民主党の代表選挙で論議を呼んでいるのが、小沢一郎氏の「補助金を一括交付金にして減額する」という政策だ。補助金の8割は社会保障などの義務的経費なので減額するのは無理だ、という批判が全国の自治体から出ている。しかし疑問なのは、そもそも一括交付金にしたら民主党のいう「地域主権」が実現するのかということだ。
主権(sovereignty)とは、『広辞苑』によれば「その国家自身の意思によるほか、他の意思に支配されない国家統治の権力」である。他国から金をもらう国は、主権国家ではなく植民地だ。交付金は「ひもつき」ではないなどというのは嘘で、「地方交付税=基準財政需要-基準財政収入」だから、財政需要の算定には総務省や政治家の裁量が大きい。
自治体の首長が「自主財源を増やしてほしい」というのは、国は金だけ出して口を出すなという虫のいい話だ。自主性をいうなら、国の金をあてにしないで地域の財源はすべて地域でまかなうのが筋だろう。たとえばアメリカには、地方交付税のような制度はない。
「一括交付金で地域を活性化する」という小沢氏の話も、逆である。地方経済が活性化しないのは、自治体の予算(交付税と補助金を含む)が経済の中心になっていて民間企業が自由に活動できないためだ。これ以上、役所のプレゼンスが大きくなると、日本中の企業が役所の下請けになってしまう。
このように地方に住んでいるというだけの理由で一括して所得を移転する「集団再分配」は、八田達夫氏も指摘するように、社会保障としても非効率で不公平である。もっとも貧しい人だけに所得分配する機能がないからだ。地方にも大地主がいるし、都市にも貧しいフリーターがいる。後者の所得を前者に移転する理由はない。
日本の成長率を上げるには、生産性の高い都市部に労働力を集中するしかないが、田中角栄以来の「あまねく公平」を旨とする地方への所得移転は、人口を生産性の低い地方に固定して成長率を低下させた。必要なのは地方を守ることではなく生活を守ることであり、そのためには職の増える都市に労働人口を集中させるしかない。
自治体の首長が「自主財源を増やしてほしい」というのは、国は金だけ出して口を出すなという虫のいい話だ。自主性をいうなら、国の金をあてにしないで地域の財源はすべて地域でまかなうのが筋だろう。たとえばアメリカには、地方交付税のような制度はない。
「一括交付金で地域を活性化する」という小沢氏の話も、逆である。地方経済が活性化しないのは、自治体の予算(交付税と補助金を含む)が経済の中心になっていて民間企業が自由に活動できないためだ。これ以上、役所のプレゼンスが大きくなると、日本中の企業が役所の下請けになってしまう。
このように地方に住んでいるというだけの理由で一括して所得を移転する「集団再分配」は、八田達夫氏も指摘するように、社会保障としても非効率で不公平である。もっとも貧しい人だけに所得分配する機能がないからだ。地方にも大地主がいるし、都市にも貧しいフリーターがいる。後者の所得を前者に移転する理由はない。
日本の成長率を上げるには、生産性の高い都市部に労働力を集中するしかないが、田中角栄以来の「あまねく公平」を旨とする地方への所得移転は、人口を生産性の低い地方に固定して成長率を低下させた。必要なのは地方を守ることではなく生活を守ることであり、そのためには職の増える都市に労働人口を集中させるしかない。
コメント一覧
完全に同意します。
もはや議論ではなく池田先生がここで仰っている事を政府はすぐにでも実行してほしい。
この問題はコンセンサスが十分に得られる筈はないので議論するだけ時間の無駄。
>日本の成長率を上げるには、生産性の高い都市部に労働力を集中するしかないが、田中角栄以来の「あまねく公平」を旨とする地方への所得移転は、人口を生産性の低い地方に固定して成長率を低下させた。必要なのは地方を守ることではなく生活を守ることであり、そのためには職の増える都市に労働人口を集中させるしかない。

う~む
完全一括交付金化への最短距離かも。
学問の数式で考えるとそうなるんだろうけど。
ただ、そのような単色の社会はまっぴらごめんだな。
一括交付金は地方分権はまったく関係ないという点については賛成ですが、「都市に労働人口を集中させる」というときの「都市」が、東京や大阪、名古屋等を意味するのであればそれはよくないと思います。今の日本経済を活性化するには、労働人口が集まる場所は札幌や仙台、広島や福岡といった地方都市のほうがよいと考えます。
日本はモザイク的な国家として再建するしかないでしょう。過去の公共事業により、インフラがそのようにできてしまっていると考えます。東京や大阪、名古屋等へ労働人口を集中させる政策は、結局、東京や大阪、名古屋等に巨大なハブ港やハブ空港を建設するといった、リチャード・クーさんのような人が言うような巨大公共事業を誘導することになりかねません。そんな時代はもう終わっていると考えます。
>2
>>コンセンサス
いや、僕はみんなの党の存在が可能性を残していると思います。つまり少なくとも都市部の市民は自分達の税金が無駄に地方に分配され続けることに嫌気が差している。先の参院選で東京神奈川千葉など都市部ばかりでみんなの党が勝ったことで表現されていると感じます。そうした声を拾うためにみんなの党はもう少し1票の格差問題を声高に叫んで、都市部とのつながりを市民にもアピールしてほしいものです。
一括「交付金」という時点で既に「ひもつき」になってます(笑)
この問題は別に地方主権とはなんの関係もありません。
独自の税源がなければ財政の運営など考えることもできません。
結局今言われていることはすべて架空の話であって、実際の地方はこれから惨憺たる状態になっていくのはあきらかですから、ほっておいても都市への労働力流入は止まらなくなるでしょう。
そうなると政界再編より先に「地方都市再編」が進むかもしれません。
田中角栄以来の日本人が妄想しつづけてきた「日本列島東京化」の幻想が地縛霊のように居座りつづけているとしたら、まさにこの国の民は祟られているとしかいいようがありませんね。
自己のアイデンティティを自分で捨て去ると言っているに等しいわけですから。
有効求人倍率だけだと福井県の0.82倍です。
以下略。
地方は静かに衰退していきます。それなりの予算でやりくりすればよろしいです。
国の規格だと高くついて、いかんですね。
ゴーストタウンが増えてきますが、よろしいと思いますよ。
日本を再生するには地方分権を行うしかないと考えます。ただ、市区町村を人口15万〜40万程度の基礎自治体に再編して道州制を導入し、イギリス型の連合国家にして直接税は地方、間接税は国、というような統治機構を実現するには何十年もかかるでしょう。そんなに長くは待てないですね。
今の都道府県体制のまま、国がある程度以上の徴税権と通貨発行権を地方に譲渡するしかないと思います。地方が発行する地域通貨で、ある程度以上の介護や医療サービス等を受けることができるようになれば、年金やその他社会保障費の政府負担を削減することもできます。ただ、財務省に取り込まれた菅内閣では絶対に無理。財務省は地方に徴税権を譲渡することも地方が地域通貨を発行することも拒否するでしょう。小沢内閣が誕生したとしても、民主党が「公務員政党」である以上、おそらく無理。
日本経済が今の不況から脱するには、財務省を解体しないといかんでしょうねw
どこかに集中させるというより、どこにも誘導すべきではないということでしょう。
どこに誰が住むのかということは、社会が自然に決めることです。
まあ、その結果、二極集中、もしくは一極集中が進むのでしょうけど。下手をすれば、日本に極はできないかもしれない。みんな中国に集まってしまうかもしれません。
いずれにせよ、平和と中国の発展が続けば、50年先にはそうなっているはずだし、そうなるべきです。