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社説:代表選…財源・景気対策 10年先も考え選択を

 約2週間の選挙戦で、何が見えただろうか。代表選を実施する以上、「日本の明日につながる理念、政策論争を」と願ったが、理念も深い政策論争も十分だったとは言い難い。

 事実上、首相を決める選挙である。それなのに、外交や社会保障制度、環境・エネルギーといった重要なテーマがほとんど語られなかった。

 政策面で議論が集中したのは財政・景気だ。小沢一郎前幹事長は主に二つの面から菅直人首相を批判している。「官僚主導の予算編成」が一つ。景気対策が生ぬるいというものがもう一つだ。しかし、では自分ならどうするか、となると政権党の党首に期待される実効性や責任感を伴った約束は、ほとんど聞くことがなかった。

 財源の裏付けが弱いことを指摘されてきた小沢氏は、いくつか案を示した。地方への補助金を自治体の使い勝手がよい一括交付金に切り替えることで、歳出を圧縮するというもの。そして、国の資産のうち約200兆円を証券化すれば、まとまった収入が得られるというものだ。だが、具体的な仕組みや、来年度からいくらの財源が新たに確保できるかといった見通しは示していない。

 景気刺激では2兆円規模の緊急対策を提唱し、足りなければ国債を増発してでも財政出動を行うべきだと積極姿勢をアピールしている。

 浮かび上がってくるのは歳出膨張、借金増大の結末だ。一方、資金の使い道では「全国の高速道路を速やかに完成させる」というように自民党的なものへの回帰がにじむ。

 菅氏はどうだろう。首相就任後、最も力を注いだ課題は財政再建だった。歳出の伸びを今後3年間、凍結することを決め、消費税率の引き上げについても一時は踏み込んだ。だが、参院選での敗北を受け、財政健全化への熱意は薄れた印象だ。年内の補正予算編成に前向きの発言をしたり、法人税減税の検討を本格化させるなど、人気配慮の政策に傾斜し過ぎていないか。

 財政再建に代わって前面に出てきたのが「雇用」だ。規制緩和や産業構造の転換などを通じ、本気で雇用創出に努めるというのなら歓迎できる。しかし、雇用を隠れみのにし、不人気な政策や困難な決断から逃げるようではいけない。そもそも小沢氏に「官僚主導の予算」と批判されるのは、政策に優先順位をつけ、低いものは切るという決断を避けたからだ。

 両氏とも、積極的に支持したくなる政策に乏しい。マイナスの少ない方を選ぶ選挙かもしれない。それでも、2人の路線を進めた先にある日本は違った姿に見えてこよう。

毎日新聞 2010年9月14日 2時30分

 

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