で、小沢氏をしのいでいたわけではない。首相就任後、つとに守りの姿勢が目立ち、経済政策への理解不足や行動、決断が遅い印象もある。批判を率直に受け入れ、謙虚な気持ちで政権運営に当たってもらいたい。 先の参院選で国民は消費税増税に明確に「ノー」の意思を示した。代表選に菅首相が勝 ったからといって、財政再建路線が支持されたわけでは決してない。財政再建はあくまで「手段」であって、「目的」ではない。入院患者にダイエットを強いるのではなく、健康体に戻すのが先である。
◎小松、富山の上海便 一体感もって利用促進を
上海航空の富山−上海便の運航日が、木、日曜日から火、土曜日に変更されることにな
った。今年2月に同社と合併した中国東方航空の小松−上海便との運航日の重複を避けるのが目的であり、新ダイヤに合わせて航空券も共通化され、北陸と上海を結ぶ定期便の「週6便体制」による一体運航が実現する。石川、富山県には、これを契機として利用促進に一体感をもって取り組むことを求めたい。今後は「富山空港から上海へ向かい、小松空港へ戻る」「上海から小松空港に入り、富 山空港から出国する」といった形で利用する際の料金が現在より安くなり、観光やビジネスの日程も組みやすくなる。昨年度の搭乗率をみる限りでは、決して好調とは言えない状況にある「北陸の上海便」を活性化するために、新ダイヤを最大限に生かす必要がある。 石川、富山県がこれまで以上に力を入れなければならない取り組みとしてまず思い浮か ぶのが、中国人向けの旅行商品の共同開発と発信だ。石川県は、中国東方航空が静岡―上海便も運航していることに着目し、既に静岡県とともに定期便を活用した中国からの誘客を始動させている。今度は富山県をパートナーにして、同じことができないだろうか。 日本政府観光局(JNTO)によると、7月に訪日した中国人旅行者数は過去最多の1 6万5千人となった。同月から中国人に対する個人向け観光ビザの発給要件が緩和されたことなどが追い風になったとみられる。行き先は東京などが目立つとされるものの、いずれは地方にも流れてくると期待する向きは多く、将来的には地域間の綱引きが過熱することも十分に予想される。「北陸の上海便」を石川、富山県の共有の財産と認識して、そうした競争に勝ち抜くための武器として上手に使いこなしてもらいたい。
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