北海道の旭川医大は新たな医師確保策として、今年度の診療報酬改定による病院の増収分を使って研修医や若手医師らに配分する「診療特別手当」の新設を決めた。国立の大学病院では初めての試みといい、卒業後2年以内の初期臨床研修医には来年度、初期研修を終えた医師には10月分から支払いを始める。
04年度から義務化された新卒医師の臨床研修では、研修先として出身大学よりも大都市の病院に希望が集まったため、地域医療を下支えしていた地方の大学病院で医師不足が深刻化した。人気の偏りは、国立大学病院と私大や民間との給与格差が一因とされる。
旭川医大も、03年度は52人が残っていた新卒の研修医が、制度導入後の07年度は10人まで減少。08年度から2年間は民間からの寄付を原資に、研修医に独自に月20万円の給与を上乗せするなどの対策を講じた結果、09年度は30人に増えた。
今年度の診療報酬改定は10年ぶりにプラスに転じ、病院勤務医の待遇改善を目的に入院と外来で約4800億円増額された。ただし診療報酬は勤務医に直接配分されるわけではなく、あくまで病院の収入。人件費より赤字補てんを優先させる場合も多いが、旭川医大は年間数億円の増収見込みのうち約1億3800万円を特に給与が低い若手医師への還元に充てることにした。
対象は研修医と、助教などの役職がない非常勤扱いの医師の計約150人。研修医には月額最大5万円▽免許取得後7年未満の医師には同8万円▽7年以上の医師には同10万円--を、6月と12月の2回に分けて支給する。吉田晃敏学長は「今回の診療報酬改定の背景にある勤務医の待遇改善を着実に形にする取り組みで、意義は大きい」と話している。【横田信行】
毎日新聞 2010年9月14日 10時06分