バケットコンクール

March 21 [Sun], 2010, 18:00
もしかしたら明日はパリのバケットコンクールの日ではないでしょうか?パリ一番のパン職人決定戦ですので皆さん気合いが入っている頃ですかね。

日本人は出場すら出来ないハイレベルなコンクール。せめて出るだけまでは頑張って欲しいものです。もし、今年日本人が出るならアドバイスを。採点表が見た目に傾いています。ある程度の見た目がないと勝負になりませんけど、優勝狙いなら味が全てです。見た目で20位までが決まり、そのなかから試食。味が良ければ採点表は後から見直され、一番うまいバケットが優勝になります。

予選的な見た目ですけれど、見た目が綺麗ではダメです。美味しそうな見た目に高得点がつきます。日本人は工業製品的な精度の高い物を美しいと考えがちですけど、フランスの美は違います。クープを精度よく入れる為に必要以上に生地を捏ねて、見た目が日本的な美を持ったバケット、これは食べると間違いなくガッカリします。それを審査員たちは見た目でわかりますので、日本で一般的な形の整ったバケットは危険です。なかなかここが日本人ブランジェには難しい。どうしても日本的な思考回路を抜け出せないようです。具体的にはペトリサージュを極限まで浅くする事が大切です。浅くすると形が美しく出来ないじゃあないかと言われそうですが、ワールドクラスの上位陣は浅いペトリサージュの扱いにくい生地を上手く成形、焼き上げています。日本人ではこの技術を持った人、シェリーしか見たことがありません。

僕のバケット2007。南部藩の伝統的な味がテーマでした。複雑な発酵のさせ方は小麦の味を損ねます。ありがちな失敗は天然酵母です。確かにコントロールが難しい製法だけに、この製法はパン職人の自己満足に使われます。パリでもルヴァン製法に回帰する流れがあり、これがバケットの味を悪くしていた。

僕はここに注目。南部藩の中でも特に冷候な八戸は米が取れず、麦文化。生地を三角に切ったり、やや、発酵させた生地を引っ張ってちぎったり、せんべいに焼いて鍋に入れたり、米の代わりに様々な食べ方で麦を食べて来ました。お菓子も麦餅が基本です。
現在では流通が良くなり、普通に米を食べていますが、1000年以上受け継がれた、麦で継いできたDNAは僕の中にも生きています。麦に対する厳しい基準はフランス人にもひけを取りませんでした。

麦の香りを損ねないバケット。考えてみれば当たり前なのに、パン職人は自己満足の酸っぱくなる発酵で麦を殺してしまう。南部藩の僕だから出来た麦の味が力強いバケット。過去10年間のなかで、組合員ではない店による優勝になりました。

パリの空の下のパンはどれも小麦の香り、味わいが豊かです。ヴィエノワズリーまでも麦感で表現。南部藩出身らしいパンで、パリより美味しいパンを目指しています。



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巴 健至
え?一本ですか!
そんなに食べてもらったらバケットも、さぞかし喜んでいると思います。ありがとうございます。

しかし…うちのお客様はバケット一本召し上がるとか、アントルメを一台召し上がる方がいたり、これではたくさんお作りしても足りない訳です。ありがたい事です。
March 23 [Tue], 2010, 13:53
M
確かにバケット究極です!

私は1本食べられちゃいます。
March 23 [Tue], 2010, 13:22
巴 健至
パリで日本人シェフのレストランはたくさんありますけど、日本人シェフのパティスリーはないので、コンクール以前から日本のマスコミが来ましたよ。でも全てお断り。

今と同じです。僕は有名になりたくないんですよ。

それと有名だから美味しい、テレビに出ていたから美味しい、コンクールに優勝したから美味しい。これはどれも違います。

ここで僕が焼くパンを実際に食べて、気に入ってくれた方々がいる。その方々とひっそりとやって行けたらいいなと思っています。
ルリ様も一度召し上がってみてくださいね。
March 22 [Mon], 2010, 11:55
巴 健至
パリで一番を決めるコンクールですので、どこかの会場で見世物的に作る訳ではなく、出場?と言うのかどうか分かりません。自分たちの店で作った物を会場に運びます。

僕のチームは3人。僕がパン作りを教えたスリランカ人と僕。フランス人無しのチームです。スリランカは天災と内戦で国が崩壊しており、そこに救いの手を差しのべたのがフランス。難民扱いで数多くのスリランカ人にビザを発給しました。
そのスリランカ人を雇えば国から援助がもらえるからと、アルノーが大量に雇い、フランス語が出来なくて、パンなんか作った事がない素人を僕に押し付けたのです。初めは拒否りましたが、スリランカ人達は国に妻や家族を残して来ており、真剣そのもの。四畳半一間に5人で暮らして夢を見ています。普通は掃除夫や洗い場なのにブランジェとしての技術が学べるとあって目の色を変えて、僕の厳しいシゴキに耐えました。

僕は彼らにいつも問いかけました。「このバケットでエリゼ宮(大統領官邸)に届くと思うか?」と。バケットコンクールに優勝して、一年間エリゼ宮に納める事を僕らの目標に定めたのです。

いくら作ってもダメ出しされる環境に、スリランカ人達は耐えました。それから2年が過ぎた時に、突然春がやって来ました。僕の予定、4年より遥かに速く僕らは目標に到達しました。

僕の考えた製法が斬新だったよりも、スリランカ人達の努力が優勝へと導いたと思います。
March 22 [Mon], 2010, 11:05
ルリ
飾っていただけないなんてとても残念です、、、、(T-T)
シェフのお名前が刻まれたトロフィーや賞状を眺めるのがひそかな夢でした、、、、

コンクールのお話に興味津々なんですが、お店の代表としてシェフがおひとりで出場されたのですか?
それとも数人のフランス人従業員を率いてそのリーダーとして出場されたのですか?
March 22 [Mon], 2010, 9:24
巴 健至
小麦は生では全然おいしくない。火を入れて初めて食べられます。

日本の大手のパンやお菓子、火が入っていない。火が入っていないでんぷん質は人体では消化出来ないので生理的にまずく感じます。
その反発がビアンキュイ。今から20年以上前に、東京で提唱されたフランス的ではないキュイソン。しかし大手よりはうまかったので東京のスタンダードになりました。

パリでは小麦が焼け死ぬまでは火を入れません。そして僕のキュイソンはパリで一番新しい火の入れ方。僕がパリで提唱して、パリジャンに認められた南部藩の火の入れ方。小麦の味わいを最大限に伸ばします。
March 22 [Mon], 2010, 1:19
パリの空の下のヴィエノワズリー、小麦の香り豊かですよね。
クイニーアマンを食べた時、麦の香りを感じてびっくりしました。
それまで美味しいと思っていた他店のクイニーアマンが今では食べれなくなりました。
バゲットや他のパンも他店では味わえない風味豊かなパンばかりです。
これからも美味しいパンを期待しています。
March 22 [Mon], 2010, 0:59
巴 健至
飾る…いや〜あまりそういうのは好きではないので。写真もね…魂が抜かれるので困ります。

真面目な話、コンクールで優勝とか、MOFとかはあまり意味がありません。大切なのは毎日、クオリティの高い物を焼き続ける事が出来るかにあります。

いつも良い仕事を維持していけてるなら、いつでもコンクールは取れます。一発勝負ではない、日々の品質こそが僕の目標です。
March 21 [Sun], 2010, 20:17
ルリ
日本人では出場すらできないのにシェフは優勝されたとはさすがです!!!
もしかして日本人初で唯一なのではないでしょうか?!!
プロフィールの受賞歴にあったクロワッサンでの優勝もすごいのに
日本では全然ニュースにしてくれなかったから知らなかったです
知っていたらその頃からシェフのファンになっていたのに〜

ぜひぜひお店に賞状とかメダルとか飾ってください
そしてその前でシェフと一緒に記念撮影したいです!
March 21 [Sun], 2010, 19:32
プロフィール
  • 名前:巴 健至
  • 性別:男性
  • 血液型:O型
  • 現住所:東京都
  • 職業:専門職
  • 趣味:
    ・自転車-レース
    ・お酒-1日にワイン5本まで飲めます。
    ・美食
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